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第29話 メムロお姉ちゃん?
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「メムロお姉ちゃん……?」
フレイの言葉と共に彼女の方向を見る、レイアとエデン。彼女たちにとっても、メムロはレアの民族の英雄そのものであった。突如、行方不明となった彼女がなぜここにいるのか。そして、その攻撃方法は異様であった。
だが、そう呼びかけたフレイ自身、目の前の姉が姉でないことに気づきつつあった。明らかに人間ではない。ただ、その姿は姉である。恐る恐る彼は尋ねる。
「な……なんで攻撃するの?」
そのフレイの言葉を聞き入れず、メムロはその触手を伸ばし、次々に攻撃を仕掛けてくる。フレイは装備しておらず、レイアの盾に守られる。だが、「メムロ」は地面へ手をかざすと、そこで風が大きく巻き上がる。
そのまま彼女たちより上空へと向かい、打ち出したのは不意に彼女の前に発生した闇からの巨大な岩であった。それらが次々に彼女たちを襲うも、レイアはエデンの上へと飛びだし、盾で防ぐ。
だが、盾ごと体を岩の勢いのまま吹き飛ばされ、それにエデンも巻き込まれる。地面にたたきつけられた彼女たちは、ふらつきながらも立ち上がろうとするが、上空に浮かぶメムロはその姿を再び変え、渦のような姿へと変貌していた。渦の中心には大きな口があり、その口が大きく開く。
三人を軽く呑み込む大きさ。そのまま彼らを呑み込もうとしたときである。突如、横から飛ぶ高速の物体と破裂音と共に渦が吹き飛ばされる。
高速の物体の飛んできた先には、センシャが配置されていた。
そこで彼女たちの下にやってきた姿があった。その姿は全身が機械で覆われていた。声こそソノであるが、もはや生物ではない。
「エデン、無理をするな、死んでもいいのか?」
「その姿は……えと、なんでここに?」
「ここからは軍が引き受ける。ギルドの者は下がっていろ」
命令口調にフレイは引っ掛かったが、今の装備で対応できないのは分かっている。そして、フレイ自身も……。その答えのようにテミスから声が上がった。
「もう、変身することはできないよ、エネルギーが足りない……」
「だよね……」
「いったん、ここは軍に任せよう」
「了解」
フレイはテミスにそう返答し、そのままエデンとレイアと共に走り去っていく。娘を守るという意思のものだろうが、ソノが背中を守っていることに妙な安心感があった。
渦は再び姿を変える。そして生まれたのは、前にオケアノスと共に戦った巨人であった。
「姿を変えた……!?」
ソノの驚く声が聞こえる。
フレイもその姿を後ろ目で確認し、先ほどの姉も姿を変えたうちの一つでしかないことを悟った。ただ、怪物だらけの中でなぜ、姉に変身しているのかは理解できなかった。
「撃て」
ソノの命令の元センシャは次々に攻撃を仕掛けるも、それらは巨人に着弾するもまるでダメージを与えられていない。さらに巨人は駆けると、センシャを蹴り飛ばし、吹き飛ばす。さらに腕を掲げると、吹雪が吹き始めた。前の戦闘の時と変わらない。
「何が起きているんだよ……!?」
メムロは怪物だったのか。いや、それであれば、フレイを見れば何かしら反応があるはずだ。忘れているとは思えない。
続けて、彼女の姿は再び変貌する。その姿は再びメムロであるが、巨大な姿となっていた。さらに先ほどの闇のような空間を生み出すと、岩が降り注いでいく。ソノの声がしていた、あの機械はかわしていくものの、前に進むことさえまともにできていない。
隕石は広い範囲に降り注ぎ、センシャを破壊し、壁内へと逃げ込もうとしていたレイアの盾にフレイもエデンも隠れることができ、良かったものの、それがなければ即死だったのかもしれない。だが、ダンジョンボス製の盾でさえも、穴やヒビが目立ってくる。
これは……無理だ。
いくら何でも。
その時だった。
自分たちが隕石よりさらに大きな影に覆われたのは。
そこに立っていたのは青い髪の男の巨人。オケアノスであった。
「き、来ましたね!」
テミスの興奮気味の声が響く。
「よかった……」
フレイの声と共にオケアノスは立ち上がると、メムロに殴りかかっていく。降り注ぐ隕石の向きが変わり、彼だけに向かって行くが、オケアノスは周囲に水を集めると、防いでいった。
そのまま突撃し、腹部へと殴りかかる。
だが、殴った先が殴る前に穴が開く。そして、それがぎゅっとオケアノスの腕を包んでしまった。
「……ぐっ」
「ザンネン」
そこでメムロが言葉を発したのがわかった。調子は同じである。
だが、オケアノスはそれでも、と次々に水流を生み出すと、メムロへ襲い掛からせていく。
だが、メムロは次々に体を変形させかわしていく。
さらに、その肉体は再び渦のようになると、オケアノスの肉体を引き込んでいく。
フレイはそこで分析を行う。
どこかに隙はないか、と。ここでふと、あることに気づいた。メムロの腹辺りである。何かが光り輝いていることが分かった。オケアノスが最初にメムロの腹部分を狙ったのはこれだったのか?
そこには緑色に輝く……。
フレイはそこで引っかかった。これまでのダンジョンボスである。キメラであれば瞳。ヒュドラであれば心臓。サテュロスでは攻撃しなかったものの角が該当する。この共通点は偶然なのだろうか。
フレイはエデンに頼んだ。
「どこかでスキをついて、あの緑色の部分を狙うことはできない?」
「わかりました。やってみます」
エデンはキメラの牙の矢を持ち出すと、構えた。
そして、ふっと息をつくと、放っていく。放たれた矢は違わず、緑色に光る部分を撃ちぬいた。すると。これまで、攻撃されていたオケアノスへの攻撃は終わる。
そして、渦は次々に姿を変えていき、最終的にはメムロの姿さえもドロドロになり、地面へと溶けるように消えていった。倒した……のか? ただ他の怪物のように死体が残ることはない。
そこで、ふらついていた目の前の巨人が姿を人間へと戻した。
「オケアノスさん……助かりました」
この前のこともあり、レイアとエデンはどこかあたふたしているように見えたが、フレイの言葉と共に会釈をした。
「せめてものの、恩返しだ。俺も目指すことができた」
得意げに語るオケアノスにフレイはどこか慎重に声をかける。
「先ほどの怪物は何なんですか。様々な怪物や人に姿を変えていましたが」
「あれは……ピクミーと言う怪物。最強のダンジョンボスさ。あらゆるものを飲み込み、再現することができる」
と言うことはメムロお姉ちゃんは呑み込まれて……。あのダンジョンボスに敗北したということである。その真実に落ち込むフレイを心配してか、エデンは声をかけた。
「でも、倒せたんですから」
その答えにオケアノスは非情な真実を告げる。
「あいつは死んでいない。いや、それどころか。死なない怪物なんだよ」
フレイの言葉と共に彼女の方向を見る、レイアとエデン。彼女たちにとっても、メムロはレアの民族の英雄そのものであった。突如、行方不明となった彼女がなぜここにいるのか。そして、その攻撃方法は異様であった。
だが、そう呼びかけたフレイ自身、目の前の姉が姉でないことに気づきつつあった。明らかに人間ではない。ただ、その姿は姉である。恐る恐る彼は尋ねる。
「な……なんで攻撃するの?」
そのフレイの言葉を聞き入れず、メムロはその触手を伸ばし、次々に攻撃を仕掛けてくる。フレイは装備しておらず、レイアの盾に守られる。だが、「メムロ」は地面へ手をかざすと、そこで風が大きく巻き上がる。
そのまま彼女たちより上空へと向かい、打ち出したのは不意に彼女の前に発生した闇からの巨大な岩であった。それらが次々に彼女たちを襲うも、レイアはエデンの上へと飛びだし、盾で防ぐ。
だが、盾ごと体を岩の勢いのまま吹き飛ばされ、それにエデンも巻き込まれる。地面にたたきつけられた彼女たちは、ふらつきながらも立ち上がろうとするが、上空に浮かぶメムロはその姿を再び変え、渦のような姿へと変貌していた。渦の中心には大きな口があり、その口が大きく開く。
三人を軽く呑み込む大きさ。そのまま彼らを呑み込もうとしたときである。突如、横から飛ぶ高速の物体と破裂音と共に渦が吹き飛ばされる。
高速の物体の飛んできた先には、センシャが配置されていた。
そこで彼女たちの下にやってきた姿があった。その姿は全身が機械で覆われていた。声こそソノであるが、もはや生物ではない。
「エデン、無理をするな、死んでもいいのか?」
「その姿は……えと、なんでここに?」
「ここからは軍が引き受ける。ギルドの者は下がっていろ」
命令口調にフレイは引っ掛かったが、今の装備で対応できないのは分かっている。そして、フレイ自身も……。その答えのようにテミスから声が上がった。
「もう、変身することはできないよ、エネルギーが足りない……」
「だよね……」
「いったん、ここは軍に任せよう」
「了解」
フレイはテミスにそう返答し、そのままエデンとレイアと共に走り去っていく。娘を守るという意思のものだろうが、ソノが背中を守っていることに妙な安心感があった。
渦は再び姿を変える。そして生まれたのは、前にオケアノスと共に戦った巨人であった。
「姿を変えた……!?」
ソノの驚く声が聞こえる。
フレイもその姿を後ろ目で確認し、先ほどの姉も姿を変えたうちの一つでしかないことを悟った。ただ、怪物だらけの中でなぜ、姉に変身しているのかは理解できなかった。
「撃て」
ソノの命令の元センシャは次々に攻撃を仕掛けるも、それらは巨人に着弾するもまるでダメージを与えられていない。さらに巨人は駆けると、センシャを蹴り飛ばし、吹き飛ばす。さらに腕を掲げると、吹雪が吹き始めた。前の戦闘の時と変わらない。
「何が起きているんだよ……!?」
メムロは怪物だったのか。いや、それであれば、フレイを見れば何かしら反応があるはずだ。忘れているとは思えない。
続けて、彼女の姿は再び変貌する。その姿は再びメムロであるが、巨大な姿となっていた。さらに先ほどの闇のような空間を生み出すと、岩が降り注いでいく。ソノの声がしていた、あの機械はかわしていくものの、前に進むことさえまともにできていない。
隕石は広い範囲に降り注ぎ、センシャを破壊し、壁内へと逃げ込もうとしていたレイアの盾にフレイもエデンも隠れることができ、良かったものの、それがなければ即死だったのかもしれない。だが、ダンジョンボス製の盾でさえも、穴やヒビが目立ってくる。
これは……無理だ。
いくら何でも。
その時だった。
自分たちが隕石よりさらに大きな影に覆われたのは。
そこに立っていたのは青い髪の男の巨人。オケアノスであった。
「き、来ましたね!」
テミスの興奮気味の声が響く。
「よかった……」
フレイの声と共にオケアノスは立ち上がると、メムロに殴りかかっていく。降り注ぐ隕石の向きが変わり、彼だけに向かって行くが、オケアノスは周囲に水を集めると、防いでいった。
そのまま突撃し、腹部へと殴りかかる。
だが、殴った先が殴る前に穴が開く。そして、それがぎゅっとオケアノスの腕を包んでしまった。
「……ぐっ」
「ザンネン」
そこでメムロが言葉を発したのがわかった。調子は同じである。
だが、オケアノスはそれでも、と次々に水流を生み出すと、メムロへ襲い掛からせていく。
だが、メムロは次々に体を変形させかわしていく。
さらに、その肉体は再び渦のようになると、オケアノスの肉体を引き込んでいく。
フレイはそこで分析を行う。
どこかに隙はないか、と。ここでふと、あることに気づいた。メムロの腹辺りである。何かが光り輝いていることが分かった。オケアノスが最初にメムロの腹部分を狙ったのはこれだったのか?
そこには緑色に輝く……。
フレイはそこで引っかかった。これまでのダンジョンボスである。キメラであれば瞳。ヒュドラであれば心臓。サテュロスでは攻撃しなかったものの角が該当する。この共通点は偶然なのだろうか。
フレイはエデンに頼んだ。
「どこかでスキをついて、あの緑色の部分を狙うことはできない?」
「わかりました。やってみます」
エデンはキメラの牙の矢を持ち出すと、構えた。
そして、ふっと息をつくと、放っていく。放たれた矢は違わず、緑色に光る部分を撃ちぬいた。すると。これまで、攻撃されていたオケアノスへの攻撃は終わる。
そして、渦は次々に姿を変えていき、最終的にはメムロの姿さえもドロドロになり、地面へと溶けるように消えていった。倒した……のか? ただ他の怪物のように死体が残ることはない。
そこで、ふらついていた目の前の巨人が姿を人間へと戻した。
「オケアノスさん……助かりました」
この前のこともあり、レイアとエデンはどこかあたふたしているように見えたが、フレイの言葉と共に会釈をした。
「せめてものの、恩返しだ。俺も目指すことができた」
得意げに語るオケアノスにフレイはどこか慎重に声をかける。
「先ほどの怪物は何なんですか。様々な怪物や人に姿を変えていましたが」
「あれは……ピクミーと言う怪物。最強のダンジョンボスさ。あらゆるものを飲み込み、再現することができる」
と言うことはメムロお姉ちゃんは呑み込まれて……。あのダンジョンボスに敗北したということである。その真実に落ち込むフレイを心配してか、エデンは声をかけた。
「でも、倒せたんですから」
その答えにオケアノスは非情な真実を告げる。
「あいつは死んでいない。いや、それどころか。死なない怪物なんだよ」
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