スノウ2

☆リサーナ☆

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第21章(5)雪side

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ーー……でも。

サクヤコイツはサクラじゃない」

そんな現実を悲しむオレの心に、その言葉が響いた。
その声に目を向けると、響夜きょうや風磨ふうまさんを見つめながら言っていた。

実験動物そんな目でしか見られない奴に、サクヤコイツは渡さない」

っ、響夜きょうや……。

胸をきゅっと、掴まれた気がした。
その言葉を素直に嬉しいと感じて、心から身体が徐々に暖まっていく。
少し悔しい気もしたが、今は響夜きょうやの事をカッコ良いと思わざるを得なくて……。オレは、目が逸らせなかった。

「アンタ相手に、魔器マギなんて必要ない」

そして、勝負は決まったーー。

「……もう二度と、サクヤコイツに近付くなッ」

響夜きょうやのその言葉の後に、風磨ふうまさんが「ッがはっ!!」と声を上げて仰け反るように後ろに倒れるのはあっと言う間だった。
そんな風磨ふうまさんのすぐ前方に居たのは、片足を高く上げた響夜きょうやで……。速すぎて見えなかったけど、おそらく響夜きょうやの下から上に蹴り上げられた足蹴りが、風磨ふうまさんの下顎に当たったのだろう。
強力な一撃を喰らって顎の骨を砕かれた風磨ふうまさんは、そのまま仰向けに床に倒れて……。白目を向いて、口からは泡を吹いていた。

「……おい!誰かいるか!
風乱魔器を回収して、今すぐ風磨コイツをここからつまみ出せッ!!」

響夜きょうやの言葉に、廊下で待機していた警備員らしき人達がバタバタと集まってくるのはすぐだった。
その人達は気絶したままの風磨ふうまさんの身体や手足を担当して持ち上げると、そのままオレ達の居る部屋から運び出して行った。

可哀想だとも、不憫にも、思う。
でも、今のこの状況にホッと安堵している自分もいて……。オレの心境は複雑だった。
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