運命の番はお尋ね者

志熊みゅう

文字の大きさ
6 / 8

6.

 私はレーヴィを居間に通した。ミロを寝室に連れて行き、大人の話をするから少し休んでいるようにと告げた。心配そうな表情でこちらをみていたが、ホットミルクを渡すと、ミロは嬉しそうに微笑んだ。

 居間に戻ると、レーヴィが開口一番言った。

「まず、初めて会った日にいきなり関係を持ったことは謝る。けれどあの日、君はひどく酔っていて、抱きつかれてキスをされて、もう理性が持たなかったんだ。初めてだと知っていたら、その……もっと優しくした。」

「そうね……。あの日は、王宮をクビになってやけになって飲み過ぎていたから、よく覚えていないの。水に流すわ。」

 それから、簡単に互いの自己紹介と、今何をやっているかを報告した。彼は上級冒険者としてソロ活動しているらしい。近隣の都市で、この村のスタンピードを聞きつけて、やってきたと言う。

「昨日は薬を飲んで、宿屋で静かにしていたんだが、仔狼の鳴き声がして、いても立っても居られなくて、森に助けに行ったんだ。」

「そうだったんですね。ありがとうございます。」

「それで、あの子から君の甘い匂いがして、俺の子だと確信した。」

「……。」

「君だって、俺が運命の番だと分かっていたはずだろう?では、どうして逃げたんだ?――まさかあの時、俺が指名手配されていたからか?」

「……そうですね。」 

 彼は当時『切り裂きウルフ』連続殺人事件の重要参考人として、王都中にポスターが貼られ、指名手配されていた。てっきりあの後、捕まったかと思っていた。まさかこんな堂々と姿を見せるとは。

「――端的に言えばあれは冤罪だ。」

「……!」

「真犯人は前に、冒険者としてパーティを組んでいた俺のダチだった。俺がいつも満月の夜に身を隠すのをいいことに、罪を擦り付けようとしたんだ。俺はそのダチを騎士団に引き渡そうと思って、証拠集めのために王都にいたんだ。」

「それで、その真犯人は捕まったのか?」

 兄さんも興味津々と言った様子で、彼の話を聞いている。

「ああ、もちろんだ。――彼は母親が娼婦でね。家にほとんど帰ってこなかったそうだ。父親の狼獣人も、彼が幼い頃に女と出て行った。彼は、両親に歪んだ恨みを持っていた。」

「なるほど。それで娼婦を殺し、君に冤罪を擦り付けようとしたのか。」

「ソニヤと一晩を共にした直後、俺は王都の騎士団に拘束された。ただ、ちょうどその晩が満月でね。狼になった俺を見て、彼らは早々に、俺に犯行は不可能だと判断し釈放してくれた。真犯人の彼は父親とほとんど一緒に生活したことがなかったから、この特性について知らなかったようだね。釈放と同時に指名手配も解除されたけど、あれだけポスターが張られてしまうと、王都には居づらくて、それからまた冒険者として旅をしている。」

 その話を聞いて、彼もこの六年、色々大変だったのだなと思った。

「ミロの父親が『連続殺人鬼』じゃないって、分かっただけでもよかったわ。」

「誤解が解けたのであれば、せっかく出会えた運命の番だ。俺は君に強く惹かれている。今すぐにでも結婚して欲しい。きちんとミロの父親になりたい。」

 恍惚として彼は私を見つめるが、嗅覚が麻痺しているせいか、ほぼ初対面の人にそう懇願されてもどうにも気持ちが追い付かない。なんだか獣人の本能というものが酷く馬鹿馬鹿しく感じた。

「私たち、お互いを知らなすぎると思うの。結婚は一生のことだし。まずはちゃんとお互いを知ってからでも良いんじゃないかしら?風邪が治ったら番の認識阻害薬を飲むわ。それでも、あなたが私を好きで、私があなたを好きになったら、結婚を考えてもいいと思う。」

「……分かった。絶対にソニヤを振り向かせて見せる。」

 彼の金色の瞳が、獲物を捕らえるようにきらりと光った。

あなたにおすすめの小説

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。 若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。 それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。 ※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。 本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。 ※4話でサクッと完結します。

【完結済】けもみみ悪役令嬢は婚約回避する。~前世の推しを諦める決意をしたのに運命の番なんて~

降魔 鬼灯
恋愛
前世嵌まった乙女ゲーム『あなたに天上の音を』の世界で、もふもふの白い虎耳がご自慢の侯爵令嬢アンドレア・サンダーウッドに生まれ変わった。 しかし、彼女は、ざまあされる悪役令嬢だった。 前世の推しのクロード殿下との婚約を回避して、ざまあされる運命から逃れたい。 でも、獣人に生まれ変わって初めてわかった真実。それは、クロード殿下が自分の運命の番だということで…。 このままでは、クロード殿下が好きすぎてゲーム以上にヤバいキャラになりそう。 アンドレアは煩悩と本能に打ち勝てるのか? もふもふをもふりたいのに、クロード殿下に1日三回ブラッシングされもふりたおされるアンドレア。 アンドレアは気付いていませんがクロード殿下に溺愛されてます。 完結済み。1日二回ずつ更新予定です。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?