121 / 231
第6章(1)ノゾミside
1-4
しおりを挟む可愛くない女ーー。
自分の一つ一つの行動、言葉を思い出してそう思った。
溜め息を吐いて秘書部屋に戻ろうと歩き進めていると、物陰に見慣れた背中を見付けた。
「……ジャナフ君。何をしていますの?」
「!っひあ……ッ。
え、っ……と、そのっ……たまたま、通りかかって……」
奇声を上げて振り返ったジャナフ君はとてもしどろもどろで、私を見て気不味そうに目を泳がせていた。その分かりやすい様子にピンッとくる。
「見ましたのね?」
「っえ!?……い、や……あのっ……」
「別にいいですわ。
声を上げていて、不注意だったのは私達。気にしないで下さいませ」
「っ、……」
「それよりも、言い合っていたとは言え全然気付きませんでしたわ。
ジャナフ君、気配を消すのがお上手ですね。本当、夢の配達人の素質があると思います」
話題を変えようと、そう言ってにっこりと微笑って見せた。けれど、ジャナフ君は浮かない表情で少し下に視線を向けている。
その先にあるのは、先程傷付いた左手。ハッとして右手で押さえると、撫でるようにしながら苦笑いを溢した。
「……痛い女、ですわよね」
「……」
「やっぱり、どれだけ見た目を可愛く着飾っても駄目ですわ。
内面が可愛くないから、すぐにそれが表に出てしまって……」
「ーーそんな事、ないですよっ」
てっきり呆れられていると思った。
でも、ジャナフ君はそう言うと私の手を優しく取って、水道まで連れて行くと傷口を軽くすすいでくれて、持っていたハンカチで応急処置をしてくれた。
けど、その結び方は微妙で……。私は思わず「ふふっ」と、声に出して笑ってしまう。
「!……ああっ、へ、ヘタクソですいませんっ」
「ふふっ、いえ。
……ありがとう、ございます」
面白い子だなぁ、と思った。
類は友を呼ぶ、とは言うけれど、ジャナフ君の優しさが暖かくて……。何だかツバサ君と一緒に居るような気分になり、自然と笑みが溢れた。
そして、彼は更に私を笑わせてくれる。
「……もっと自分を、大切にして下さい」
「!……え?」
「この間のツバサの下剋上の時だってノゾミさんは無茶して、いっぱい怪我してっ……。
どんなに強くても、貴女は女の子なんですから!」
「……。ジャナフ君……」
真剣な眼差しで見つめられて、力説されて、ほんの少しドキッとした。……それなのに、…………。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる