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シンゴニウム・18
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「前言撤回ね。私は葛城君に興味を持ちました。っていうか好きよ。唐突で悪いけど私と付き合って。お願い」
相原が俺へと詰め寄り、いきなり、逆告白来ました。待て、どうなっている、何がどうしてこうなった?
「へ? オッケーって事?」
「ちょっと微妙。君の告白は一度断ったからね。あの時点では付き合う気なかったもの。そして私が君を好きになった。君を知って」
相原が笑い、今まで見た事もない楽しげな、嬉しげな笑顔が見れた。間近ところか本当に目の前で咲いた笑顔に、俺の心臓が破裂しそうになる。うわうわうわ、相原が俺の前で笑っているとか!? 奇跡ですか!?
「付き合ってくれるのか?」
「うーん、くれるっていうか、私からお願いしてるんだけど。付き合って下さい」
「えええぇっ? ちょい、相原どうしたの?」
「おいおい、なんか変な流れになってない?」
なぜか俺が告白され、周囲の面々が驚きの声を上げている。俺はどう返していいかわからず固まり、狼狽えて、静かにけれどきっちりと、「はい」とだけ言った。
「やった。ありがとう。嬉しい」
「いや、俺も嬉しい、です。ってとりあえず期限ありだよな、えっと」
言ったら「あ?」と真顔で嫌な顔された。うわ、こんな顔もするんだ、というくらいに怖い顔された。膝震えるくらい怖い。蛇に睨まれたみたい。俺は蛙か。
「ないよ、そんなもの。一ヶ月とかそういう期限なんてやめよう、ちゃんと付き合おう。ああでもいきなりエッチは止めておこうね。過程とはいえ」
語る相原は楽しそうだった。俺の太ももを未だに触る彼女が、まるでセクハラおやじのようにさわさわとこちらを撫でてくるのは何なのか。何かを確かめるような彼女に、俺は身動きが取れない。
「何で?」
「そりゃいきなりはね。って今触れているのはじゃあ何でだ、となる? うーん、何かこう触りたい。本当に君ここに居るよね? みたいな。触れて君をもっと知りたい、とか。変だねえ?」
「そうじゃなくて、何で付き合ってくれる気になったんだ? 俺の事知らないだろ」
告白しておいて何だが、相原が俺に執着し過ぎな気がした。俺の問いは当然だろう。しかし相原こそ不思議そうな顔で「何でと言われても」と困った顔をした。
「君、もう自分曝け出してたよ?」
さらっと言われたが意味が分からない。
俺がいつ、どう自分を曝け出していたというのか。少なくとも、彼女はそれを見た上で付き合う気になったという事らしい。謎過ぎる。
「私は自分のこの突飛な行動力を持て余している。最近特に思うんだ。いろいろ興味があると飛びつくし、気がついたら何かしたくてしょうがなくなる。それを自由奔放という人もいるけれど、このところ不安だった。すぐ使うから貯金もしないし、遊び呆けているし。足元がおぼつかないって感じでふらふらしてさ」
ふらふら、と手で表現する彼女は、やや酒に酔っているような印象だった。酔いが冷めたら「何の事?」となりそうで怖い。いや、彼女は酒に強いはずなのでそんな事はない、と思うが。
「私はこれでいいんだろうかって」
「いいんじゃないの?」
「そう言えるのはまだ早い。君はこれから、それを体験するんだから。意見を言うのはそれからにして」
「うん。わかった」
俺の頷きに、相原こそが頷いた。互いに頷き合い、相原が俺ほ膝から手を放した。それからそっと、俺の手を取った。今度は俺も握る側。相原の手は、温かかった。女の子の手に触れるのは初めではないけれど、柔らかいな。
「落着きがなくて、これでいいのかなって思う。一人ぼっちで電車に揺られて帰る時に、寂し過ぎて泣きそうになる時がある。車を運転しながら、ちょっと眠かった時にね、このままハンドルを切りそこなって谷底に落ちたら誰か悲しんでくれるのかな、とか暗い事を考えたりもするよ。切ってみようかな、って」
「それは危ない、だろ」
ぞくりと刃物を喉元に当てられたような恐怖感が背に伝う。相原は真顔だ。彼女の瞳に冗談さはなかった。本当に、そんな事があったのか。
「素敵なものを見て、いろんなものに出会って、でもこの喜びを誰かと分かち合いたいと思っても、独りが大半だった。全部終わって、話は聞いて貰える。でも一緒にやろうって、そう思ってくれる人は親友の彩愛以外に居なかった。あの子はもう結婚しちゃって、大学辞めたけど、幸せだって連絡くれる。でも他の子は何だろう、凄いね、大変だったね、よかったねで終わり。みんなの返事はこんなものばかり。みんな大事な友達だけど、聞いて貰えるのは嬉しいけれどね」
けどねぇ、と吐き捨てる彼女の瞳はどこか遠くを見ているようだった。俺は黙って彼女が語るのを待つ。バイトの時間は大丈夫だろうか。そんな心配をよそに、彼女の語りは緩やかだった。
「私の傍で一緒に世界を見たい、なんて言ってくれたのは葛城君が初めてだよ」
「他の男は?」
「付き合おうが先よ。ああ、君も告白してくれたけれど、それは工程だものね。それでためしに付き合ってみてもさ、私がちょっとしたい事してたら、お前はふらふらし過ぎ、だって怒るの。否定しないけどね」
相原が舌を出し、悪ふざけの過ぎた子供のような様子で笑う。そんな仕草が可愛くて、胸がときめく俺がここに居ます。
「二人なら楽しそうね。出来るといいな」
嬉しげに語られる反面、期待を裏切りそうで不安にもなる。
「付き合ってても、やっぱり一人旅とかもするのか?」
「ふとしたくなったらするよ。私は割と独りでいろいろする。友達と遊ぶのもあるけれど、付き合い切れないって離れていく子も多い。だから、君は私に付いて来てよ。一人旅しそうになったら隣に来て、一緒に行こう? 一緒に居る為に付き合うっていうなら、平気だよね?」
「あ、もちろん」
相原の手が俺に触れている。俺の心は舞い上がるどころか恐怖で動けない。
「お願い、私を一人にしないで」
相原の言葉が俺を縛る。大きく頷き、相原に笑顔を咲かせておきながら、俺は改めて自分のこれからを考える。告白オッケーだった後の事を考えていなかった。俺はこれから、相原と同じ世界を見るのだ。大丈夫だろうか。
「結構、寂しがり屋?」
「私は基本、独りが嫌い。何かをしようとしたら、独りになるだけ」
「俺なんかでいいのか?」
「そっちこそ、私に付き合える自信ある? 君が考えている以上に私は君に惚れたからね。私のこの行動に付き合おう、その為に付き合いたいとか言っちゃって、そこまで覚悟して傍に居ようとしてくれる子、惚れないわけがないじゃない。軽はずみな事言ったなと後悔しちゃうよ?」
相原が肩を揺らして笑っている。物凄く嬉しそうだった。その表情を俺がさせているのだから、頬をつねって今が現実なのかを確認したい。夢だろうか。
「それでも一緒に来てね。葛城」
俺の心に、重く熱い気持ちが流れ込んできた。
《続く》
相原が俺へと詰め寄り、いきなり、逆告白来ました。待て、どうなっている、何がどうしてこうなった?
「へ? オッケーって事?」
「ちょっと微妙。君の告白は一度断ったからね。あの時点では付き合う気なかったもの。そして私が君を好きになった。君を知って」
相原が笑い、今まで見た事もない楽しげな、嬉しげな笑顔が見れた。間近ところか本当に目の前で咲いた笑顔に、俺の心臓が破裂しそうになる。うわうわうわ、相原が俺の前で笑っているとか!? 奇跡ですか!?
「付き合ってくれるのか?」
「うーん、くれるっていうか、私からお願いしてるんだけど。付き合って下さい」
「えええぇっ? ちょい、相原どうしたの?」
「おいおい、なんか変な流れになってない?」
なぜか俺が告白され、周囲の面々が驚きの声を上げている。俺はどう返していいかわからず固まり、狼狽えて、静かにけれどきっちりと、「はい」とだけ言った。
「やった。ありがとう。嬉しい」
「いや、俺も嬉しい、です。ってとりあえず期限ありだよな、えっと」
言ったら「あ?」と真顔で嫌な顔された。うわ、こんな顔もするんだ、というくらいに怖い顔された。膝震えるくらい怖い。蛇に睨まれたみたい。俺は蛙か。
「ないよ、そんなもの。一ヶ月とかそういう期限なんてやめよう、ちゃんと付き合おう。ああでもいきなりエッチは止めておこうね。過程とはいえ」
語る相原は楽しそうだった。俺の太ももを未だに触る彼女が、まるでセクハラおやじのようにさわさわとこちらを撫でてくるのは何なのか。何かを確かめるような彼女に、俺は身動きが取れない。
「何で?」
「そりゃいきなりはね。って今触れているのはじゃあ何でだ、となる? うーん、何かこう触りたい。本当に君ここに居るよね? みたいな。触れて君をもっと知りたい、とか。変だねえ?」
「そうじゃなくて、何で付き合ってくれる気になったんだ? 俺の事知らないだろ」
告白しておいて何だが、相原が俺に執着し過ぎな気がした。俺の問いは当然だろう。しかし相原こそ不思議そうな顔で「何でと言われても」と困った顔をした。
「君、もう自分曝け出してたよ?」
さらっと言われたが意味が分からない。
俺がいつ、どう自分を曝け出していたというのか。少なくとも、彼女はそれを見た上で付き合う気になったという事らしい。謎過ぎる。
「私は自分のこの突飛な行動力を持て余している。最近特に思うんだ。いろいろ興味があると飛びつくし、気がついたら何かしたくてしょうがなくなる。それを自由奔放という人もいるけれど、このところ不安だった。すぐ使うから貯金もしないし、遊び呆けているし。足元がおぼつかないって感じでふらふらしてさ」
ふらふら、と手で表現する彼女は、やや酒に酔っているような印象だった。酔いが冷めたら「何の事?」となりそうで怖い。いや、彼女は酒に強いはずなのでそんな事はない、と思うが。
「私はこれでいいんだろうかって」
「いいんじゃないの?」
「そう言えるのはまだ早い。君はこれから、それを体験するんだから。意見を言うのはそれからにして」
「うん。わかった」
俺の頷きに、相原こそが頷いた。互いに頷き合い、相原が俺ほ膝から手を放した。それからそっと、俺の手を取った。今度は俺も握る側。相原の手は、温かかった。女の子の手に触れるのは初めではないけれど、柔らかいな。
「落着きがなくて、これでいいのかなって思う。一人ぼっちで電車に揺られて帰る時に、寂し過ぎて泣きそうになる時がある。車を運転しながら、ちょっと眠かった時にね、このままハンドルを切りそこなって谷底に落ちたら誰か悲しんでくれるのかな、とか暗い事を考えたりもするよ。切ってみようかな、って」
「それは危ない、だろ」
ぞくりと刃物を喉元に当てられたような恐怖感が背に伝う。相原は真顔だ。彼女の瞳に冗談さはなかった。本当に、そんな事があったのか。
「素敵なものを見て、いろんなものに出会って、でもこの喜びを誰かと分かち合いたいと思っても、独りが大半だった。全部終わって、話は聞いて貰える。でも一緒にやろうって、そう思ってくれる人は親友の彩愛以外に居なかった。あの子はもう結婚しちゃって、大学辞めたけど、幸せだって連絡くれる。でも他の子は何だろう、凄いね、大変だったね、よかったねで終わり。みんなの返事はこんなものばかり。みんな大事な友達だけど、聞いて貰えるのは嬉しいけれどね」
けどねぇ、と吐き捨てる彼女の瞳はどこか遠くを見ているようだった。俺は黙って彼女が語るのを待つ。バイトの時間は大丈夫だろうか。そんな心配をよそに、彼女の語りは緩やかだった。
「私の傍で一緒に世界を見たい、なんて言ってくれたのは葛城君が初めてだよ」
「他の男は?」
「付き合おうが先よ。ああ、君も告白してくれたけれど、それは工程だものね。それでためしに付き合ってみてもさ、私がちょっとしたい事してたら、お前はふらふらし過ぎ、だって怒るの。否定しないけどね」
相原が舌を出し、悪ふざけの過ぎた子供のような様子で笑う。そんな仕草が可愛くて、胸がときめく俺がここに居ます。
「二人なら楽しそうね。出来るといいな」
嬉しげに語られる反面、期待を裏切りそうで不安にもなる。
「付き合ってても、やっぱり一人旅とかもするのか?」
「ふとしたくなったらするよ。私は割と独りでいろいろする。友達と遊ぶのもあるけれど、付き合い切れないって離れていく子も多い。だから、君は私に付いて来てよ。一人旅しそうになったら隣に来て、一緒に行こう? 一緒に居る為に付き合うっていうなら、平気だよね?」
「あ、もちろん」
相原の手が俺に触れている。俺の心は舞い上がるどころか恐怖で動けない。
「お願い、私を一人にしないで」
相原の言葉が俺を縛る。大きく頷き、相原に笑顔を咲かせておきながら、俺は改めて自分のこれからを考える。告白オッケーだった後の事を考えていなかった。俺はこれから、相原と同じ世界を見るのだ。大丈夫だろうか。
「結構、寂しがり屋?」
「私は基本、独りが嫌い。何かをしようとしたら、独りになるだけ」
「俺なんかでいいのか?」
「そっちこそ、私に付き合える自信ある? 君が考えている以上に私は君に惚れたからね。私のこの行動に付き合おう、その為に付き合いたいとか言っちゃって、そこまで覚悟して傍に居ようとしてくれる子、惚れないわけがないじゃない。軽はずみな事言ったなと後悔しちゃうよ?」
相原が肩を揺らして笑っている。物凄く嬉しそうだった。その表情を俺がさせているのだから、頬をつねって今が現実なのかを確認したい。夢だろうか。
「それでも一緒に来てね。葛城」
俺の心に、重く熱い気持ちが流れ込んできた。
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