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第22章(5)紫夕side
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しおりを挟む「それで雪君を連れて帰って来なかったのっ?
……はぁ~っ、信じられない!せっかくのチャンスだったんだから、強引に連れて来ちゃえば良かったのに!!」
ここはマリィ宅。
しかし、俺に向かってそうビシッと物申すのは杏華だ。
調査任務が終わって本部に帰還。通信機に「後で家に寄って!」とマリィからメールが入っていて寄ろうと思ったら、その途中で杏華と遭遇。
勘のいい杏華は俺の表情を見て「絶対に何かあったでしょっ?!」って問い詰めてきた。
あ、ちなみに杏華はマリィ同様、俺が今でも雪を想っていて取り戻そうとしている事を知ってる。雪の秘密も話している。
だから、こうして怒り口調ながらも有り難い言葉を俺にぶつけてくれるんだ。
そんな訳もあり……。調査任務中に偶然に雪と会った事を話したら、この結果だ。
せっかく見張もいなくて警備にも引っ掛からず、雪を連れ帰ってくる絶好の機会だったのに、とご立腹。
そんな杏華を何とかなだめようとするが……。
「あ、あのな~……」
「ほんっと紫夕さんは、いざ!って時に決められないですよね!」
「っ、俺にも色々理由があって……」
「理由?時にはそんな事考えずに、自分の気持ちを優先しないと!
優しいのは良いですけど、時には強引に行かないと、そのうち雪君を別の人に取られちゃいますよっ?」
「うっ……」
返り討ちに遭い、俺の胸には杏華の言葉がグサグサと刺さった。
さすがは杏華。優柔不断な俺を見抜いてやがる。
そうだ。今、俺と雪が離れちまっているのは、俺が優柔不断で弱かったからだ。
親父の息子でなかった現実を受け止めきれなくて、雪に真実を知られるのを恐れて……。俺が、雪の手を放しちまったんだ。
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