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真理奈と偽装と本当の…… 後編 ”真理奈ルート”
第55M話「真理奈と偽装と本当の……」後編
「ふぅ……取りあえず俺が言いたいのは二つだ」
しかし俺は、彼女の都合には付き合わずにそのまま話を進めた。
「……うっ」
「ひとつ、俺がお前の恋人ってどんなイカレた企業が依頼した空想科学物語だ?」
「そ、それは……えっと……」
頬を染めて不審にキョロキョロと視線を彷徨わせる美少女。
「あのっ!あのね、朔太郎……実は……」
「まぁいい。取りあえず立てよ、俺の言いたい事の二つ目は……”目のやりどころ”に困るってことだ」
意を決したようになにかを口走ろうとした少女の唇を制し、俺は足元の真理奈に右手を差し出す。
「目の……やりどころ?」
そして少女は、そこで初めて自身の体勢に気づいたのだった。
「っっ!!」
俺が弾き飛ばした弐宇羅 太一とかいう”くせっ毛男”の崩れる体から身を守るため、縛られた状態で満足に動けない少女は咄嗟に地面に潰れてそれをやり過ごす事を選択した。
その選択は果たして正解であったのだが――
咄嗟であったため、緊急避難的動作であったため、彼女は無様に尻餅を着く形になった。
そして、そこを狙って残党である最後の一人が襲いかかったわけだが……
少女に覆い被さる変質者のようになった体勢のその男は、股間を彼女の膝で思い切り蹴り上げられ轟沈したのだった。
――まぁ、つまり、
現在の真理奈の体勢は……
「……」
コンクリート上にお尻を着いて俺を見上げている状態で。
もっと詳しく言うなら……
膝丈の薄いグレーの清楚なプリーツスカートはこうなってみると割合短くて、
――あれだ、結構、際どい?というか
若干開いた状態の足、白い太ももの間からピンク色の可愛らしい布が覗いているという……
「ちょっ!?ちょっと!なに見てんのよっ!馬鹿!馬鹿太郎!!」
顔をこれ以上無いくらいに沸騰させた真理奈は直ぐに気づき、叫んで前部分を押さえる。
――けど、既に後の祭りだよなぁ……
俺は――
「兎に角、掴まれよ」
「う……」
視線を逸らしながらも美少女はそっと俺の差し出した手に白い指を乗せて……
立ち上がる。
「…………い、一応……お礼は言っておく……あ、ありがとう」
利発そうな瞳を気まずそうに逸らせながらもキチンと義理は欠かさない少女。
なんだかんだ言ってこういうキッチリした性格は真理奈らしいと言えばらしい。
「いや別に……で?」
「?」
恥ずかしさで少々パニックになった少女は俺の意図が解らず、一瞬だけ不思議そうな表情をしたが……
「だから、俺と真理奈が恋人だって何故か流布されている件だ」
受け取った謝辞もそこそこに、大事な方の件を再度蒸し返して追求する俺の言葉に再び少女の表情は緊張で固まっていた。
「それは……その……つまり……あの……あははっ」
「笑って誤魔化すな、ピンクちゃん」
「だ、誰がピンクちゃんよっ!」
スススっとプリーツスカートの前を無意識にだろう押さえ、真っ赤になって怒る美少女。
「で?」
だが俺は追求の手をを緩めない。
「うっ……それは……あ、あのね朔太郎、貴方は六神道に狙われているのよ」
「……」
「永伏さんを倒して、御橋 來斗を倒して、古神になった岩家先輩をも倒した……」
――まぁな……
付け加えるなら六神道を理解してからの最初の敵は真理奈だったけどな。
「もちろん六神道の危機を救ったのは貴方で、本来なら感謝すべき事だと私は思うけど……上層部、長老会の結論はそうではなかったのよ」
「……」
――長老会……そういえば波紫野 剣が以前にそんな事を言っていたな
天都原学園はおろか、この天都原市そのものが六神道の街だと。
此所では何もかもが六神道に始まり六神道に終わる、全てそういうことだと。
――なるほど
一見、六神道の揉め事を、不名誉を解決した折山 朔太郎。
本来ならば感謝される立場なのかも知れない。
――が!
波紫野 剣も言っていたが世の中には建前と本音がある。
天都原市を古来から支配してきた六神道。
その六神道の神官的家系が絶大な権力を握っていて、それこそ政治家や警察なんてモノも躊躇するぐらいで、それがこの地域では常識だった。
伝統という名の拘束……
選ばれた存在という自分たちの尊厳を保つための排他主義。
自己の誇りや欲を第一に生きる者共は他者の多様性を認めない、生き方を許容しない。
――これは全くの横暴だ、筋なんてあったもんじゃ無い
だが……
――そうだ
名家も宗教も根底は同じだ。
いつもそれに収まる事の出来ない人間を弾き飛ばし、時には押しつぶす……
――
「その……だから」
――なるほど、なるほど、
活躍したのは部外者で、倒されたのは六神道の人間……
――そりゃ面白くないわな、てか面子が立たないってか?
つまり、事を収めたのは部外者で無く六神道に縁のある者……
飽くまで”そう言う体裁”が重要と言うことで、その為に俺は邪魔だと。
それをなんとか阻止しようと、この東外 真理奈は俺を恋人……
この場合は俺を身内という立場にするのが重要だから、実際は婚約者とかいう体裁で他を納得させようとした――
――とか、そういうシナリオか?
「……」
「うう……」
かなり強引ではあるが……
争わずに収めるにはそうするしか無かった訳か。
実際、この数ヶ月、俺は影で東外 真理奈に救われていた……と?
「…………解せないことがひとつ、真理奈がこんな程度の奴等に捕まるとも思えない」
暫く思考してから、そう言う推測に落ち着いた俺だが……
その時、俺の口をついて出た言葉は――
”彼女がそこまでして?自身の経歴を汚してまでして俺を助けてなんの得が?”
といった”ごく真っ当な質問”では無く、少し的外れな言葉だった。
――なぜか?
それは……
俺は多分、”察している”から。
真理奈から”その言葉”を聞くのを避けたのだろう。
――俺はそういうのは……
――いや……本当はどうしたいとか……相変わらず解らない俺は……
「それは……奴らから朔太郎を捕まえたと言われて……それで内々に私と交渉がしたいって……その交渉場で出された飲み物に多分……薬が……その……」
「……」
心中で”葛藤”真最中の俺に向け、少女は聞こえないくらいの途切れ途切れの声で恥ずかしそうに答えた。
――はぁぁ……
ツッコミどころ満載だな。
てか、真理奈はこんな迂闊じゃなかったはずだが……
――いや、それも真理奈が変わった……のか?
俺と出会って?
いや、それは自信過剰が過ぎるのか。
――いいや、もし、もしそうならば……俺は?……どう……なんだ……
つい最近まで自分如きの事でこんなに葛藤するなんて無かった俺は、天都原学園に来て変わった……のだろうか?
「朔太郎?」
「し、しかし……俺がこんな奴らに捕まるほど間抜けなわけないって知ってるだろうが」
グルグル廻る思考を、感情を、色々言いたい事を飲み込んで――
往生際の悪い折山 朔太郎は誤魔化し続ける。
未だ熨されたままでそこら辺に転がる五人の男達に視線をやって、少女にそう言ってみる。
「そ、それは……朔太郎が強いのは知っているけど……相手が想像以上に多勢の場合もあるし、色々と汚い手を使われる場合だって……」
「……」
いやいや、こんなクズが何百人いても変わらない。
「その……」
実は同意見だろう美少女が申し訳なさげに俺を上目遣いに見てくる。
「……」
――真理奈は変わった
それは好ましいことだろうか?
――俺は変われるだろうか?
この少女なら……俺は……
「お、俺の事は気にするな。あと、お前もあまり気にするな……”純潔”なんて今のご時世そんなに……」
「純……潔?……へ?え?」
気を取り直し、最大限に気を遣ったつもりの俺の言葉に彼女の瞳が丸くなる。
「いや、だから此奴らに……」
――!!
俺の言葉が終わらないうちに、少女の白い頬はボッと朱に染まった!
「ないっ!!ない!ない!無いわよっ!なに変なこと想像してんのよっ!変態っ!」
――いや、えらい言われ様だな
「けど、この弐宇羅 太一って男……東外の分家なんだろ?で、本家の東外を乗っ取ろうと真理奈を手籠めに……」
「無いわよっ!だいたい分家のこの男にそんな根性ある訳ないし!これだって多分、私を取られた嫉妬……っていうか、此奴のただの一方通行だから!!弐宇羅が私が好きなのが朔太郎だって何処かで聞いて…………あっ!」
そこまで口走って少女は固まった。
「……」
――典型的な自滅型だな、真理奈……
「う……うぅ……」
そして、その場で小さくなってしまう。
――ふぅ
「まぁな……兎に角、俺の事は気にするな。俺は別に……」
「気にするわよっ!」
「いや、俺の事だし、お前が責任を感じることは……」
「だ・か・らぁ!薬って言っても痺れ薬だしっ!意識もちゃんと在ったしっ!なんにもされて無いしっ!……じゅ……純潔だし……」
彼女が気にしていたのは”そっち”だった。
「ち、違うんだから……変態」
耳まで染めた赤い顔で、涙目になって……彼女は抗議する。
「解った、解ったって……はいはい、東外 真理奈は純潔。正真正銘の処女だってな」
「しょっ!?……お、オブラートに包みなさいよぉぉっ!!」
――うわぁぁ!面倒臭ぇぇ!!
俺の顔は、詰め寄る真理奈の勢いに圧倒され苦笑いさえもが引きつった状態だったろう。
「ほ……ほんとう……なんだから……さ……たろ……に……そんな……思われるの……や……だ」
「は?お前なに言って……」
急にボソボソと聞き取りにくくなる声。
俺は何事かとばかりに彼女の顔を覗き込もうとするが……
ババッ!!
「うぉっ!」
その途端、真理奈は勢いよく顔を上げた。
「証明するっ!」
「…………は?」
さらに意味が解らなくなった。
「だ・か・らぁっ!!しょ……証明する……わ」
サラサラの肩までのミディアムヘア、その襟足から垣間見える白い項まで真っ赤に染めた美少女は戸惑いがちに……
しかし、利発そうな瞳に毅然とした光を揺らめかせ、
控えめな薄い唇に確かに決意を乗せて、そう俺に言い放っていた。
「……」
十二月の寒空の下……
その告白を……
未だ物事の進路が他人頼りで情けない俺は黙ってそれを聞くだけなのだった。
第55M話「真理奈と偽装と本当の……」後編 END
「ふぅ……取りあえず俺が言いたいのは二つだ」
しかし俺は、彼女の都合には付き合わずにそのまま話を進めた。
「……うっ」
「ひとつ、俺がお前の恋人ってどんなイカレた企業が依頼した空想科学物語だ?」
「そ、それは……えっと……」
頬を染めて不審にキョロキョロと視線を彷徨わせる美少女。
「あのっ!あのね、朔太郎……実は……」
「まぁいい。取りあえず立てよ、俺の言いたい事の二つ目は……”目のやりどころ”に困るってことだ」
意を決したようになにかを口走ろうとした少女の唇を制し、俺は足元の真理奈に右手を差し出す。
「目の……やりどころ?」
そして少女は、そこで初めて自身の体勢に気づいたのだった。
「っっ!!」
俺が弾き飛ばした弐宇羅 太一とかいう”くせっ毛男”の崩れる体から身を守るため、縛られた状態で満足に動けない少女は咄嗟に地面に潰れてそれをやり過ごす事を選択した。
その選択は果たして正解であったのだが――
咄嗟であったため、緊急避難的動作であったため、彼女は無様に尻餅を着く形になった。
そして、そこを狙って残党である最後の一人が襲いかかったわけだが……
少女に覆い被さる変質者のようになった体勢のその男は、股間を彼女の膝で思い切り蹴り上げられ轟沈したのだった。
――まぁ、つまり、
現在の真理奈の体勢は……
「……」
コンクリート上にお尻を着いて俺を見上げている状態で。
もっと詳しく言うなら……
膝丈の薄いグレーの清楚なプリーツスカートはこうなってみると割合短くて、
――あれだ、結構、際どい?というか
若干開いた状態の足、白い太ももの間からピンク色の可愛らしい布が覗いているという……
「ちょっ!?ちょっと!なに見てんのよっ!馬鹿!馬鹿太郎!!」
顔をこれ以上無いくらいに沸騰させた真理奈は直ぐに気づき、叫んで前部分を押さえる。
――けど、既に後の祭りだよなぁ……
俺は――
「兎に角、掴まれよ」
「う……」
視線を逸らしながらも美少女はそっと俺の差し出した手に白い指を乗せて……
立ち上がる。
「…………い、一応……お礼は言っておく……あ、ありがとう」
利発そうな瞳を気まずそうに逸らせながらもキチンと義理は欠かさない少女。
なんだかんだ言ってこういうキッチリした性格は真理奈らしいと言えばらしい。
「いや別に……で?」
「?」
恥ずかしさで少々パニックになった少女は俺の意図が解らず、一瞬だけ不思議そうな表情をしたが……
「だから、俺と真理奈が恋人だって何故か流布されている件だ」
受け取った謝辞もそこそこに、大事な方の件を再度蒸し返して追求する俺の言葉に再び少女の表情は緊張で固まっていた。
「それは……その……つまり……あの……あははっ」
「笑って誤魔化すな、ピンクちゃん」
「だ、誰がピンクちゃんよっ!」
スススっとプリーツスカートの前を無意識にだろう押さえ、真っ赤になって怒る美少女。
「で?」
だが俺は追求の手をを緩めない。
「うっ……それは……あ、あのね朔太郎、貴方は六神道に狙われているのよ」
「……」
「永伏さんを倒して、御橋 來斗を倒して、古神になった岩家先輩をも倒した……」
――まぁな……
付け加えるなら六神道を理解してからの最初の敵は真理奈だったけどな。
「もちろん六神道の危機を救ったのは貴方で、本来なら感謝すべき事だと私は思うけど……上層部、長老会の結論はそうではなかったのよ」
「……」
――長老会……そういえば波紫野 剣が以前にそんな事を言っていたな
天都原学園はおろか、この天都原市そのものが六神道の街だと。
此所では何もかもが六神道に始まり六神道に終わる、全てそういうことだと。
――なるほど
一見、六神道の揉め事を、不名誉を解決した折山 朔太郎。
本来ならば感謝される立場なのかも知れない。
――が!
波紫野 剣も言っていたが世の中には建前と本音がある。
天都原市を古来から支配してきた六神道。
その六神道の神官的家系が絶大な権力を握っていて、それこそ政治家や警察なんてモノも躊躇するぐらいで、それがこの地域では常識だった。
伝統という名の拘束……
選ばれた存在という自分たちの尊厳を保つための排他主義。
自己の誇りや欲を第一に生きる者共は他者の多様性を認めない、生き方を許容しない。
――これは全くの横暴だ、筋なんてあったもんじゃ無い
だが……
――そうだ
名家も宗教も根底は同じだ。
いつもそれに収まる事の出来ない人間を弾き飛ばし、時には押しつぶす……
――
「その……だから」
――なるほど、なるほど、
活躍したのは部外者で、倒されたのは六神道の人間……
――そりゃ面白くないわな、てか面子が立たないってか?
つまり、事を収めたのは部外者で無く六神道に縁のある者……
飽くまで”そう言う体裁”が重要と言うことで、その為に俺は邪魔だと。
それをなんとか阻止しようと、この東外 真理奈は俺を恋人……
この場合は俺を身内という立場にするのが重要だから、実際は婚約者とかいう体裁で他を納得させようとした――
――とか、そういうシナリオか?
「……」
「うう……」
かなり強引ではあるが……
争わずに収めるにはそうするしか無かった訳か。
実際、この数ヶ月、俺は影で東外 真理奈に救われていた……と?
「…………解せないことがひとつ、真理奈がこんな程度の奴等に捕まるとも思えない」
暫く思考してから、そう言う推測に落ち着いた俺だが……
その時、俺の口をついて出た言葉は――
”彼女がそこまでして?自身の経歴を汚してまでして俺を助けてなんの得が?”
といった”ごく真っ当な質問”では無く、少し的外れな言葉だった。
――なぜか?
それは……
俺は多分、”察している”から。
真理奈から”その言葉”を聞くのを避けたのだろう。
――俺はそういうのは……
――いや……本当はどうしたいとか……相変わらず解らない俺は……
「それは……奴らから朔太郎を捕まえたと言われて……それで内々に私と交渉がしたいって……その交渉場で出された飲み物に多分……薬が……その……」
「……」
心中で”葛藤”真最中の俺に向け、少女は聞こえないくらいの途切れ途切れの声で恥ずかしそうに答えた。
――はぁぁ……
ツッコミどころ満載だな。
てか、真理奈はこんな迂闊じゃなかったはずだが……
――いや、それも真理奈が変わった……のか?
俺と出会って?
いや、それは自信過剰が過ぎるのか。
――いいや、もし、もしそうならば……俺は?……どう……なんだ……
つい最近まで自分如きの事でこんなに葛藤するなんて無かった俺は、天都原学園に来て変わった……のだろうか?
「朔太郎?」
「し、しかし……俺がこんな奴らに捕まるほど間抜けなわけないって知ってるだろうが」
グルグル廻る思考を、感情を、色々言いたい事を飲み込んで――
往生際の悪い折山 朔太郎は誤魔化し続ける。
未だ熨されたままでそこら辺に転がる五人の男達に視線をやって、少女にそう言ってみる。
「そ、それは……朔太郎が強いのは知っているけど……相手が想像以上に多勢の場合もあるし、色々と汚い手を使われる場合だって……」
「……」
いやいや、こんなクズが何百人いても変わらない。
「その……」
実は同意見だろう美少女が申し訳なさげに俺を上目遣いに見てくる。
「……」
――真理奈は変わった
それは好ましいことだろうか?
――俺は変われるだろうか?
この少女なら……俺は……
「お、俺の事は気にするな。あと、お前もあまり気にするな……”純潔”なんて今のご時世そんなに……」
「純……潔?……へ?え?」
気を取り直し、最大限に気を遣ったつもりの俺の言葉に彼女の瞳が丸くなる。
「いや、だから此奴らに……」
――!!
俺の言葉が終わらないうちに、少女の白い頬はボッと朱に染まった!
「ないっ!!ない!ない!無いわよっ!なに変なこと想像してんのよっ!変態っ!」
――いや、えらい言われ様だな
「けど、この弐宇羅 太一って男……東外の分家なんだろ?で、本家の東外を乗っ取ろうと真理奈を手籠めに……」
「無いわよっ!だいたい分家のこの男にそんな根性ある訳ないし!これだって多分、私を取られた嫉妬……っていうか、此奴のただの一方通行だから!!弐宇羅が私が好きなのが朔太郎だって何処かで聞いて…………あっ!」
そこまで口走って少女は固まった。
「……」
――典型的な自滅型だな、真理奈……
「う……うぅ……」
そして、その場で小さくなってしまう。
――ふぅ
「まぁな……兎に角、俺の事は気にするな。俺は別に……」
「気にするわよっ!」
「いや、俺の事だし、お前が責任を感じることは……」
「だ・か・らぁ!薬って言っても痺れ薬だしっ!意識もちゃんと在ったしっ!なんにもされて無いしっ!……じゅ……純潔だし……」
彼女が気にしていたのは”そっち”だった。
「ち、違うんだから……変態」
耳まで染めた赤い顔で、涙目になって……彼女は抗議する。
「解った、解ったって……はいはい、東外 真理奈は純潔。正真正銘の処女だってな」
「しょっ!?……お、オブラートに包みなさいよぉぉっ!!」
――うわぁぁ!面倒臭ぇぇ!!
俺の顔は、詰め寄る真理奈の勢いに圧倒され苦笑いさえもが引きつった状態だったろう。
「ほ……ほんとう……なんだから……さ……たろ……に……そんな……思われるの……や……だ」
「は?お前なに言って……」
急にボソボソと聞き取りにくくなる声。
俺は何事かとばかりに彼女の顔を覗き込もうとするが……
ババッ!!
「うぉっ!」
その途端、真理奈は勢いよく顔を上げた。
「証明するっ!」
「…………は?」
さらに意味が解らなくなった。
「だ・か・らぁっ!!しょ……証明する……わ」
サラサラの肩までのミディアムヘア、その襟足から垣間見える白い項まで真っ赤に染めた美少女は戸惑いがちに……
しかし、利発そうな瞳に毅然とした光を揺らめかせ、
控えめな薄い唇に確かに決意を乗せて、そう俺に言い放っていた。
「……」
十二月の寒空の下……
その告白を……
未だ物事の進路が他人頼りで情けない俺は黙ってそれを聞くだけなのだった。
第55M話「真理奈と偽装と本当の……」後編 END
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とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!