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学園入学後は、新しい友達に、新しい勉強に、新しい遊びで、毎日が楽しかった。バルドは普段は家庭教師らしく、宿題や復習の面倒を見てくれる。まあお金をもらっているから、あんまり私の成績が悪いと困るのだろう。でもとっても分かりやすいので助かっている。
ファウストはあの宣言通り、女の子をとっかえひっかえだ。毎日違う女子を連れて、こちらに見せつけるように話している。女子たちもまんざらではないようだ。そう、ファウストは私以外の女性には紳士的で優しいのだ。
そして、遂に新入生歓迎パーティーの日が近づいてきた。なんとバルドからドレスが贈られてきた。この前のドレスと同じような色味だが、少し濃い紫だ。どちらかというと私よりもバルドの瞳の色に近いかも。胸元は少し大胆にハート型にカットされていて、ウエストのリボンがワンポイントになっている。こちらのドレスもお姫様みたいでかわいい。
「確かに、自分の瞳の色と同じドレスなら何着持っていてもいいわね。」
「うふふ。お嬢様。バルド様に大切にされていますね。」
「これが本当の婚約者なら最高なんだけどね。」
ふとファウストの顔が頭をよぎる。やはり私をエスコートする気はないらしく、入学後一度も連絡を寄こさない。別に構わない。このまま婚約が解消されればいいのに。
新入生歓迎パーティーでは、予定通りバルドに贈られたドレスを着て、夜会用に髪の毛をアップスタイルにまとめてもらった。
「本当にきれいだね。君にぴったりだと思ったんだ。」
うれしいことを言ってくれる。「ドレスが前回と同じだ」とお小言を言う誰かさんとは大違いだ。
パーティー会場は学園の講堂だ。天井には煌めくシャンデリア、床には艶やかな大理石。がっしりと彼の腕を掴んで入場した。この前のガーデンパーティーで会った令嬢たちが、黄色い歓声を上げる。案外バルドは人気のようだ。
まずは早速ファーストダンスを踊る。初めて一緒に踊るけど、バルドはダンスがあまり得意ではないようだ。少しでも相手が踊りやすいようにリードする。続けてもう一曲。本来、二曲連続で踊るのは婚約者だけと言われているが、彼は何といっても、私のレンタル婚約者なのだ。ちゃんと二曲付き合ってもらう。
「ありがとう。バルド、とっても楽しかったわ。」
「君は大丈夫?疲れていない?私はもうクタクタだ。」
「ふふ。私はこのくらい全然大丈夫よ。自領では一日中狩りしているもの。体力には自信があるわ。まあこれだけ見せつけたら、会場の皆は私とあなたを婚約者、もしくはそれに近い関係だと思うでしょうね。」
狙い通りと高らかに笑った。地味で婚約者に見向きもされない令嬢なんて絶対に笑い種にされたくない。私だって多少のプライドというものがあるのだ。その時、誰かが後ろから声をかけてきた。
「おい!」
「あら、これはヴェントーラ侯爵令息ではないですか。ごきげんよう。」
ファウストだ!自分が話しかけるなって言ってたのに。私は嫌味ったらしく、挨拶してやった。
「ごきげんようじゃない。――これはどういうつもりだ?」
そう言って我々をじろりと見る。にらむその碧眼が、いつになく焦っているように見えた。
「だってそういう『約束』じゃないですか?それこそ、あなたは随分と自由を謳歌されてますよね?それより、よろしいの?先ほどあなたがエスコートされていた金髪のご令嬢、放置されて困ってらっしゃいますよ。」
「俺といない時は、楽しそうにするんだな。で、そいつは誰だ。瞳の色のドレスを纏うとは、恋い慕っているとでも言いたいのか?」
今までしょっちゅう喧嘩はしてきたが、こんなに怒っているファウストは初めてだ。うむ、この状況をそのまま実家に伝えられると少し分が悪い。できる限り落ち着いて、話をした。
「ドレスは私の瞳の色に合わせて選ばせて頂きました。こちらは、はとこのバルド様。私の兄のような方です。学園で成績がとてもよいので、この度、私の家庭教師をして頂くことになりました。婚約者がいないものが親族にエスコートを頼むのは普通のことでは?」
「では、なぜ二曲踊った?お前だってその意味くらい分かっているだろう?」
射抜くように鋭くにらまれる。強く握りしめた拳。今にも殴りかかってきそうな形相だ。
「あら、気づきませんでしたわ。バルド様と踊るのが楽しかったので。そもそものお話ですが、学園内で話しかけるなというのは、あなた様が言い出したことです。こちらは今後も守らせて頂きますので、どうぞお声をかけないでくださいまし。」
バルドは隣で我々の様子をみて、冷や汗をかいてる。巻き込んでしまって申し訳ないが、あなたを家庭教師に推薦したのは、この私。それにこの役割をお願いできるのは、あなたしかいないのだ。医学校の学費のために付き合って頂く。ファウストは、心細そうに迎えに来た金髪の令嬢を連れて、私たちのもとを後にした。
「バルド様、ご迷惑をおかけしました。それにしてもファウストが話しかけてきたのは、想定外です。」
「いや、いいんだ。私はある程度覚悟はしていたから。」
バルドは何かを悟ったような表情で、ため息をついた。
ファウストはあの宣言通り、女の子をとっかえひっかえだ。毎日違う女子を連れて、こちらに見せつけるように話している。女子たちもまんざらではないようだ。そう、ファウストは私以外の女性には紳士的で優しいのだ。
そして、遂に新入生歓迎パーティーの日が近づいてきた。なんとバルドからドレスが贈られてきた。この前のドレスと同じような色味だが、少し濃い紫だ。どちらかというと私よりもバルドの瞳の色に近いかも。胸元は少し大胆にハート型にカットされていて、ウエストのリボンがワンポイントになっている。こちらのドレスもお姫様みたいでかわいい。
「確かに、自分の瞳の色と同じドレスなら何着持っていてもいいわね。」
「うふふ。お嬢様。バルド様に大切にされていますね。」
「これが本当の婚約者なら最高なんだけどね。」
ふとファウストの顔が頭をよぎる。やはり私をエスコートする気はないらしく、入学後一度も連絡を寄こさない。別に構わない。このまま婚約が解消されればいいのに。
新入生歓迎パーティーでは、予定通りバルドに贈られたドレスを着て、夜会用に髪の毛をアップスタイルにまとめてもらった。
「本当にきれいだね。君にぴったりだと思ったんだ。」
うれしいことを言ってくれる。「ドレスが前回と同じだ」とお小言を言う誰かさんとは大違いだ。
パーティー会場は学園の講堂だ。天井には煌めくシャンデリア、床には艶やかな大理石。がっしりと彼の腕を掴んで入場した。この前のガーデンパーティーで会った令嬢たちが、黄色い歓声を上げる。案外バルドは人気のようだ。
まずは早速ファーストダンスを踊る。初めて一緒に踊るけど、バルドはダンスがあまり得意ではないようだ。少しでも相手が踊りやすいようにリードする。続けてもう一曲。本来、二曲連続で踊るのは婚約者だけと言われているが、彼は何といっても、私のレンタル婚約者なのだ。ちゃんと二曲付き合ってもらう。
「ありがとう。バルド、とっても楽しかったわ。」
「君は大丈夫?疲れていない?私はもうクタクタだ。」
「ふふ。私はこのくらい全然大丈夫よ。自領では一日中狩りしているもの。体力には自信があるわ。まあこれだけ見せつけたら、会場の皆は私とあなたを婚約者、もしくはそれに近い関係だと思うでしょうね。」
狙い通りと高らかに笑った。地味で婚約者に見向きもされない令嬢なんて絶対に笑い種にされたくない。私だって多少のプライドというものがあるのだ。その時、誰かが後ろから声をかけてきた。
「おい!」
「あら、これはヴェントーラ侯爵令息ではないですか。ごきげんよう。」
ファウストだ!自分が話しかけるなって言ってたのに。私は嫌味ったらしく、挨拶してやった。
「ごきげんようじゃない。――これはどういうつもりだ?」
そう言って我々をじろりと見る。にらむその碧眼が、いつになく焦っているように見えた。
「だってそういう『約束』じゃないですか?それこそ、あなたは随分と自由を謳歌されてますよね?それより、よろしいの?先ほどあなたがエスコートされていた金髪のご令嬢、放置されて困ってらっしゃいますよ。」
「俺といない時は、楽しそうにするんだな。で、そいつは誰だ。瞳の色のドレスを纏うとは、恋い慕っているとでも言いたいのか?」
今までしょっちゅう喧嘩はしてきたが、こんなに怒っているファウストは初めてだ。うむ、この状況をそのまま実家に伝えられると少し分が悪い。できる限り落ち着いて、話をした。
「ドレスは私の瞳の色に合わせて選ばせて頂きました。こちらは、はとこのバルド様。私の兄のような方です。学園で成績がとてもよいので、この度、私の家庭教師をして頂くことになりました。婚約者がいないものが親族にエスコートを頼むのは普通のことでは?」
「では、なぜ二曲踊った?お前だってその意味くらい分かっているだろう?」
射抜くように鋭くにらまれる。強く握りしめた拳。今にも殴りかかってきそうな形相だ。
「あら、気づきませんでしたわ。バルド様と踊るのが楽しかったので。そもそものお話ですが、学園内で話しかけるなというのは、あなた様が言い出したことです。こちらは今後も守らせて頂きますので、どうぞお声をかけないでくださいまし。」
バルドは隣で我々の様子をみて、冷や汗をかいてる。巻き込んでしまって申し訳ないが、あなたを家庭教師に推薦したのは、この私。それにこの役割をお願いできるのは、あなたしかいないのだ。医学校の学費のために付き合って頂く。ファウストは、心細そうに迎えに来た金髪の令嬢を連れて、私たちのもとを後にした。
「バルド様、ご迷惑をおかけしました。それにしてもファウストが話しかけてきたのは、想定外です。」
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バルドは何かを悟ったような表情で、ため息をついた。
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