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第22章(3)雪side
22-3-5
しおりを挟むトクンッと、甘く痺れるように高鳴る鼓動。
一緒に行きたい。
一緒に、生きたいーー。
そして、心の叫び声と同時に、下腹部に感じる違和感。ずっと静かだったのに、胎内から訴えかけられる。
紫夕を父親だと分かっているかのように。まるで、会えるのを待っていたかのように……。初めてハッキリと感じた胎動。
少し俯いた瞬間に、涙がこぼれ落ちた。
今この瞬間に、幸福を感じずにはいられなかった。
ーー……けど。
「ーーっ、……帰って」
最高の幸せを知ったからこそ、オレには紫夕の手を取る訳にはいかなかった。
オレは知ってる。
オレの為に守護神を一度辞めて、一緒に逃亡生活をしていた時の紫夕を……。
「オレは……紫夕とは居られない」
どんな紫夕でも、好きだよ?
でも、オレが傍に居たら……紫夕はまた輝きを失ってしまうんだ。
オレのせいで、迷って、辛い想いをして、苦しんで……。オレのせいで、みんなに嫌われて、普通の暮らしが出来ない。
オレには紫夕に幸せをあげる事が出来ないばかりか、全てを奪う事しか……出来ない。
今再び輝きを取り戻した、オレの大好きな紫夕の傍には……。オレが居たら、駄目なんだ。
「もう、帰って……。お願い……っ」
必死に堪えてたのに、声が震えてしまった。
もう絶対に顔なんて見られなくて、背を向けて今にも溢れそうな嗚咽を堪える。
辛い、長く感じる沈黙の時間。
少しして、紫夕がオレに背を向けた気配が分かった。
一歩一歩踏み出して、オレから遠ざかって行く……。
これで、本当に最後ーー……。
でも。
そう思ったオレに、紫夕が言った。
「見ててくれ。
その夢が今よりもう少しでも近付いたら……また、迎えに来る」
「!……」
「何度でも迎えに来るから……。お前がもう一度、大丈夫だ、って信じられたら……。
そん時は、また一緒に暮らそう」
「っ……!」
その夢のような言葉に、振り向かないなんて無理だった。
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