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第6章(1)ノゾミside
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しおりを挟む大きな手が私の顔横に垂れた髪を耳に掛けるようにして、そっと頬に添えられる。
彼が口付けをする時のクセだ。
私よりも遥かに上にあった顔がゆっくりと降りて来て、まずは頬に軽く、間近で見つめた後に、切れ目を更に細めて、そっと優しく口付けるの。
その、いかにも屈強の男、という体格や風貌からは全く想像が付かないくらいの繊細なキスは、彼の不器用な内側を表しているようだった。
「……痛むか?
本当に、すまなかった」
人目を避けた隠れ家の広場の片隅で、瞬空が私を抱き締めて言った。
三日前に行われたツバサ君の下剋上。
その時に丸腰のツバサ君を庇った私の身体中には、まだ治りきっていない無数の切り傷がある。頬や腕や脚、服の下の見えていない部分にも、たくさん。
私を今抱き締めている男、瞬空の放った斬撃で負った傷だ。
「謝るのなら、私にではないでしょう?」
広い背中に腕を回して抱き返す事もせず、私は言った。
……
…………。
「っ、……ノゾミさーーーーーんッ!!!!!」
足元の地面が崩れて行くような感覚だった。
でも、実際に崩れ、倒れていったのは私で……。意識を失いそうだったけど、泣き叫びながら抱き留めてくれたツバサ君がボヤける視野に映って、何とか遠のく意識を留めた。
私がこのまま倒れ意識を失ったままになれば、ツバサ君は更に心に深い傷を負ってしまうから……。
だから、支えられながらも立って、微笑った。
「っ……大丈夫です。
このくらいの傷、致命傷ではありませんわ。だから、泣かないで下さいな」
白金色の目から溢れる綺麗な涙が、身体中に負った傷よりも心に滲みて、痛かった。
「……分かりましたかな?
己が弱ければ護るどころか、周りの人が傷付き倒れるのです」
瞬空は、曲剣を腰に納めながら言った。
「その傷付く者がレノアーノ様でも、貴方はただ泣き叫ぶ事しかしないおつもりか?ツバサ様」
……
…………。
そう言い残して、その場を去って行った瞬空。
そして今日、あれから初めて顔を合わせた。
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