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第20章(3)紫夕side
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しおりを挟む呆然と見つめ合う俺とマリィの間に、落ち葉を乗せた秋風がフワッと吹き抜けた。
その、どこか暖かい風に背中を押されるように俺は口を開く。
「お、前……なんで、ここに?」
するとマリィも、まだ信じられない、と言った表情のまま答える。
「な、なんで……って、お墓参りに……。
だって、この町は……アタシと和希の故郷だもの」
そう言われて、俺はゆっくり歩みを進めるとマリィの側まで行き、その前にあった墓を見つめた。
和希の墓ーー。
その前で、マリィはゆっくり自分と和希の話をしてくれた。
懐かしい声で紡がれる話。
その話から、色んな事が繋がって分かっていく。
俺にコテージを貸してくれた主人が、マリィの親父である事。
雪が連れ去られた事を俺に知らせてくれた亜希さんが、和希のお袋さんである事。
そして。雪が一緒に遊んだ、と言う子供二人が和希の弟と妹の子である事。
知らず知らずのうちに、引き寄せられていたーー……。
「紫夕!こっちこっち!!」って。
親父が殺された人間不信から、一時期誰とも深い付き合いをしなかった俺を、和希が独りにしないで居てくれた時のように……。
「っ、……」
涙が、ボロボロ溢れた。
全身の力と一緒に心が緩んだように、俺は和希の墓の前で崩れるように両膝を着いた。
そんな、俯く俺の肩をそっと抱きながらマリィが言う。
「……ゆっくりでいいわ。
聞かせて?今度は、貴方と雪ちゃんの事を……」
その暖かい言葉と温もりに、
ようやく、自分の場所に帰ってきたーー。
って。俺は、そんな気がしたんだ。
……
…………。
俺は、マリィに……。
いや、マリィと和希に全てを話した。
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