逆ハーエンドかと思いきや『魅了』は解けて~5年後、婚約者だった君と再会する

志熊みゅう

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プロローグ

2. この世界とルミエール魔法学園

 我がルミエール王国の主な産業と軍備は魔法によって支えられている。為政者である貴族もほとんどが魔力持ちだ。王都にあるルミエール魔法学園はこの貴重な魔力持ちの人材を管理し、育成することを目的とした三年制の王立教育機関である。建前上、一定量の魔力を持つ国民が義務として通わなければいけないが、実際は高価な魔力検査を平民全員に行えるわけではないので、入学を希望する平民のほとんどは、お金持ちの子女である。

 全寮制の魔法学園だが、公爵令嬢 アマリリスだけは、おばあ様が学園長時代に住んでいたという学園内の屋敷に住むことが許された。アマリリスのおばあ様はもう亡くなっているが、元王女で結婚し臣籍降下してから長らく魔法学園で教鞭を執り、学園長まで勤め上げた。乙女ゲーム内で悪役令嬢 アマリリスの起こす"事件"のほとんどが学園の女子寮で発生していたため、ヒロインとの接点をなくす目的で、大量の寄付金を払って、おばあ様の屋敷に住めるように手配したらしい。このお屋敷は平民向けの授業が行われる校舎に近く、攻略対象者やヒロインからも死角になっている。学園入学後、我ら悪役令嬢トリオ+公爵家の影 リュカの作戦会議は常にここでおこなわれた。

 この学園で学べることは魔法、剣術、体術、領地経営、外国語、一般教養、芸術、、、と多岐にわたるが、必修なのは魔法学だけだ。魔法には大きく属性魔法と一般魔法がある。前者が属性という適性がないと使えないのに対し、後者は属性に関係なく扱うことができる。例えば、ファイアボール火の球ファイアアロー火の矢が火属性の魔法であるのに対し、転移魔法や身体強化魔法は一般魔法になる。属性には火、氷、水、風、土、光、闇があって、魔力量と一緒で遺伝する。私は風属性だ。私はもともと王族並みに魔力量が高く精霊契約もしているから、風使いでありながら戦闘能力が秀でて高いが、これは例外中の例外で、一般に火属性と氷属性が攻撃力が高く、他の属性はそれに劣ると言われている。このため貴族の政略結婚は属性を考慮して選ばれることも多い。辺境に位置する我がブロワ侯爵領は、常に魔獣が出没し、今も隣国との領土争いが絶えない。うちは姉妹だ。私が王太子妃候補を外れてから、長女である私に婿入りという形で、騎士家系の次男で火属性のアベルとの婚約が整えられた。ちなみに属性は基本一人一属性だが例外もいて、二属性の魔法を扱える猛者もいる。ネモフィラはこの二属性持ちで、主属性が光で、副属性が火だ。

 魔法があるといってもこの世界はいろいろ不便で、科学技術という点において転生前の日本に大きく劣る。悪役令嬢トリオはこの鬱憤を、事業という形で発散することにした。アマリリスは転生前女性起業家だったそうで、平民向けの経営学の授業も熱心に勉強していて、経営についての下知識は万全であった。学園から近く、港もあるマール伯爵領を治めている私の母方の伯父に頼んで、三人分の平民籍を作ってもらい、フルール商会を起業した。平民として起業したのは、貴族としての事業は家単位で行うものであり、小娘三人が行うには少々手続きが煩雑過ぎたためだ。あと平民籍で個人資産を作っておけば、運悪く悪役令嬢として貴族籍をはく奪され、国外追放や修道院送りになった時も、資産を持ち出すことができる。まずは女子らしく化粧品やヘアケアアイテムを中心に商品開発を始め、一年を過ぎたあたりから一部事業は軌道に乗り始めた。
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