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月光草の告白以来、ファウストは信じられないほど私にべったりになった。新入生歓迎パーティーで、私のことをきれいだと話している令息が複数人いたらしく、ずっと心配だったらしい。休み時間はしょっちゅう私の教室に来るし、帰りは必ず教室の前で待っている。急な態度の変化にこちらはすぐにはついていけない。
いつの間にかファウストは私のタウンハウスまでついてきて、バルドの授業にまで顔を出すようになった。けれどずっとバルドを牽制しているものだから、バルドも少しやりづらそうだ。せっかく成績優秀な一流の家庭教師に指導してもらっているのに、その指導を十分に受けられないのは少し惜しい気がする。
誕生日会用のドレスは澄んだ空のような淡いブルーをベースにした、ふわりと広がるプリンセスラインのドレスが贈られてきた。ところどころ立体的な菫色の蝶のモチーフがついている。
「お嬢様、とてもよく似合っています!ファウスト様って、昔からお嬢様のことよく見てらっしゃいますよね。ずっと愛してらっしゃるんだろうなって思っていました。」
ジーナが感慨深げに言う。
「あら、そうかしら。私はそんな風に思ったことはなかったけど。」
「ふふ、そうですよ。私には分かります。」
誕生日当日は、これに以前もらった月光草のペンダントも合わせた。準備万端だ。ファウストは控室で私を一目みるなり、飛びついてきた。
「もう!せっかくきれいに着せてもらったのに、しわになっちゃう!」
「あまりにもきれいだったから。それにしてもよく似合っている。君がドレスを選ぶのが苦手なら、これからもたくさん贈る。」
「それは助かるわ。ありがとう。」
ファウストのエスコートは紳士的で優しかった。年上のバルドの隣は安心感があったが、ファウストは少し不器用でも一生懸命守ってくれようとする。本日の主役である私をお姫様のように扱ってくれるのがうれしかった。
「あら、仲直りしたのね。本当によかったわ。」
両親もにこにこと嬉しそうにしている。鉄鉱山の件もあるし、私たちが仲がいいに越したことはないのだろう。
バルドも今日の誕生日会に招待していたが、初めにちょっと挨拶した以外は遠くから会の様子を眺めていた。ファウストが私を近づけないようにしていたというのが正しいのかもしれない。
ファウストは、アンナマリア様や私がバルドを婚約者だと紹介していた令嬢たちに、自分が本当の婚約者だと律儀に言って回った。仕方がないから私も「ちょっと喧嘩をしてしまって、あの時は嘘をついて申し訳なかった」と謝罪した。皆、少し驚いた様子だったが、笑って許してくれた。
「ちょっと、ファウスト。そんな律儀に訂正して回らなくても。」
「だって、バルド殿が君の婚約者だと思っている人からしたら、俺が横恋慕しているみたいだろう。そんなの絶対ゆるせない。」
「あなたって意外と独占欲が強いのね。」
「ああ、そうだよ。だから覚悟して。」
広間に音楽流れる。お待ちかねのダンスタイムだ。
「お手をどうぞ、我が君。そういえば、この前、ルチアはバルド殿と二曲踊ったね?今日は最低でも三曲は付き合ってもらうから。」
「ええ!そんな無茶よ。」
そのあとファウストは、私が足を攣って動けなくなるまで手を離してくれなかった。 動けなくなった私を、ファウストは満足げに抱きかかえ、耳元で囁いた。
「ああ、やっとこれで君を独り占めできる。」
そしてそっと私のおでこに口づけを落とした。広間一杯に歓声が響く。
婚約者(偽)をレンタルしたつもりが、本物の婚約者の激重執着愛を目覚めさせてしまった。こうして、私の偽装婚約は幕を下ろしたのだった。
いつの間にかファウストは私のタウンハウスまでついてきて、バルドの授業にまで顔を出すようになった。けれどずっとバルドを牽制しているものだから、バルドも少しやりづらそうだ。せっかく成績優秀な一流の家庭教師に指導してもらっているのに、その指導を十分に受けられないのは少し惜しい気がする。
誕生日会用のドレスは澄んだ空のような淡いブルーをベースにした、ふわりと広がるプリンセスラインのドレスが贈られてきた。ところどころ立体的な菫色の蝶のモチーフがついている。
「お嬢様、とてもよく似合っています!ファウスト様って、昔からお嬢様のことよく見てらっしゃいますよね。ずっと愛してらっしゃるんだろうなって思っていました。」
ジーナが感慨深げに言う。
「あら、そうかしら。私はそんな風に思ったことはなかったけど。」
「ふふ、そうですよ。私には分かります。」
誕生日当日は、これに以前もらった月光草のペンダントも合わせた。準備万端だ。ファウストは控室で私を一目みるなり、飛びついてきた。
「もう!せっかくきれいに着せてもらったのに、しわになっちゃう!」
「あまりにもきれいだったから。それにしてもよく似合っている。君がドレスを選ぶのが苦手なら、これからもたくさん贈る。」
「それは助かるわ。ありがとう。」
ファウストのエスコートは紳士的で優しかった。年上のバルドの隣は安心感があったが、ファウストは少し不器用でも一生懸命守ってくれようとする。本日の主役である私をお姫様のように扱ってくれるのがうれしかった。
「あら、仲直りしたのね。本当によかったわ。」
両親もにこにこと嬉しそうにしている。鉄鉱山の件もあるし、私たちが仲がいいに越したことはないのだろう。
バルドも今日の誕生日会に招待していたが、初めにちょっと挨拶した以外は遠くから会の様子を眺めていた。ファウストが私を近づけないようにしていたというのが正しいのかもしれない。
ファウストは、アンナマリア様や私がバルドを婚約者だと紹介していた令嬢たちに、自分が本当の婚約者だと律儀に言って回った。仕方がないから私も「ちょっと喧嘩をしてしまって、あの時は嘘をついて申し訳なかった」と謝罪した。皆、少し驚いた様子だったが、笑って許してくれた。
「ちょっと、ファウスト。そんな律儀に訂正して回らなくても。」
「だって、バルド殿が君の婚約者だと思っている人からしたら、俺が横恋慕しているみたいだろう。そんなの絶対ゆるせない。」
「あなたって意外と独占欲が強いのね。」
「ああ、そうだよ。だから覚悟して。」
広間に音楽流れる。お待ちかねのダンスタイムだ。
「お手をどうぞ、我が君。そういえば、この前、ルチアはバルド殿と二曲踊ったね?今日は最低でも三曲は付き合ってもらうから。」
「ええ!そんな無茶よ。」
そのあとファウストは、私が足を攣って動けなくなるまで手を離してくれなかった。 動けなくなった私を、ファウストは満足げに抱きかかえ、耳元で囁いた。
「ああ、やっとこれで君を独り占めできる。」
そしてそっと私のおでこに口づけを落とした。広間一杯に歓声が響く。
婚約者(偽)をレンタルしたつもりが、本物の婚約者の激重執着愛を目覚めさせてしまった。こうして、私の偽装婚約は幕を下ろしたのだった。
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