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最終章(6)紫夕side
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しおりを挟むお陰で、杏華も、もちろんその背後に居た雪も無傷だ。
だが、一方の海斗は複雑そうな……。少し、怒っているかのような表情に、俺には見えた。
それが無茶ぶりをした杏華に対してなのか、この状況や、今まで自分が生きてきた時間の末に感じた事に対してなのかは分からない。
けど、おそらく、全てだ。
暫くして海斗は、瞬海を手にしたままスノーフォールへ向かって足を進めた。
するとその光景を見て、一度は先程の出来事で呆然として隊員達が言う。
「お、おい!お前!手柄を独り占めにする気かッ?!」
「そうはさせねぇぞ!そのバケモノを殺るのはオレ達だ!!」
「総指揮官に可愛がられて、お前だけにいい思いはさせねぇ!!」
それは、酷い妬みと野次だった。
守護神に受かった当初は完全に自分達の方が立場が上だった筈なのに、今では遥かに上回る力を持つ海斗が気に入らないのであろう。
けれど、それは海斗が誰よりも努力して、鍛錬と経験を重ね、成長してきたからだ。それなのに……。
そして更に、総司令官も……。
『何をしている!!仲間割れをしていないで、さっさと討伐しろッ……!!
私の命令が聞けないのか……ッ!!!』
海斗の行動を避難する。
過去のオドオドしていた海斗を知っている俺は我慢ならず、思わず「黙れ!!」と、仲裁に入ろうとしてしまう。
でも、それはもう必要なかった。
「ーーボクはお前達とは違うッ!!!」
力強い声が、全てを抑え込んだ。
妬みも、野次も、欲望に塗れた命令も、俺の怒りさえも……。
そう言った海斗は、瞬海から手を放し、地面へ置いた。
そして、耳に着けていた通信機も外して投げ捨てるとその場から離れて……。一歩、また一歩と、まさに丸腰の状態でスノーフォールへと歩み寄って行った。
この世界では、あり得ない光景だ。
魔物は敵。
遭遇したら戦え。もしくは逃げろ。
そう、生まれて来てからずっと教えられてきた俺達がそう出来る事は、並大抵ではない勇気、度胸。何より強い、命を懸ける覚悟がなくては出来ない。
俺でさえも、雪に魔物としての能力が目覚め始めた時、恐怖したと言うのにーー……。
それなのに、海斗はスノーフォールの目の前まで行くと、真っ直ぐに見上げて微笑んだ。
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