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第22章(3)雪side
22-3-1
しおりを挟む夢を見ているのかと思ったーー。
だって、こんな事ある?
恋をしていた相手に、更に恋をするなんて。
愛している相手を、また愛おしく想うなんて。
ずっとカッコ良いと思ってたのに、更にカッコ良く見えちゃうなんてーー……。
目に映していたその姿がボヤけて、やっぱりこれは幻なんじゃないか?って思った。
けど、
「ーー……好きだ」
その声が、耳を通って頭に響いた。
「一緒に帰ろう。
もう一度、一緒に暮らそう」
夢でも、幻でもない。
脳に響く声、鼻を通って感じる匂い、全てを包み込むような温もり。全てがスゥ……ッと、オレの中に行き渡って、忘れかけていた幸せと言う言葉の本当の意味を教えてくれた。
オレの幸せは、紫夕だ、ってーー……。
どうして、忘れられる、って思った?
紫夕のいない研究所での生活。
響夜に護られて、弥夜君と過ごして、新しい生活を始めて……。こう言う幸せもあるのだと、思った。
でも、違った。
オレの身体の底から、心の芯からジワジワと湧き上がる何かが告げる。
今、この一瞬の幸せの為なら、他には何もいらないーー……。
全てを投げ出して。
全てを忘れて。
この手を背中に回して抱き返して、紫夕の言葉に頷いてしまいたかった。
……けど。
ゆっくり腕を動かした瞬間、オレの耳に届いた小さな鈴の音。
その音に視線を移すと、右手首に着けていた桜のヘアアクセサリーがオレの瞳に飛び込んできた。
「っ……!!」
「!……雪?」
響夜の事を思い出して、オレは咄嗟に紫夕の胸元を手で押して身体を離した。
「……っ、……え……って」
「え?」
「……帰っ、て」
自分から出た声は、最初信じられないくらいに小さかった。
でも。これじゃ駄目だ、と奮い立たせて、オレはもう一度口を開く。
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