ぼくと子猫と正義のみかた

古葉レイ

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第一話・正義のみかたのお仕事

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「きみ、正義のみかたにならないかい?」
 ぼくのひざの上で、子猫のギンが聞いてきた。
 空は晴れていて、雲はやたらと白かった。肉球をなめる子猫は可愛くて、小さな頭を何度もなでていたら声がした。
 ベンチに座っていたぼくは顔をあげて右を見た。誰も居なくて左を見る。ベンチの下と後ろを見て、もう一度ひざの上のギンを見た。
「どうしたんだい? 何か探し物かい?」
「ギンがしゃべった」
 ぼくのおどろきにギンが小さくあくびする。手足を伸ばして伸びをする子猫は可愛くて、ベンチの横においてある黒いランドセルに肉球がぽんと当たると、そこに付けた猫のキーホルダーが揺れた。
「猫ってしゃべるんだ?」
「それはとても正しいおどろきだよ、ともき。そのドキドキは大切にするといい。ただし周りにはそれを言わない方がいいかな。みんなにはわたしの声はにゃあとしか聞こえないからさ」
 きらきらと光る銀色の子猫がぼくを見上げてそう言った。小さな口がまたあくびした。すごくきれいな目をした子猫のギンは、あごをなでるとごろごろと鳴く。
「ともき、きみは正義のみかたになる素質がある」
 そしてまた、ギンはぼくにそう言った。正義のみかた? 不思議な言葉だった。学校から家への帰り道。今日で二度目の、出会ったばかりの子猫はしゃべって、変なことを言う。
「そうなの?」
「そうさ」
 ぼくの言葉にギンがうなずいた。気持ちよさそうに子猫のギンがのびをして、「なってよ、正義のみかたに」と言う。
 正義のみかた。
 ぼくはドキドキした。毎日学校と塾の行き帰りはつまらなくて、正義のみかたはきっとそうじゃない。わくわくして楽しそうだった。
 正義のみかたか。昔はそういうのにあこがれた気もする。幼稚園に行っていた頃、テレビとかを観ながらだけれども。
 とう、なんて言いながら戦う姿にかっこいいと思った。
 ギンの頭をなでながら想像してみる。剣を持って振り回すのかな。空を飛ぶのかな。ギンの背中をなでながら思い描く。この青い空を飛んだから気持ちよさそうだな。魔法を使うのかな。仲間が居る、とか。一緒に戦おう、とか。

 ないなーと思った。

「ぼくにそんな素質はないと思うよ? 頭も悪いしさ」
 昨日、学校の帰り道に、公園のそばで寝ていた子猫をカラスから助けたのが最初だった。ぼくはちょうど、持っていたかさをふり回してギンを助けた。
 ギンという名前は、この子の毛が銀色だからそう付けた。われながらいい名前を付けたと思う。昨日見つけた子猫のギンは、今日も公園のベンチの上に居た。
「それよりギン、お腹は空いていない? 給食のパンならあるよ?」
「ありがとう。きみは猫がしゃべることにおどろかないのだね」
「びっくりしたよ? 牛乳もあるよ? 飲む?」
「その気持ちだけで胸がいっぱいだ。きみが食べてくれるとわたしはうれしい」
 そんな風にギンが笑ってくれる。遠慮されているのはわかったけれど、無理して食べさせるわけにもいかないのと、そのまま持って帰るとお母さんに怒られるから自分で食べることにする。買い食いは悪いことだけれど、給食の残りだから大丈夫だと思う。
「正義のみかたにならないかい?」
 そしてギンはまた言った。保険のお姉さんみたいにしつこい子猫だと思った。
「ぼくは無理だよ。そういうのは」
「どうして?」
 ギンが首をかしげてくる。ぼくを見るギンの目は本当にきらきらしていて困る。可愛くて手放せない可愛さがギンにはあった。家で猫が飼えたらいいのに。お母さんが猫アレルギーなので、きっとギンは飼えないだろう。
「ぼくはね、このあと家に帰って、塾に行かないといけないんだ」
「塾とはなんだい? おいしいところかい?」
「食べ物じゃないよ。勉強をするところだよ」
 子猫のギンは不思議そうな顔をした。猫の表情がわかるなんてすごいなぼくは、と思うけれど、ギンはしゃべられるくらいに人に慣れているのだろうから、ぼくが特別じゃなくてギンが特別なんだろうな。ギンがぼくの手に顔を寄せてくるのが可愛い。
「聞いたことがあるね。このランドセルというものを背負っていくところだろう?」
「それは学校だよ。塾はね、学校じゃないところなんだけど、勉強をするところだよ」
「ふぅん?」
 ぼくの説明にギンが納得できた、とは思えないくらいに首をかしげていた。あ、わかってない。そんな顔をしたギンが肉球で顔を拭いた。小さな舌が可愛い。
「つまりきみは勉強が好きなのかい? 勉強をしないといけないから、正義のみかたになれないのかい?」
「そういうわけじゃないんだけど、忙しいんだ」
「でもきみは子供じゃないのかい?」
「子供だよ? でも最近の子供は忙しいんだ」
 最近、と言ってはみたものの、昔の子供のことなんてよく知らない。お母さんが子供の頃は毎日外を走り回っていたそうだけれど、ぼくはお父さんに言われて塾に行く日々だ。学校の勉強だけではいい中学、いい高校に行けないそうだ。
 お母さんは好きにしなさいって言ってくれるけれど、ぼくはお父さんが怖くて、でもお父さんみたいになりたいから頑張ることにしている。
「ごめんね、ギン」
「そうか、きみは大変なんだね。じゃあ、忙しいから正義のみかたはできないんだね?」
「うん。ごめんね」
 ぼくは二回、頭を下げた。せっかく感じたドキドキが小さくなっていく。このまま胸のドキドキが消えようとしている。後悔するのかな。もしここですると言っていたらどうなったんだろう。ああ、ちょっとだけやりたかったな。そう思った。
 そしてギンは、ぼくのひざから降りて言った。
「いいよ、この町は滅んでしまうけどしょうがない」
「待って。それちょっと待って」
 ドキドキがいきなりゾクゾクになった。ギンは歩こうとして立ち止まる。背中をぼくに向けたまま、「どうしたんだい?」と聞いてきた。わざとらしい。そう思った。
「大丈夫だよ。滅ぶのはこの町だけだからね」
「それはすごくダメだと思うんだ。大変だと思うんだ」
 ぼくはベンチから立ち上がって周りを見た。何の代わり映えもない風景。狭い砂場が端っこにある公園のブランコはさびていて、タイヤの跳び箱は三つしかない。見える場所だけじゃない。学校も、道路も、信号も、木も、家も川も。隣のおじさんもおばさんも、ここを歩いている人もみんな、どうにかなってしまうんだろうか。
 この町が滅ぶってなんだろう。生まれた時からこの町に住んでいるぼくには、ここがなくなるなんて想像もつかない。
「町が滅ぶとどうなるの? 町が消えちゃうの?」
「いきなり消えたりはしないよ。ただゆっくりと不幸になるのさ」
「不幸、って?」
「そうだね。わかりやすく言うとこの町の人は減っていく。みんな寂しくなっていく。この町のみんなの元気が減っていって、大人も子供も、猫も犬も、悲しい気持ちでいっぱいになる。でもそれは仕方がないことだよ。本来はそうなるものだから」
 ギンの声は冷たかった。ぼくを正義のみかたに誘う時よりも、冷たい大人みたいな声だった。ぼくの背中に汗が落ちる。冷たい気持ちに、ぼくもなる。
「ダメだ」
「何がダメなんだい? ああ、ともきには危険はないよ」
「どうして?」
「魔法猫のわたしがともきを守るからね。きみに不幸はこない」
 ふいにそんなことを言われて、安心するぼくが居た。ほっとするぼくが居た。でも考えてみたら、ぼくに危険がなかったとしても友達はどうだろう。お母さんは? お父さんはどうなるのだろう。隣の町は大丈夫だとしたら、引っ越せばいいのだろうか。
 でも、そんな簡単な話じゃきっとない。
「ともきは大丈夫さ。カラスからわたしを助けてくれたのだから、その恩は返すよ」
「恩を返されるために助けたわけじゃない」
 ギンの気持ちに、ぼくは首を振った。ギンがおどろいた顔をして、ぼくに寄ってくる。そもそもカラスに負ける猫に守られるって何か変だ。ぼくの足にすり寄るギンは、それ以上のことをしゃべらない。
「ぼくは、助けたいから助けたんだ」
「ならわたしもそうさ」
 ギンは笑い、ぼくのクツの上に手を置いた。ぼくはそんなギンを抱き上げる。持ち上がったギンがぼくの胸に顔をうずめた。顔を近づけるとお日様の匂いがした。
「どうすればいいの?」
 僕の問いにギンの体がぴくんと震えた。腕の中のギンは温かくて柔らかかった。お腹が動いていた。それが失われるのはつらいよ。だから僕は息をのんだ。ギンが僕を見上げて口を開く。
「どういう意味だい?」
「どうすればぼくは、正義のみかたになれるの?」
「……なってくれるのかい?」
 ギンのゆっくりとした問いかけに、僕はゆっくりとうなずいた。
 風が吹いていた。ぼくのこの町を滅ぼされるわけにはいかないと思った。この前国語で覚えた、乗りかかった船というやつだ。そう思いながら、胸のドキドキが顔に出ないよう注意した。
 しょうがないからやることにする。ぼくは心で自分にそう言いわけをする。
 腕の中にあるギンにはきっと、このドキドキは伝わっているに違いないけれど。
「ぼくでいいのなら、やるよ」
 それでもぼくは、わくわくしていないフリをした。


「ではまず、いいことをしてくれないか」
「はい」
 公園の真ん中でそう言ったギンに、ぼくはかしこまってうなずいた。
 ひざを折ってうずくまると、ギンの小さな頭をなでてみた。ギンが喜びのどを鳴らして、けれど「それはちょっと、いいことだけど違うかな」と言われて困ってしまった。
 いいことってじゃあ何だろう。
「正義のみかたの第一ステップだよ。誰かにいいことをするんだ」
 と言われたけれど何も思い浮かばない。ギンの頭をなでながらしばらく悩む。ランドセルを見ていると、それを買ってくれた人の顔が思い浮かんだ。誰かに?
「おじいちゃんの肩をたたくとか?」
「いいね。でもおじいちゃんは家にいるのかい?」
 ギンに聞かれて、僕は遠くを指さした。方向的にはたぶんあっちの方だ。ギンがぼくの指先の方を見た。僕は言った。
「鳥取に」
「遠いね」
 ギンに笑われた気がした。ここから車で五時間近くかかるから、それは遠いよねとぼくも思う。腕組み考えて、公園のごみ箱に気付いた。その下に缶が落ちているのはいつものことだ。
「ごみを拾うでもいいの?」
「そうだね。お手軽だけれどいいことだ」
 ギンを連れてごみの元に向かう。ひしゃげた缶を拾ってくずかごに入れた。からんと音がして、ぼくは足元のギンに聞く。
「捨てたよ」
「うん。偉いね」
 そしてまたうずくまって、ギンと見つめ合う。ランドセルをつかんで、ギンの言葉を待つ。けれどギンは何も言わない。あくびするギンは、ぼくを見たまま動かなかった。
「で?」
「うん。偉いよ」
 ギンの目はきれいだった。遠くでカラスが鳴いている。冷たい風がぼくの服をばさばさと揺らした。ギンが地面に寝そべって、ふわあと大きくあくびした。その笑顔はひまそうだった。
「ギン、ぼくは今すごく寂しいんだ。何でだろうね」
「あはは。きっと一つ、現実を知って大人になったんだね」
 ギンの素っ気ない返事に、ぼくは早くも正義のみかたになろうとしたことを後悔した。地面に寝そべるギンを置いて、さて塾に行こうかなと思ったところでズボンを引かれた。
 見ればギンがぼくの足をかみ、ズボンを引いていた。
「すまない、ちょっとした意地悪だ」
 口を放したギンが、小さな舌がぺろっと、お茶目に飛び出ていたのが悲しいけれどめちゃくちゃ可愛かった。
「さてともき、ズボンの中のポケットを調べてみてくれ。ハンカチが一枚、入っているはずだ」
「えっと……あった」
 ギンに言われてポケットに手を入れると、何かが入っていた。
「ってこれ、ぼくのじゃない」
 抜いてみると、それは真っ白いハンカチだった。手触りのいい、さらさらとしたハンカチだった。
「いいや、君のさ。名前が書いてあるだろう?」
 とギンに言われたけれど読めなかった。英語で書いてあるらしいそれを、ぼくは広げて空にかざしてみる。どこからどうみても、ただのハンカチだ。ただ右の下にししゅうがしてあって、ティー何とかと英語で字が書かれている。
「それは魔法の雑巾というんだ」
「ハンカチじゃないの?」
 いきなりウソくさくなった。広げたハンカチをたたみ直しながら、足元のギンにそれを見せる。ギンは首を振り、「それはきみが持つべきものだ」と言われた。
「魔法の雑巾というハンカチだよ」
「ややこしいね」
「ややこしいのさ」
 ぼくが手を伸ばすと、ギンは腕にしがみつき、そのまま肩に登ってくる。重そうと思ったけれど、ギンの体は綿あめみたいに軽かった。どうしてだろうと聞くと、「魔法猫だからね」と教えてくれた。よくわからないけれど、そういうものらしい。
 そしてギンはぼくに擦り寄り、「さて本題だ」と言った。
「そのハンカチで、この町のいろんなところにあるらくがきを消して欲しい。それがともきの、正義のみかたの仕事だ」
「待って、らくがきを消すって?」
「そのままの意味さ」
 子猫はいきなりそんなことを言った。手にしたハンカチをぎゅうとにぎる。耳の横にいるギンがぼくの顔をのぞいてくる。
「どうした、ともき」
「ハンカチでらくがきを拭くだけ?」
「そうだよ?」
 ギンはさらりと、そう言った。遠くで普通の猫が、普通ににゃあと鳴いていた。すずめのちゅんちゅん声が聞こえてきて、遠くで犬が鳴いていた。
「ぼくは魔法を使えたりしないの? 剣を使ったりしない?」
「うん? ともきはそんなものが使えるのかい? すごいね。でも剣は危ないと思うよ?」
 ギンの問いはすごく当たり前だった。
 正義のみかた。すごいと思った。かっこいいと思った。でも実際は、剣を振るわけでもなければ魔法を使うわけでもなくて、空も飛ばないし危なくもない。
 そうじをするだけ、だって?
 ぼくはわくわくしていた心が一気に冷めていくのを感じた。ああそうなんだ。そういうものなんだねと思った。ギンの頭をなでながら、ぼくは冷静になった。
「子供は仕事をしちゃいけないってお母さんが言ってたよ」
「大丈夫だよ、ともき。この仕事をしてもともきにお金は支払われない。大人の言う仕事とは違うのさ」
「とりあえず塾に行ってから考えるよ。遅くなっちゃったな」
「残念だがともき。もうそんな時間はない」
 ぼくの心を読んででもいるのか、ギンが高らかに言った。銀色の猫は目も毛並もきれいで、肉球がすごく柔らかかった。そのくせ軽くて、温かくて。
「一つ目のらくがきが暴れ出そうとしているよ」
 語られた言葉の重さに、子供のぼくの心がきしむ。ぎしぎしと、責任という名前の重さが胸の奥に走った。同時に感じた、わくわくの心。らくがきなのに暴れるの?
 それはどういう意味なんだろう。
「町を滅ぼさせる気かい? ともき」
 ギンの言葉にぼくは歯を食いしばる。背中のランドセルを背負い直して、肩の上のギンを手でつかむ。ギンはおとなしくぼくの腕の中に入る。
 ギンがにゃあとうそっぽく鳴いた。
「行こう、ともき。きみの力が必要なんだ。あっちだ!」
「調子いいんだからっ!」
 ギンに急かされて、ぼくは公園を飛び出した。背中でランドセルが暴れる。運動は苦手だとか言ってられない。町の危機だ。らくがきを消すだけらしいけど。

 滅ぼさせてたまるか。
 だってここはぼくの町だ。ぼくが守るさ、何が悪い。
 こうしてぼくの、正義のみかたの仕事は始まった。

 ○○○

「ともき! 急げ! らくがきが暴れだす前に!」
 夕暮れ時の午後六時。
『加速中』と書かれた運動ぐつが地面をける。アスファルトの地面を叩くように駆けながら、ぼくは体を低くした。足のこうに浮いた『加速中』の文字が点滅して、肩の上に前足を引っかけて捕まっていたギンの目がきらんと光る。
 文字が点滅して『飛ぶ』に変わる。足の下で風がぼんと起こり、ぼくは五メートル近くあるコンクリートの壁を飛び越えた。風が服をなびかせる。空の上でくつの文字が『着地』に変わり、駅の壁を越えたぼくは、線路の横の端っこに降り立った。
 ぽん。ギンの手にあった黒い布が粉になって消えた。クツにあった文字は消えて、普通の運動ぐつになっていた。周囲に人の姿は居ない。よし、予定通り。
「前から思っていたけど、お金払わずに入ったらダメだと思うんだけど!」
「しょうがないだろう、きみにお金はないわけだし!」
 ぼくが正義のみかたになって二週間が経った。家から駅までは自転車を使い、塾用のカバンを背負ったぼくはそのまま、駅の中に飛んだのだ。
 空の飛び方も少しは慣れた。といってもジャンプだけれど。
 そんならくがき消しの正義のみかたは、何度目かも覚えていない。ただ駅の中での消し作業はこれで五回目で、着地する場所も選べるよゆうは出てきた。肩の上の、ギンの目がさらに怪しく光る。
 時間がない。気持ちがあせる。
「どっち!」
「右だ!」
 ギンに言われるまま、ぼくは人の居ない通路から階段を駆け上がる。人でいっぱいな駅のホームに出て、左右を見る。大人が、ぼくと同じくらいの子がこっちを見ているけれど気にしない。気にするひまもない。ぼくはホームの中を走る。
 ギンに返事をしながら、ぼくは人と人との間を抜けていく。
「思ったより時間はないよ。ともき、急ぐんだ」
「わかってるよっ、でもテストだったんだからしょうがないだろっ!」
 ギンの不満声に、右手でケイタイを構えながら、ぼくは答えて必死に走る。のれんが揺れるうどん屋の前で止まる。みっつの分かれ道で首を振る。
「どっち!」
「左だ」
 と会話しながらホームを走る。大きな階段の前、肩の上のギンが首を下げた。「下かな」とあいまいに鳴かれて、ぼくはうなずいて走り出す。
「ケイタイを持つ手は、痛くないかい?」
「しょうがないだろっ」
 ケイタイを手に、ぼくは必死に言い放つ。
 この二週間で外でのギンとの会話にも慣れた。ぼくは今、ギンという友達と電話で話をしている。そういう風にまわりには見せている。でないとぼくは、外では猫に話しかける寂しい子に見えるのだ。魔法猫を従え走る、正義のみかたも大変なのだ。
「ハンカチは何枚残っている?」
「きれいなのが五枚っ! 使い終えたのが……あ、ちょっと待って!」
 ふいに見えたその落下に、ぼくは慌てて立ち止まる。上がった息を整えながら、足元にしゃがんでそれを拾う。ギンが肩から降りて、ぼくを見上げていた。それも最初は怖かった。けれどもう、今は慣れたと自分では思う。
 ぼくは少し前を歩いていた、その人に寄った。
「お姉さんっ、キーホルダーが落ちましたよ!」
「あっ、ありがとう」
 ぼくにおどろいたお姉さんがお礼を言ってくれた。ぼくはポケットに手を入れて、ハンカチを数える。よし、増えた。
「六枚になったよ。これで足りるかなっ!」
「ああ。さあ、急ぐんだ!」
 ギンが前を走り、ぼくはその小さな背中を必死に追った。広い駅のホームにたどり着いて、ぼくは周囲を見渡した。確かに何か、嫌な感じがした。
「らくがきはどこ!?」
「この近くにあるはずだ! 探せっ、ともき!」
 ちょうどホームに電車がやってきて、たくさんの人が下りてくる。時間がないよっ。みんながぼくを見ているけれど、気にしているひまなんてないんだ。
 この人たちが居なくなるなんて嫌だ。必死に走り、ホームにある壁のすべてをチェックする。天井、床と探して、走った壁際のところでUターンして気づく。反対からじゃないと見えない柱の壁に、それはあった。
「あった! ギンっ!」
「これはまた大きいな」
 何で書かれたかもわからないその絵は、黒くも赤くも青くも見えた。それ自体が光っていて、ぐにょぐにょと動いていた。気持ちが悪い文字と図のらくがきに、ぼくは駆け寄りハンカチを二枚つかむ。
 一枚は白の、使う前の方。もう一枚は黒くなった使用済み。
「ギン、人払いの魔法!」
「わかっている!」
 ギンがジャンプして、ぼくの手から黒いハンカチを受け取った。ギンの口にくわえられた黒いハンカチがホームの地面に置かれて、すぅと吸い込まれていく。
 空気の音が消えた。
 ギンが何かを唱えた。すぐに空気が動いて、ギンを中心にして丸い線が地面に描かれる。黒い光の線で円ができて、五本の線が星の絵になる。駅のホームに居た人たちが、ゆっくりと外へと移動していく。
 魔法の力でぼくとギンの周りから人気がなくなっていく。ぼくはその間に、手にしたハンカチを、揺れるらくがきに押し付けた。ぎゅうと、とにかく線の一本を消した。ギンの人払いの魔法が周りの人を動かしていく。
 ぼくは魔法を使えない。けれど魔法猫は、名前の通りに魔法を使うのだ。
「あと三十秒。何とか間に合ったね、ともき」
「うん、危なかったね」
 ぼくはうなずいて、塾用に買ってもらったケイタイをポケットに戻す。周りに人は居ないから、電話のまねはしなくていい。電源はそもそも切れていて、ぼくはこの電話を、実は一度も電話として使ったことがない。
 すべては正義のみかたになるための道具のひとつだ。

「このらくがきおっきいしね。四枚は使いそうだよ」
「残りは二枚か。帰りにごみでも拾っていかないとね」
 ぼくは使い終えたハンカチを左のポケットに入れて、右のポケットから新しいハンカチを取り出した。
 目の前のらくがきはぷるぷると震えていて、それを抑え、消すためにぼくが居る。目の前の悪のらくがきを、ぼくはこの五日間、見つけては消すという正義のみかたの仕事をし続けている。
「っ、うん、しょっと」
 つまさき立ちで手を伸ばす。今日のはそこそこ大きい。後ろを見ると人は誰も居なくて、そんな世界が怖かった。誰も居ないホームは怖い。誰も居なくなる町なんて見たくない。
 だからぼくはここに居る。
 上まで手が届かないので、「ギン、足元高くして」と頼み、使い終えたハンカチをさしだした。ギンがそれをくわえて受け取り、可愛い前足でつかんだ。そのまま地面に置き、また何か呪文を唱えた。するとふわっとぼくの体が浮いた。
 足元に出てきた黒いハンカチが、ぼくを浮かしてくれていた。
「ありがとう」
「いいえこちらこそ」
 らくがきを消すことで、ぼくの持つハンカチに力が移されるらしい。それはギンの魔法の元になるらしいのだ。ぼくは魔法を使えない分、ギンが魔法で助けてくれる。
 これが案外、大変だけれど楽しかった。
 今日のらくがきは本当に最低だった。全部はわからなかったけれど、ひどい言葉が書かれていた。昨日はすごく怖いらくがきだったし、おとといは可愛いらくがきだった。
 それらの全てが悪のらくがきで、形も色もいっぱいあって、ぼくは魔法の雑巾というハンカチでそれを拭く仕事を今日もする。
「ねえ、ギン?」
「なんだい?」
 手を伸ばして汚れを落としながら、ぼくはふと思ったことを口にする。
「らくがきが暴れ出すとどうなるの? これひとつで町は滅びるの?」
「一つだとどうだろうね。ただそうだなぁ。それひとつでも、暴れれば触れた人をケガさせたり、病気にしたりするよ」
 ギンの言葉はいつもあいまいで、でもすごく怖くなる。魔法の力を知っているぼくからすれば、何が起こるか想像もつかない。
「このらくがきは誰が書いているの?」
「うん。いい疑問だね」
 ギンがうなずき、ぼくの足元で転がった。魔法陣、と呼ばれるギンの魔法はきれいだった。ぼくはそんなギンを見ながら、とにかく手を動かした。
 駅のホームにはまだ人は来ない。居てもこちらを見ようともしない。
 目の前のらくがきはほぼ消えている。ぼくは背伸びを終えて、残ったハンカチで足元の魔法の台と、人払いの魔法を消し始める。こっちはギンの力なのですぐ消えた。
 なくなった魔法と共に、新しい黒のハンカチが出来上がる。ぼくはポケットに使い終えたハンカチをしまって、ケイタイを取り出した。
 ギンが大きくあくびしながら立ち上がる。
「ギンもつまり知らないんだね?」
「さて、帰ろうか」
 ギンのぶっきらぼうな返事に、ぼくは肩をすくめた。正義のみかたになったぼくは少し大人になったらしい。駅のホームにゆっくりと人が増えていく。
 何てこともない毎日が、変わらずここに広がっていた。
「ギンって実は野良猫だったりする?」
「にゃあ?」
 ギンの扱いに、ちょっと慣れてきたぼくがここに居る。


「ただいまー」
 家に帰ると夜の九時を過ぎていた。
 歩きすぎて足が痛かった。
 そんな、らくがき消しをし始めて二週間はあっという間に過ぎていった。
 本日のらくがきを消し終えたぼくは、駅のホームから抜け出すためにまたジャンプしたわけで、駅のような場所に入るにはいろいろと魔法が必要になるので大変だ。体の疲れはギンの魔法の使い過ぎもあるかもしれない。
 そんな帰宅。家に帰ると、いつも暗いはずの家が明るかった。集合住宅の三階の端っこがぼくの家で、玄関に入って足元を見ると、お母さんのハイヒールがあった。
 ちょっと、うれしかった。
「お母さん、ただいまー。今日は早かったんだねー」
 仕事を終えてホームを出たぼくは、そのまま道路に落ちているごみを拾う正義のみかたのもうひとつのお仕事をこなしていた。塾の終わる時間からするとそのまま家に帰るには早くて、塾に行くには遅かったからだ。
 ハンカチの量も少なかったからちょうど良かったけれど、拾い過ぎてちょっと疲れた。
「お帰り、ともき」
 家に帰る頃にはギンはまたいつものように居なくなっていて、ぼくはまた一人だった。そんな日、いつも仕事で遅いお母さんが家に居た。
 今日はレンジでチンのご飯じゃないんだ。それはもううれしかった。
「お母さん、お仕事お疲れ様っ」
「手を洗ってきなさい、ご飯にするから」
「はーい」
 お母さんは台所に居た。お父さんと同じ会社で働くお母さんは、いつも優しくて、でもちょっと怖い。
 リビングを見るとぼくが帰ってくる時間にあわせてご飯の準備をしてくれていた。お父さんはまだ帰ってきていないらしくて、お母さんだけだった。
「お母さん、お皿並べるの手伝うね」
「ありがとう」
 流しで手を洗って、料理の乗ったお皿を並べる。お母さんにお礼を言われて、ポケットの中に何かが押し込まれるのを感じた。お母さんでもいいんだな、なんて思った。
「ともき、かばん置いてくれば?」
「あ、そうだった」
 料理を並べながら、お母さんに言われて気付いた。
「塾、無理しなくていいからね?」
「えっ? 無理なんてしてないよ?」
 塾のかばんを手に持って、お母さんにそう答えた。リビングを出て、自分の部屋に行こうとした。

 ふと過ぎたのは罪悪感。

 お母さんにぼくは、うそをついている。そう思うと気が重くなった。悪くないことをしているのに、悪いことをしている自分が居る。
「ともき、今日ね、塾の先生から電話があったの」
 ぼくの背中で、そんなお母さんの声がした。優しい優しい声だった。ぼくの呼吸が止まるくらいに優しい声だった。ぼくは返事ができなかった。

「何で今日、塾をお休みしたの? ううん、たまにお休みしているんでしょう? ケイタイが欲しいってお父さんに頼んだり」

 包丁が野菜を切る音がした。お母さんの声は優しいままだった。
 ぼくは黙って、お母さんの顔を見た。
 お母さんは笑っていた。少し困った風だった。ちょっと体調が。ダメだそれじゃ。猫と遊んでたんだ。それならぎりぎりセーフだろうか。お父さんにも、ケイタイで友達とメールがしたい、なんてうそを付いた。今度はお母さんにも、うそをつくのか。
「お母さん、ぼくは……」
 ぼくはうそをつこうとして、でもお母さんのきれいな目を前にして、つけなかった。
 ぼくを心配してくれて、忙しい仕事を早く終えて帰ってきてくれたんだろうお母さんに、ぼくは頭を下げた。
「ごめん、塾を勝手に休みました」
 ぼくは謝った。お母さんに怒られるだろうと、わかっていても謝った。だってぼくは、正義のみかたなのだから。
 正義のみかたは、お母さんにうそをついちゃいけないと思う。
 たぶん。
「ごめんなさい、ぼくは」
「お母さんに怒られるようなことを、ともきはしているの?」
 かばんを抱きかかえて言ったぼくに、お母さんはそう聞いてきた。とんかつの匂いがする。お母さんの笑顔は変わらなかった。
 優しい声のままで、言ってくれたお母さんに、ぼくは首を振った。
「していないよ。悪いことなんて、何もしてない」
 この二週間、ずっと考えていたことだった。お母さんに、お父さんに塾へ行っているとうそをついて、正義のみかたをし続けて、それがいいことだとしても、ぼくは救われない。
 大人に怒られる。
「ぼくは、しなきゃいけないことがあるんだ」
 台所に居たお母さんがぼくの前にやってくる。怒られるんだ。そう思って目をつむる。近づいてきたお母さんは、そんなぼくの頭をなでてくれた。
「お母さん?」
「そう。じゃあ約束しようか?」
 怒られると思っていたのに、お母さんはうれしそうだった。ぼくの頭をなでながら、少し照れたように言った。
「塾をお休みする時はお母さんに連絡して? 先生も心配してくれているんだから、黙って休んじゃだめよ?」
「……うん」
 ぼくは顔を下にして返事した。
 お母さんの手は温かくて、つい、泣きそうになった。

 ○○○

 ともきがリビングを出てしばらくして、わたしは台所に戻って、棚をあさる。ここにあったかな。どこだったかな。
 そう思いながら、猫のマークのついたお皿を一枚取り出した。その銀色の猫のマークがついたお皿を眺めながら、
「ねえ、リリィ。あなたでしょう?」
 とわたしは聞いた。返事はなかった。わたしはもう一度、名前を呼んだ。
「返事をしないとしっぽの毛をむしるわよ?」
「にゃあ」
 足元で声がして、わたしはそのひさびさの鳴き声にほほがゆるんだ。
 ああ、やっぱり。足元は見ないでおいた。見たら触れたくなる。きっとわたしは、ひさびさの再会に泣いてしまうに違いない。
 大人だからと、わたしはそれをガマンした。
「わたしにはもう、あなたの声は聞こえないのかしらね?」
「にゃぁ」
 言葉は聞こえなかった。気持ちはわからなかった。ただ足元に何かがすり寄っている。なんていっているのかしらね。
 そう思いながら、わたしはその懐かしいお皿を目の前に置いた。
 二週間前からのともきの変わりようと、何より今日の塾の休みの連絡が、ああそうなのかとわたしには思えた。
 だからきっとリリィも傍に居ると、思って魚は買ってある。包丁を取り出して魚を切りながら、足元に感じるひさびさの温もりに、わたしはご飯の用意をし始めた。
 そこでふと、
「キャットフードの方がよかったかしらね」
「あれはまずいから好きではないな」
 と、意地悪を言ったわたしに返ってきた言葉は、ひどく普通の言葉だった。包丁を持っていたわたしの手が震えてしまったほどだった。
「あいかわらずのふてぶてしさね、リリィ。お風呂に入れるわよ?」
「あれはやめてくれるかな」
 本当に嫌そうな声でリリィが言った。わたしは落ち着いて、包丁を動かし出す。足元のリリィがわたしの足の上に居る。ああ、見たい。必死にそれをガマンした。
「いまのわたしはギンと呼ばれているよ、ありさ」
 わたしの足の上で、リリィはそう教えてくれた。いい名前ねと、言おうとして止める。
 自分の子供のネーミングセンスをほめるのは恥ずかしい。そして何より、わたしの知る子猫の名前は、やっぱりリリィなのだから。
「ともきは頑張っているのね?」
「ああ。さすがはきみの子だ。きれいな心をしている」
 リリィにほめられてうれしくなった。同時にわたしが経験した、らくがき消しの大変さを思い出すとあまりよろこべなかった。ともきはきっと大変になるだろう。
「あまり無茶はさせないでね」
「それは約束できないな。だってきみの子なんだから」
 リリィは笑っている。そんな気がした。ふと足の上から重みがなくなって、小さな足音が遠くでした。
「では、わたしは」
「ご飯くらい食べていきなさい、リリィ」
 わたしの震える声に、リリィの足音が止まる。りんと鈴の音色が鳴った気がした。今はもうあるはずのない彼女の鈴の音に、わたしはそっと天井を見上げた。
 心がこぼれそうだった。
 魔法を使ったともきはきっと、疲れ果てて寝ているだろう。今日はゆっくりとお休みなさいな。そう思いながら、わたしはちらりとガラスに映るリリィを見た。
 銀色の子猫はあいもかわらずふてぶてしい笑顔を見せていた。
「いいのかい?」
「どうせ野良なんでしょう?」
 わたしの問いに、懐かしい魔法猫の彼女はふふんと、えらそうな笑みを浮かばせた。

終わり
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感想 1

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みんなの感想(1件)

紗綾
2018.08.25 紗綾

ファンタジー作品ってあまり好んでは読まないんですが、ほっこりとして爽やかな読後感でした。
ヒーロー物だとバトルなのかと想像しがちですが、そこはさすが古葉さんだなぁと思いました。
現代ファンタジーでありながら、ヒューマンドラマでもあるので、大人が楽しめるファンタジー作品ですよね!
まさかの事実もこれからの展開にどう関わってくるのか興味深いです。
続きも楽しみにしてます(* ´ ▽ ` *)

解除

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