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(4)アランside
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しおりを挟むーーけれど伝えたい。
ちゃんと、オレを知ってほしいーー。
「スズカ、愛してる」
「アラン様、愛しています」
互いを知り、互いを知ってほしいーー。
そう想えるようになったら、自然とオレ達の口からは同じ言葉が出て、一緒に微笑っていた。
ようやく訪れた本当の幸せ。
オレ達二人の時間はこれから始まる。
……と、思った。
彼女の頬に触れ、口付けようとした瞬間……。
ーーゴーン!ゴーン!ゴーン!……ーー
「!!っ……あ!いけないっ、急がなきゃ!」
「ーーは?」
12時の時計が鳴ると同時に、ハッと我に返ったスズカはオレからパッと離れ、ベッドの上に用意されていた鞄に荷物を詰め始めた。
その光景を見て、オレは呆然とする。
……待て待て待て!何だこの展開は?!
コイツはどこぞの童話の主人公なのかっ……?!
時計の鐘の音と同時に再び身支度を整え出かける準備を始めるスズカを見て、オレはそう心の中でツッコんだ。
予想外の展開に"愛している"と言ってもらえた事は、"もしや気持ちが盛り上がった自分の妄想だったのかも知れない"と思い始めたオレ。
しかし、荷造りを終えたスズカがオレの手を両手で握り締め見上げながら言った。
「実は父が倒れたと連絡があり、これから向かおうと思っていたのです!」
「!……なにっ?お父上が?!」
「命に別状はない、と電話で母は言っておりましたが心配で……。
アラン様にも直接お伝えしなければ、と思ったのですが、使用人長が許可を下さったので、すぐに向かおうと……」
オレの手を握るスズカの手が、震えていた。
この邸の使用人にはオレが父上から引き継いだ際に設けた厳しい制度で、休みはあるが連休や遠くへの外出は許可してこなかった。
だが、アカリ様がこの邸に滞在していた期間の間に彼女がその制度を変えた事により使用人には自由が増え、またその際の許可を降ろすのもオレではなく使用人長であるエルナが下せる事となっていた。
その事を思い出して、オレはスズカが出て行こうとしたのではなく、一時的な里帰りだと知りホッとした。
そして、今彼女が普通を装っているが、父を想いものすごく心配で不安なのだと悟る。
それなのに、スズカはオレに必死で、オレへの想いを伝えようとしてくれていた。
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