片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

文字の大きさ
20 / 231
第1章(3)レノアside

3-1

しおりを挟む

アッシュトゥーナ家本邸の庭。
休日には父ヴィンセントが趣味であるゴルフを楽しむ為に作られた大きな敷地の片隅。日除けの大きな傘が立てられた下にある丸テーブルの上で、私のポケ電がブブッと震えた。
その、微かな振動の音に"待ってました"とばかりに飛び付き、手に取って画面を開くと、見た瞬間に笑みが溢れる。

『最初の下剋上が決まった』

たった一言の文面。
けれど私にとっては他の誰からよりも嬉しいメッセージだった。

送り主はツバサ。
二歳年下の幼馴染みであり、私がこの世で唯一愛する男性。
幼い頃に離れ離れになり、身分差からなかなか思うように連絡が取れない日々が続いていたが、彼がドルゴア王国との繋がりの為に必須だった私の婚姻の替わりとなる"条件"を引き受けてくれた事がキッカケで、またこうして連絡を取り合う事が許される仲になった。


えっと……。何て返信しようかな?
「おめでとう」?「頑張って」?
あ、その前に「お疲れ様」かな?
「久し振り」って言うと、少し嫌味?もっと連絡が欲しいってワガママに聞こえちゃう??

早く返信したいのに、ついついソワソワと考え込んでしまう。
ツバサはこういうメッセージが苦手なのか、昔やり取りをしていた文通も短調だった。男の子ってこんなものなのかな?と思いつつ、自分は便箋いっぱいにいつも書いていた手紙。幼い頃はそこまで気が回らなかったが、もしかしたら面倒臭いと思われていたかも知れない。

そんな事を考えていたらなかなか返信出来ず、ポケ電を握り締めたまま画面と睨めっこしていた。すると……。

「ーー姉上面白い!百面相だぁ~!
また"ツバサさん"からのメッセージですか?」

「!……こ、こら!」

そう言って私の手からポケ電を取り上げて無邪気に微笑む淡い茶色の髪と瞳の少年。この子はもうすぐ9歳になる、弟のレオ。

「お返事にお困りなら、僕が代わりに~……」

「ダ、ダメ!返しなさいっ……!」

文字を打ち込もうとする様子に慌ててポケ電を奪い返すと、レオは「あ~!」とつまらなさそうな表情を浮かべる。

全く。
可愛い弟なのだが、最近すごくませているから大変だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

【完結】恋人代行サービス

山田森湖
恋愛
就職に失敗した彼女が選んだのは、“恋人を演じる”仕事。 元恋人への当てつけで雇われた彼との二ヶ月の契約が、やがて本物の恋に変わっていく――。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

【完結】25年の人生に悔いがあるとしたら

緋水晶
恋愛
最長でも25歳までしか生きられないと言われた女性が20歳になって気づいたやり残したこと、それは…。 今回も猫戸針子様に表紙の文字入れのご協力をいただきました! 是非猫戸様の作品も応援よろしくお願いいたします(*ˊᗜˋ) ※イラスト部分はゲームアプリにて作成しております もう一つの参加作品「私、一目惚れされるの死ぬほど嫌いなんです」もよろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”

ループ25 ~ 何度も繰り返す25歳、その理由を知る時、主人公は…… ~

藤堂慎人
ライト文芸
主人公新藤肇は何度目かの25歳の誕生日を迎えた。毎回少しだけ違う世界で目覚めるが、今回は前の世界で意中の人だった美由紀と新婚1年目の朝に目覚めた。 戸惑う肇だったが、この世界での情報を集め、徐々に慣れていく。 お互いの両親の問題は前の世界でもあったが、今回は良い方向で解決した。 仕事も順調で、苦労は感じつつも充実した日々を送っている。 しかし、これまでの流れではその暮らしも1年で終わってしまう。今までで最も良い世界だからこそ、次の世界にループすることを恐れている。 そんな時、肇は重大な出来事に遭遇する。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...