逆ハーエンドかと思いきや『魅了』は解けて~5年後、婚約者だった君と再会する

志熊みゅう

文字の大きさ
48 / 59
家族になる

18. 異母妹エリカとの対面

 名残惜しくもヴォルカンを後にし、ひたすら北へ北へと進む。比較的安全なルートを選んだはずだが、段々と森は鬱蒼として、いつ魔獣が出てもおかしくない雰囲気になった。ようやく森を抜けると前方に城壁がみえた。城門の関所を抜けるとそこにはブロワ城の城下町が広がっている。この城下町は冒険者と傭兵の街としても知られる。冒険者ギルドに鍛冶屋、酒場が軒を連ね、街には腕っぷしに自信のある荒くれものたちが集う。

 ついに旅の最終目的地、ブロワ侯爵の居城までたどり着いた。ゴシックな古城で、戦闘に特化したタイプの城だ。すぐに中に通され、エントランスで三歳年下の異母妹のエリカに出迎えられた。

「お姉様、お久しぶりでございます。まさか生きていらっしゃるとは。」

「ええ、久しぶり。今更この家のことをどうにかしたいとは思っていないから安心して。これから五日間よろしくね。」

「はい。侯爵家一同しっかりおもてなし致しますわ。」

 そういうと、エリカがシモンを一瞥した。

「で、そちらがのお子様でしょうか?」

「シモンです。よろしくお願いします。」

 シモンは年の割に気を遣う子だから、わざと明るく振舞っている。アベルが守るようにシモンの肩を抱き寄せた。

「エリカ嬢、子どもの前でそういうのはやめて。」

「もーこっちだって大変だったんだから、嫌味の一つや二つくらい言いたくってよ。」

 そういうと、ぷくっとほっぺたを膨らませた。こういうところがこの人の憎めないところではある。

 ***
 私たちはゲストルームがある城の離れに通され、荷解きをした。今は私たち以外の客人がいないから、離れの方は自由に使ってくれと言われた。アンヌは荷解きが終わると、昔馴染の使用人たちのところにいった。彼女も積もる話もあるのだろう。エリカが私と二人きりで話がしたいということだったので、アベルにシモンを預け、応接間に向かった。

「お姉様、案外元気でびっくりしたわ。アベル様とも仲直りしたのね。」

「ええ。元気にしているわ。そういえば遅くなっちゃったけど、魔法学園の卒業おめでとう。」

「学園は普通にしていれば卒業できるもの。精霊契約までできて卒業してない方がおかしいのよ。」

 この子の母親のカサブランカは男爵令嬢で魔法学園にやっと入れるほどの魔力しかなかった。だからこの子も魔力が少なく、氷魔法が使えず水属性だ。私の魔法の才能を昔は妬んでたっけ。

「私、学園に行って気づいたの。お姉様がすごいのは、生まれもったものだけじゃなくて、ずっと努力してきたからだと。魔力があっても普通あんなに瞬時にそして的確に魔法を発動させることなんて芸当できないもの。」

「そうね。」

「勉強だってそう。学園を卒業して自分で領地経営の勉強を始めて、お姉様は人に見せない努力をたくさんしてきたんだってわかったの。以前はお姉様のこと、魔力が高いからって天才だ神童だってチヤホヤされてると思ってたの。全然そんなことなかった。昔の私の態度は最悪だったと思う。本当にごめんなさい。」

「いいのよ、別に謝らなくたって…。」

 そのあと、私達はこの七年についてお互い報告しあった。父はスタンピードで負傷後、寝たきり状態が続いている。ここ半年は精神もかなり衰弱し、夢と現実の区別がつかなくなり、宙を見つめぼーっとしている時間が増えたそう。義母のカサブランカは、負傷後城に戻った父に、ほとんどの宝飾品をとりあげられ、離縁を言い渡された。若い絵師のパトロンになり、侯爵家の金を使い込んでいたことがばれたらしい。家を追い出され、あれだけ貢いできた絵師にも逃げられ、実家の男爵家に頼るわけにもいかず、かといって市井で生活できる術もない。やむを得ず自ら修道院に入った。しかし神に仕える身でありながら、今度はエリカから金を無心しようと手紙を送ってくるらしく、なんとか縁を切る方法はないか模索しているらしい。

「あの絵師のこと随分気に入っているなと思っていたけど、そんな関係だったのね。」

「学園に入学するまで、あの人の異常さに気づけなかったけど、貴族として責任を果たす気が全くないのよ。宝石と若い男にしか興味がなくて。」

 そういうと、エリカが深いため息をついた。

「エリカも成長したのね。」

「成長というか、周りが見えるようになったと思うわ。学園に入る前はほとんど領地からでたことがなかったし、世界が狭かったのよ。学園ではいいお友達もたくさんできたの。」

 わがままいっぱいに育ってしまったエリカをここまで矯正してくれたご友人方に心の中で感謝した。

 こんこん、ノック音のあとに、侍女が入ってきた。

「ヴィクトル殿下がお戻りです。」

 殿下は紅龍レッドドラゴン討伐で一昨日から城を出ていたらしい。

「お姉様、殿下のお出迎えにあがるので、一旦失礼します。」

「それなら、私も行くわ。」

 足早にエントランスに急いだ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

数多の令嬢を弄んだ公爵令息が夫となりましたが、溺愛することにいたしました

鈴元 香奈
恋愛
伯爵家の一人娘エルナは第三王子の婚約者だったが、王子の病気療養を理由に婚約解消となった。そして、次の婚約者に選ばれたのは公爵家長男のリクハルド。何人もの女性を誑かせ弄び、ぼろ布のように捨てた女性の一人に背中を刺され殺されそうになった。そんな醜聞にまみれた男だった。 エルナが最も軽蔑する男。それでも、夫となったリクハルドを妻として支えていく決意をしたエルナだったが。 小説家になろうさんにも投稿しています。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

【短編】『待つ女』をやめたら、『追われる女』になりました

あまぞらりゅう
恋愛
婚約者の王太子を、いつも待ち続けてきたシャルロッテ侯爵令嬢。 だがある日、彼女は知ってしまう。彼には本命の恋人がいて、自分のことを都合よく放置していただけなのだと。 彼女が待つのをやめた瞬間、追ってきたのは隣国の皇太子だった。 ※覚えやすさや分かりやすさを重視しているので、登場人物の名前は「キャラクター名+身分表記」にしています ★小説家になろう2026/1/29日間総合8位異世界恋愛7位 ★他サイト様にも投稿しています!

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。