『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう

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 夏休みはもともと、一日も休みなく妃教育が組まれていた。これはレイモン殿下に甘く、私には厳しい皇妃殿下からの要望だ。もしかすると、殿下が私のことを『二流』と言い出したのは、あの皇妃の差し金かもしれない。

 皇宮には『レイモン殿下より公衆の面前で婚約破棄を賜ったため、もうこれ以上皇宮には出入りできない』と帰省の前に書簡を送った。返事を見るつもりもない。こんなことになるなら、妃教育なんてもっと手を抜けばよかった。私の五年間を返して欲しい。

 自領・ラルカンジュ領に戻り、くだんの件を報告すると、当然のように父が怒り狂った。

「この婚約は、公爵家のベアトリス嬢を嫌がったレイモン殿下がお前がいいと言って決めたはずじゃ。結納金として、我が領の鉄鉱山の恒久的採掘権も差し出したのに。それを学園で他の令嬢に目移りしたからと破棄し、ワシのかわいいソフィを『二流』とこき下ろすとは!絶対に許さん!宣戦布告じゃ!」

 父は怒りのままに、さらなる書簡を皇室に送りつけた。私の書簡と父の書簡、レイモン殿下からの報告を聞いて、物事を公平な立場から見る皇帝陛下がどう判断するかは分からないが、父の言う通り、本当に戦争が起こるかもしれない。城内は穏やかではない雰囲気だ。騎士たちが有事に備えて、毎日剣の稽古に明け暮れている。

 嵐の前の静けさだが、せっかくの休みだ。私は今までできなかったことを、とことんやってやろうと思った。

 まずはヴァイオリンを再開した。私は小さい頃からヴァイオリンが好きだ。でも、皇宮の晩餐会では私はピアノを演奏することが決まっていた。ヴァイオリンはレイモン殿下の担当だからだ。婚約が決まってから始めたピアノは簡単な曲を弾くのがやっと。それを下手くそと罵られるのは、ただただ辛かった。久しぶりにヴァイオリンの講師を家に呼び、夢中でヴァイオリンを奏でると、背中に羽が生えたような解放感があった。

 勉強もした。妃教育のせいで、今まで王立アカデミーの勉強の時間が十分に取れなかった。今まで時間をかけて勉強できなかったところを、復習するのは楽しかった。

 ジョルジュから、私のことを気遣った手紙も届いた。今、彼はエスポワール王国に帰省しているらしく、エスポワールのこと、家族のことが綴られていた。彼の人柄だろうか、読んでいると、少しずつ心が温まっていった。

 皇宮からの書簡も思いのほか早く届いた。今回の件は、レイモン殿下の完全に独断で行われたとのこと。皇宮側もとても焦っていることが、文面から伝わってきた。しかしながら、こうなってしまった以上、婚約を続けるのは難しいだろうと皇帝陛下の判断が記載されていた。結納金として納めた鉄鉱山の権利は当家に返還し、過去五年間にわたる鉱山の寄進と、これまで当家が示してきた忠誠を功績として評価し、公爵に陞爵すると記されていた。

「何!?うちが公爵家に!当家たっての悲願じゃ。」

 たった五年の鉄鉱山の採掘権で、公爵位とは。おそらく私への賠償の意味もあるのだろう。父は陞爵されると聞いて、ここ数週間の怒りが嘘のように歓喜に満ち溢れていた。新たな結婚相手はワシが見つける、あんな皇子のことは早く忘れろとも言われた。

 婚約破棄が正式に決まり、ドレスは全て新調した。今まで殿下から頂いたものは、皇妃のお眼鏡に叶った装飾と露出が少ないドレスばかり。その中に、私が気に入ったものは一枚もなかった。周りから、地味だ地味だと言われていたが、それは皇妃の命で、自慢の銀髪をひっつめ髪にしていたから。ウェーブがかったこの髪と、菫色の瞳は決して地味ではない。髪型もこれを機に思い切り派手にしようと思い、髪飾りをたくさん購入した。
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