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第8章
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俺の自慢の、炎の軍勢。
離宮で一緒に暮らしてきた、家族のようなみんな。
いつも俺の話を聞いてくれて、理解して、付いてきてくれた。
10年前、俺は本当に未熟で何も分かっていなかった。
ろくに話した事もない、父上から派遣された寄せ集めの兵士達の前で、指揮官になった"つもり"だったんだ。
あの兵士達にとっての"主"は父上で、父上の命が絶対で、俺の言葉は届かなかった。
あの時。指揮官でも、王子でも、そんな肩書きは何の役に立たないと知った。
それから、全て俺は一から始めた。
性別も、身分も、教養も関係ない。気になった人物に、自ら一人一人に掛け合って少しずつ自分だけの部隊を作ってきた。
初めは少人数だった部隊が、何百、何千になって……。俺を、いつも支えてくれた。
だから、話さなくてはいけない。
親友のように、家族のようなみんなに……。
俺を信頼して付いてきてくれた人を、もう裏切る事はしたくない。
「先日、水の姫よりこの度の戦の決着を一騎討ちで行いたいと文をもらった。
……俺は、その申し出を受けようと思う」
集まってくれたみんなの前で、俺は自分の決意と気持ちを素直に話す。
今日まで何度も、何度も、こうして話してきた。
……でも。
これで、最後にしよう。
「決して、手出しは無用だ。
……いや、……。出来ればお前達には、この戦から……。俺から、離れてほしい」
静かに話を聞いていたみんなが、俺の語尾の言葉を聞いて少し騒つく。
この戦いは、完全に俺の私欲。
炎の国の為でも、みんなの為でも、ない。
ただ愚かな、一人のクウォンという男が自分自身の決着の為に向かうだけだ。
「……それは。我々に離脱しろ、と……おっしゃるのですか?」
みんなの思いを代表するように、アルトが言った。
俺の自慢の、炎の軍勢。
離宮で一緒に暮らしてきた、家族のようなみんな。
いつも俺の話を聞いてくれて、理解して、付いてきてくれた。
10年前、俺は本当に未熟で何も分かっていなかった。
ろくに話した事もない、父上から派遣された寄せ集めの兵士達の前で、指揮官になった"つもり"だったんだ。
あの兵士達にとっての"主"は父上で、父上の命が絶対で、俺の言葉は届かなかった。
あの時。指揮官でも、王子でも、そんな肩書きは何の役に立たないと知った。
それから、全て俺は一から始めた。
性別も、身分も、教養も関係ない。気になった人物に、自ら一人一人に掛け合って少しずつ自分だけの部隊を作ってきた。
初めは少人数だった部隊が、何百、何千になって……。俺を、いつも支えてくれた。
だから、話さなくてはいけない。
親友のように、家族のようなみんなに……。
俺を信頼して付いてきてくれた人を、もう裏切る事はしたくない。
「先日、水の姫よりこの度の戦の決着を一騎討ちで行いたいと文をもらった。
……俺は、その申し出を受けようと思う」
集まってくれたみんなの前で、俺は自分の決意と気持ちを素直に話す。
今日まで何度も、何度も、こうして話してきた。
……でも。
これで、最後にしよう。
「決して、手出しは無用だ。
……いや、……。出来ればお前達には、この戦から……。俺から、離れてほしい」
静かに話を聞いていたみんなが、俺の語尾の言葉を聞いて少し騒つく。
この戦いは、完全に俺の私欲。
炎の国の為でも、みんなの為でも、ない。
ただ愚かな、一人のクウォンという男が自分自身の決着の為に向かうだけだ。
「……それは。我々に離脱しろ、と……おっしゃるのですか?」
みんなの思いを代表するように、アルトが言った。
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