勇者パーティーから追放されたけど金髪巨乳にTSしたのでざまあしてやります

かわうそ

文字の大きさ
8 / 14

8.ライバル視される俺

しおりを挟む
 振り向いた先に立っていたのは、赤みがかった栗色のショートボブを風に揺らした少女だった。小柄で華奢な体躯だが、翡翠色の瞳はこちらを射殺さんばかりに燃えている。背に負った杖には複雑な魔法陣の装飾が施されていて、彼女が魔法使いであることを雄弁に物語っていた。
 つかつかとこちらに歩み寄ってきた彼女は、俺ではなくアルたんの前に立ち、胸──俺のに比べるとずいぶん慎ましやかな──を張って宣言する。

「アルフレッド、約束忘れてないでしょうね? あたしが、あんたたちのパーティーに入るって話!」

 アルたんの顔が固まった。どうやら、忘れていたらしい。

「リーゼロッテ……」
「リーゼよ。何回言ったらわかるの? リーゼロッテなんて長ったらしい名前で呼ばないでって言ったでしょ」

 リーゼロッテ──リーゼと呼ばれた少女は、腰に手を当ててアルたんを睨み上げている。百八十近いアルたんと、百六十あるかないかのリーゼでは身長差がかなりあるのに、その迫力は互角以上だった。

「約束はしてる。ただ──」
「ただ?」

 リーゼの眉がつり上がる。アルたんは明らかにたじろいでいた。勇者が小柄な少女にたじたじになっている図は、不謹慎だけどちょっと面白い。

「事情が変わったんだ」
「事情? どんな事情よ」

 アルたんの視線が、ちらりと俺に向いた。リーゼの視線がそれを追って、初めて俺の存在を認識する。
 翡翠色の瞳が俺を頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見て、ぴたりと止まった。胸の位置で。

「……なに、この人」

 リーゼの声から、一瞬で温度が消えた。

「昨日助けた人で、エミっていうんだ。それで──」
「で、この人をパーティーに入れるって? あたしの代わりに?」

 さすがに勘がいい。というか、アルたんがわかりやすすぎるのか。

「代わりってわけじゃ……」
「じゃあなんなのよ! あたし、ずっとこの日を待ってたのに! やっと魔法使い枠が空くからって、あんたが声かけてきたんじゃない!」

 リーゼの声が震えている。怒りだけじゃない。その奥に、悔しさと不安が滲んでいるのがわかった。ずっと待ってた、という言葉の重さが、俺には痛いほど理解できる。
 だって俺も、ずっと待っていたのだ。いつかスキルが目覚める日を、仲間として認めてもらえる日を。結局その日は来なくて、追放という形で終わった。

「あの……」

 俺は、二人の間に割って入った。

「わたしは、まだパーティーに入るとは言ってません」

 リーゼの鋭い視線が俺に突き刺さる。近くで見ると、整った顔立ちの女の子だ。怒っているのに、頬がうっすら紅潮しているのが可愛らしい──なんて感想を抱いてしまうのは、まだ俺の中に男の感性がしっかり残っている証拠だろう。

「じゃあ入らないの?」
「それも、まだ決めていません」
「はぁ? なにそれ、はっきりしなさいよ」

 リーゼは呆れたように頬を膨らませた。それから、俺のカードがまだカウンターに置かれたままなのに気付いたらしく、視線を落とす。
 見るな──と思ったけど、遅かった。

「…………」

 リーゼの目が、音を立てて見開かれた。

「大魔術師……? レベル30で……全属性S……並列詠唱A……?」

 声はどんどん小さくなっていって、最後はほとんど呟きに近かった。
 リーゼの肩が落ちるのが見えた。自信に満ちていた翡翠の瞳が、一瞬だけ揺らぐ。それは自分のステータスと比較してしまったからだろう。魔法使いとして真摯に研鑽を積んできた彼女には、このカードに刻まれた数値の異常さが誰よりもわかるのだ。
 しかし、その動揺は本当に一瞬だった。

「──ふん」

 リーゼは、鼻を鳴らした。

「ステータスが高けりゃ強いってわけじゃないでしょ。実戦経験は? パーティー戦闘の連携は? 魔術の制御技術は?」

 全部ない。どれもこれも、まったくない。反論のしようがなかった。

「あたしは三年間、魔術学院で実戦訓練を積んできたの。チーム戦闘の連携だって、座学だけじゃなく模擬戦で何百回と経験してる。ステータスだけの素人に負けるつもりはないわ」

 リーゼは背筋を伸ばして、まっすぐに俺を見据えた。翡翠の瞳に灯った炎は、もう揺らいではいなかった。
 ──強い子だ。
 俺が同じ立場だったら、あのステータスカードを見てここまですぐに立ち直れただろうか。たぶん無理だ。現に俺は、『スキルなし』の表示を見るたびに笑って誤魔化すことしかできなかった。

「リーゼ、落ち着け。誰も君を外すとは言っていない」

 アルたんが、両手を広げてリーゼを宥めにかかった。

「パーティーの定員は六人だ。今は四人だから、二人とも入れる」
「「はぁ!?」」

 リーゼと俺の声が、綺麗に重なった。なら俺を追放する必要なかっただろ?

「いや、まだ入るとは……」
「あたしはこんな得体の知れない女と一緒にパーティー組むなんて──」

「どっちも黙れ!」

 アルたんが、勇者の威圧を発動した。俺とリーゼだけでなく、ギルド中が一瞬だけ静まる。こいつ、こういう時はリーダ気質発揮するんだよな。

「エミには、まだ返事をもらってない。リーゼとの約束も守る。結論を急ぐ必要はないだろ。まずは一緒に依頼を一つこなしてみればいい。それから判断すればいいだろう?」

 ふむ、と横でゲオルクが腕を組んで頷いている。

「勇者殿の仰る通りですな。百の言葉より一の実戦。美しいお二人の力、この目でしかと見届けたいものです」

 誰がお前に見届けてもらいたいんだ。

「…………」

 リーゼは唇を噛んでしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。

「……わかった。一回だけよ。でも、絶対あたしのほうが役に立つって証明してみせるから」

 そう言って、リーゼは踵を返した。ギルドの出口に向かいながら、一度だけ振り返って俺を見る。

「覚悟しときなさい。あたし、手加減とか嫌いなんだから」

 バン、と扉が閉まった。嵐のような女の子だった。
 でも嫌いじゃないな、ああいうの。まっすぐで、自分の力に誇りを持っていて、負けたくないって気持ちを隠さない。かつての俺にはなかった強さだ。

「すまない、エミ。面倒なことに巻き込んで」

 アルたんが申し訳なさそうに頭を掻いた。

「いいんだよ。……ううん、いいんです。なんだかちょっと、面白くなってきたかも」

 自分でも驚いたけど、本心だった。
 村人だった俺には、誰かに必要とされることも、誰かとぶつかることもなかった。いつだって俺は、パーティーの隅っこで空気みたいに存在しているだけだったのだ。
 でも今は違う。アルたんが必要だと言った。リーゼが自分から挑んできた。
 まだ自分の力の使い方なんてわからない。魔術師としての最初の一歩すら踏み出していない。……けど、あの夢の中で消えていった彼女の最後の言葉が、胸の奥でまだ温かく灯っている。

 ──忘れないで。あなたはもう、村人なんかじゃないわ。

「さて」

 アルたんがギルドの掲示板に目を向けた。依頼書がびっしりと貼り出されている。

「ちょうどいい依頼を探すか。エミ、なにか希望はあるか?」
「できれば、死なないやつがいいです」
「ははは。善処する」

 笑ったアルたんの顔は、昔のアルたんにちょっとだけ似ていた。
 あの頃の、俺がまだ〝エミっち〟だった頃の──。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...