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6.
私はレーヴィを居間に通した。ミロを寝室に連れて行き、大人の話をするから少し休んでいるようにと告げた。心配そうな表情でこちらをみていたが、ホットミルクを渡すと、ミロは嬉しそうに微笑んだ。
居間に戻ると、レーヴィが開口一番言った。
「まず、初めて会った日にいきなり関係を持ったことは謝る。けれどあの日、君はひどく酔っていて、抱きつかれてキスをされて、もう理性が持たなかったんだ。初めてだと知っていたら、その……もっと優しくした。」
「そうね……。あの日は、王宮をクビになってやけになって飲み過ぎていたから、よく覚えていないの。水に流すわ。」
それから、簡単に互いの自己紹介と、今何をやっているかを報告した。彼は上級冒険者としてソロ活動しているらしい。近隣の都市で、この村のスタンピードを聞きつけて、やってきたと言う。
「昨日は薬を飲んで、宿屋で静かにしていたんだが、仔狼の鳴き声がして、いても立っても居られなくて、森に助けに行ったんだ。」
「そうだったんですね。ありがとうございます。」
「それで、あの子から君の甘い匂いがして、俺の子だと確信した。」
「……。」
「君だって、俺が運命の番だと分かっていたはずだろう?では、どうして逃げたんだ?――まさかあの時、俺が指名手配されていたからか?」
「……そうですね。」
彼は当時『切り裂きウルフ』連続殺人事件の重要参考人として、王都中にポスターが貼られ、指名手配されていた。てっきりあの後、捕まったかと思っていた。まさかこんな堂々と姿を見せるとは。
「――端的に言えばあれは冤罪だ。」
「……!」
「真犯人は前に、冒険者としてパーティを組んでいた俺のダチだった。俺がいつも満月の夜に身を隠すのをいいことに、罪を擦り付けようとしたんだ。俺はそのダチを騎士団に引き渡そうと思って、証拠集めのために王都にいたんだ。」
「それで、その真犯人は捕まったのか?」
兄さんも興味津々と言った様子で、彼の話を聞いている。
「ああ、もちろんだ。――彼は母親が娼婦でね。家にほとんど帰ってこなかったそうだ。父親の狼獣人も、彼が幼い頃に女と出て行った。彼は、両親に歪んだ恨みを持っていた。」
「なるほど。それで娼婦を殺し、君に冤罪を擦り付けようとしたのか。」
「ソニヤと一晩を共にした直後、俺は王都の騎士団に拘束された。ただ、ちょうどその晩が満月でね。狼になった俺を見て、彼らは早々に、俺に犯行は不可能だと判断し釈放してくれた。真犯人の彼は父親とほとんど一緒に生活したことがなかったから、この特性について知らなかったようだね。釈放と同時に指名手配も解除されたけど、あれだけポスターが張られてしまうと、王都には居づらくて、それからまた冒険者として旅をしている。」
その話を聞いて、彼もこの六年、色々大変だったのだなと思った。
「ミロの父親が『連続殺人鬼』じゃないって、分かっただけでもよかったわ。」
「誤解が解けたのであれば、せっかく出会えた運命の番だ。俺は君に強く惹かれている。今すぐにでも結婚して欲しい。きちんとミロの父親になりたい。」
恍惚として彼は私を見つめるが、嗅覚が麻痺しているせいか、ほぼ初対面の人にそう懇願されてもどうにも気持ちが追い付かない。なんだか獣人の本能というものが酷く馬鹿馬鹿しく感じた。
「私たち、お互いを知らなすぎると思うの。結婚は一生のことだし。まずはちゃんとお互いを知ってからでも良いんじゃないかしら?風邪が治ったら番の認識阻害薬を飲むわ。それでも、あなたが私を好きで、私があなたを好きになったら、結婚を考えてもいいと思う。」
「……分かった。絶対にソニヤを振り向かせて見せる。」
彼の金色の瞳が、獲物を捕らえるようにきらりと光った。
居間に戻ると、レーヴィが開口一番言った。
「まず、初めて会った日にいきなり関係を持ったことは謝る。けれどあの日、君はひどく酔っていて、抱きつかれてキスをされて、もう理性が持たなかったんだ。初めてだと知っていたら、その……もっと優しくした。」
「そうね……。あの日は、王宮をクビになってやけになって飲み過ぎていたから、よく覚えていないの。水に流すわ。」
それから、簡単に互いの自己紹介と、今何をやっているかを報告した。彼は上級冒険者としてソロ活動しているらしい。近隣の都市で、この村のスタンピードを聞きつけて、やってきたと言う。
「昨日は薬を飲んで、宿屋で静かにしていたんだが、仔狼の鳴き声がして、いても立っても居られなくて、森に助けに行ったんだ。」
「そうだったんですね。ありがとうございます。」
「それで、あの子から君の甘い匂いがして、俺の子だと確信した。」
「……。」
「君だって、俺が運命の番だと分かっていたはずだろう?では、どうして逃げたんだ?――まさかあの時、俺が指名手配されていたからか?」
「……そうですね。」
彼は当時『切り裂きウルフ』連続殺人事件の重要参考人として、王都中にポスターが貼られ、指名手配されていた。てっきりあの後、捕まったかと思っていた。まさかこんな堂々と姿を見せるとは。
「――端的に言えばあれは冤罪だ。」
「……!」
「真犯人は前に、冒険者としてパーティを組んでいた俺のダチだった。俺がいつも満月の夜に身を隠すのをいいことに、罪を擦り付けようとしたんだ。俺はそのダチを騎士団に引き渡そうと思って、証拠集めのために王都にいたんだ。」
「それで、その真犯人は捕まったのか?」
兄さんも興味津々と言った様子で、彼の話を聞いている。
「ああ、もちろんだ。――彼は母親が娼婦でね。家にほとんど帰ってこなかったそうだ。父親の狼獣人も、彼が幼い頃に女と出て行った。彼は、両親に歪んだ恨みを持っていた。」
「なるほど。それで娼婦を殺し、君に冤罪を擦り付けようとしたのか。」
「ソニヤと一晩を共にした直後、俺は王都の騎士団に拘束された。ただ、ちょうどその晩が満月でね。狼になった俺を見て、彼らは早々に、俺に犯行は不可能だと判断し釈放してくれた。真犯人の彼は父親とほとんど一緒に生活したことがなかったから、この特性について知らなかったようだね。釈放と同時に指名手配も解除されたけど、あれだけポスターが張られてしまうと、王都には居づらくて、それからまた冒険者として旅をしている。」
その話を聞いて、彼もこの六年、色々大変だったのだなと思った。
「ミロの父親が『連続殺人鬼』じゃないって、分かっただけでもよかったわ。」
「誤解が解けたのであれば、せっかく出会えた運命の番だ。俺は君に強く惹かれている。今すぐにでも結婚して欲しい。きちんとミロの父親になりたい。」
恍惚として彼は私を見つめるが、嗅覚が麻痺しているせいか、ほぼ初対面の人にそう懇願されてもどうにも気持ちが追い付かない。なんだか獣人の本能というものが酷く馬鹿馬鹿しく感じた。
「私たち、お互いを知らなすぎると思うの。結婚は一生のことだし。まずはちゃんとお互いを知ってからでも良いんじゃないかしら?風邪が治ったら番の認識阻害薬を飲むわ。それでも、あなたが私を好きで、私があなたを好きになったら、結婚を考えてもいいと思う。」
「……分かった。絶対にソニヤを振り向かせて見せる。」
彼の金色の瞳が、獲物を捕らえるようにきらりと光った。
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