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第7章(4)シュウside
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【シュウ38歳/夢の配達人隠れ家】
自室で仕事机に向かいながら、私は二通の封筒を手に持って見つめていた。
間近に近付けて、残された僅かな視力で瞳に映るその封筒には「辞表」と書かれている。
レナとレイ。
調査員として働いていた二人が、数日前に提出したものだ。
昔ヴァロンが救った、幼い双子の命。
その命が成長して、今度はヴァロンを救い出そうとしている。
聞いたところアカリさんと再会し、彼女から「力を貸してほしい」と頼まれたとの事。
調査員を続けながらでは、夢の配達人に迷惑がかかってしまうかも……と、レナとレイは辞表を提出。
私は、二つ返事で了承した。
「すごいですね。君は、本当に……」
傍に居なくとも、彼がみんなを忘れてしまっても、ヴァロンの存在を誰も忘れてなんていない。
君にはいつだって、みんなを動かす力があるんだ。
私には、何もない。
幼い頃。
楽しかったあの日の宝物は、全て私の手の届かないところへ行ってしまった。
夢も、憧れも、願いも……。
父の跡を継いで夢の配達人のマスターになったが、それも本当に良かったのだろうか?
と、時々思う。
マスターの仕事はもちろん、私には自分の事ですら出来ない事があるのだから……。
妻であるホノカさんから本職の仕事を取り上げ、夢の配達人になりたいと願う息子ミライにアドバイスも手伝いもしてやれない。
マスターとしてだけではない。
私は、夫としても父親としても不十分な存在。
ーー止めよう。
一つ思えば次々と湧き水のように溢れてくる感情を封じるように、私は辞表を机の引き出しにしまうと、席を立ち自室を後にした。
……
…………。
自室で仕事机に向かいながら、私は二通の封筒を手に持って見つめていた。
間近に近付けて、残された僅かな視力で瞳に映るその封筒には「辞表」と書かれている。
レナとレイ。
調査員として働いていた二人が、数日前に提出したものだ。
昔ヴァロンが救った、幼い双子の命。
その命が成長して、今度はヴァロンを救い出そうとしている。
聞いたところアカリさんと再会し、彼女から「力を貸してほしい」と頼まれたとの事。
調査員を続けながらでは、夢の配達人に迷惑がかかってしまうかも……と、レナとレイは辞表を提出。
私は、二つ返事で了承した。
「すごいですね。君は、本当に……」
傍に居なくとも、彼がみんなを忘れてしまっても、ヴァロンの存在を誰も忘れてなんていない。
君にはいつだって、みんなを動かす力があるんだ。
私には、何もない。
幼い頃。
楽しかったあの日の宝物は、全て私の手の届かないところへ行ってしまった。
夢も、憧れも、願いも……。
父の跡を継いで夢の配達人のマスターになったが、それも本当に良かったのだろうか?
と、時々思う。
マスターの仕事はもちろん、私には自分の事ですら出来ない事があるのだから……。
妻であるホノカさんから本職の仕事を取り上げ、夢の配達人になりたいと願う息子ミライにアドバイスも手伝いもしてやれない。
マスターとしてだけではない。
私は、夫としても父親としても不十分な存在。
ーー止めよう。
一つ思えば次々と湧き水のように溢れてくる感情を封じるように、私は辞表を机の引き出しにしまうと、席を立ち自室を後にした。
……
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