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第24章(4)マオ&ヴァロンside

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***

ーーーしかし。

「……、っ……くそッ。頭が回んねぇ……」

ミネアと暮していた部屋を後にして、とりあえず外に出たのはいいが……俺は混乱していた。

記憶が戻った、と言うよりは、"一部断片的に思い出した"と言う表現の方が正しいだろう。
まだまだ分からない、思い出せない事もたくさんあって、ヴァロンとマオ、二人の記憶が交差して混乱する。
モヤモヤとする頭の中、これからまず1番最初に何をすべきなのか……。上手く考えがまとまらない。


っ、……落ち着け、焦るな。
俺が今覚えている事。その中で1番大切な事はなんだ?

深呼吸して、今の自分に問いただす。
すると、俺の中に浮かんだのはアカリの事と、彼女に逢いたいという事。
夢の配達人時代の自分ならば、うまく対策を練って、いかにリスクがなくスマートにアカリを取り戻す事が出来るか、を考えていただろう。
……けど、今の俺は……、……。

『迎えに行く!!』

ポケ電を胸ポケットから取り出し、何故か知っている彼女のポケ電の番号を入力して、メッセージを送信していた。

難しい事なんて、今は考えなくていい。
アカリに逢いたいーーー。
そう思える、この感情だけでいいと思った。

ポケ電を握り締めて、ふと、空を見上げると……。

「……綺麗な虹。早く、アカリと見てぇな」

ーーー行きなさい生きなさい、ヴァロンーーー

この時期には、とても珍しい光景。
空に輝く虹が見守ってくれている気がして、俺は再び駆け出した。
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