スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
492 / 589
第23章(2)雪side

23-2-2

しおりを挟む

その感情は、抱かれたい訳じゃない。でも、この温もりを手放す事も出来ない、複雑なものだった。
けど、ベッドに降ろされて、横になった響夜きょうやに、

「落っこちるから、もう少しこっち来い」

……そう言われて。オレは自ら、広げられた響夜きょうやの腕の中に身体を寄せていた。

「身体、辛くないか?」

オレの身体を労わるように、そっと包み込んでくれる腕の中。頷いたら、また笑みがこぼれてた。
響夜きょうやに優しくされて。甘やかしてもらえて、オレは嬉しかったんだ。

おかしいな。
もっとドキドキして眠れないかも、って思ってたのにーー……。

響夜きょうやの温もりと匂いが心地良過ぎて、目を瞑ればすぐに眠気が襲ってくる。

「……。……オレも、悪い奴だね」

あまりの心地良さに癒されて、素直な心がさらけ出されるかのように思わずそう呟いていた。
その言葉に、「あ?」って響夜きょうやの声が聞こえる。
オレは、これまでずっと心の奥底にあった感情をゆっくりと口にした。

「オレね、本当は少しだけ……母さんが信じられなかったんだ」

「……」

「だって、母さんは三月みづきさんが好きだったのに、何で橘さん父さんと?、って……」

「……」

「でも、……オレも同じだ。
ううん、オレの方が……ズルくて、酷いや」

母さんは三月みづきさんが亡くなっちゃって、オレよりももっともっと辛かった筈だ。それ故に、自分に優しくしてくれた橘さん父さんに甘えた。
それに引き換えオレは、自ら紫夕しゆうと離れる人生みちを選んだクセに……。フラフラして、響夜きょうやに甘えてる。

苦笑いが溢れて、「ごめんね」って言おうと思った。
けど、その時。響夜きょうやがぎゅっとオレを抱き締めて、背中をポンポンッとしながら言ってくれた。

「……お前は、悪くねぇよ」

その手と声が、また、優しい。
しおりを挟む

処理中です...