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第21章(3)響夜side
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しおりを挟む卵とベーコン焼いたのをパンに挟んだだけのお手軽料理。
それを頬張る弥夜を見て、思う。
ご機嫌取りも大変だな、ってーー……。
僕には弥夜が話す言葉も、微笑みかけてくる笑顔も、生きていく為に身に付いた術だとしか思えなかった。
今はまだ成長が不十分で、一人で生きていくには難しいから、必死に頼りになる存在に媚びているんだ、ってーー……。
自分にとってそれが当たり前だったから、無償の愛、なんて言葉だけだと思っていた。
ましてや、そんなものを自分に向けてくれる存在がいるなんて、思えなかった。
……
…………。
「おとうさんは、ゆきさんがすきですか?」
「……。あ?」
就寝前。
ベッドに横になって寛いでいると、隣のベッドで寝そべりながら絵を描いていた弥夜が手を止めて言った。
ようやくお絵描きに集中し始め、うるさいお喋りが止まったと思っていた矢先の事だった上に、質問が質問なだけに僕は思わずキレ口調で返す。
「テメェ、ふざけた事言うと殺すぞ」
「!っ、ごめんなさいです……!!
ゆ、ゆきさん、きれいだったから……。だから……その、……っ」
冷たい声にビクッと身を縮ませながらも、弥夜はサクヤの話をしたそうだった。
チラッと、描いていた絵に視線を移すと、髪の長い人物を白や水色を使って描いていた。おそらく、サクヤを描いたのだろう。
絵の中のサクヤは、優しそうに微笑っている。
「……。サクヤ、微笑ったのか?」
「え?」
「サク……、雪は、お前と居て微笑ったのか?」
僕は、サクヤに笑顔を向けてもらった事なんてない。
僕の前で、サクヤはいつも困ったような表情か、怒った表情か、泣きそうな表情しか……しない。
「はい!えほん、いっしょによんでわらいました!
ゆきさん、すごくきれいで、いいにおいなんです!!」
僕の質問に、弥夜はすごく嬉しそうにそう答えた。
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