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第二幕 トヴォー王国
5. 初戦
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当日朝は気合を入れて、闘技場に向かった。受付でエントリーの手続きと試合の説明を受けた。防護のペンダントも渡された。
「ユカライネン伯爵令嬢、今回が初めての出場ですね。しかも急に参加を決められた。」
「ええ。」
「魔法に自信があると言っても、初戦敗退される方を何人も見てきました。――勝負ですから、負ける方がいるのは仕方のないことです。なかなかに挑戦的かと思いますが、御武運を祈ります。」
「そうね、ありがとう。」
人がワクワクしているのに、余計なお世話だ。待機部屋に行くと、既に殺気を漂わせている選手がたくさんいた。うちと違って家名と己のプライドを背負ってきているのだから、当然か。
簡単なウォーミングアップを済ませると、すぐに初戦を迎えた。
「予選第2ブロック第3試合。シモン・リューブラント侯爵令息、エディー・ユカライネン伯爵令嬢入場。」
アナウンスと共に、闘技場に入場する。この国の魔法技術がどのレベルにあるかという好奇心でいっぱいだった。初戦の相手である、リューブラント家は代々騎士家系で、その真紅の髪にふさわしく炎魔法を得意とする一族。息子の出来は、義父もよく知らないと言っていた。
「ほー、お前がユカライネン伯爵が気に入って連れて来たという縁戚の娘か。田舎育ちでまともな貴族教育も受けていないんだろう?あの伯爵も大概だが、お前も大概だな。ここは女が遊びで来るところじゃない。」
「あら?そういうことは勝ってから言った方がよろしくてよ?」
「――生意気な女だな。田舎者は口のきき方すら、ユカライネン伯爵に習っていないのか?」
早速、嫌な奴に当たってしまった。そう思っていると、審判に睨まれた。
「試合前の私語は慎むように。」
「はい。」
「では、これより試合を開始する!両者準備はいいか。」
「はい。」
「はじめ!!!」
号令と共に複数の花火が放たれた。私は先手を打つことにした。杖を上げ高らかに詠唱をする。
「トゥルボ・マグヌス!――巻き上がれ竜巻。」
いくつもの竜巻が巻き起こり、闘技場全体が砂埃に覆われた。右も左も分からないくらい視界が遮られる。狙い通りだ。立て続けに詠唱をする。
「スルゲ・ゴーレム!――目覚めよ、ゴーレム!」
土でできた無骨なゴーレムがリューブラント侯爵令息の周りを取り囲む。
私は治癒魔法だけは上手く扱えない。だから相手との直接抗戦はできる限り避けたかった。ゴーレム召喚は土魔法の基本で、魔力消費も大きくはない。ただ一気に十体以上の巨大ゴーレムを操れる人間はそう多くない。
ここでさらに隠遁魔法を使う。この魔法は学院で毎日のように使っていたから、いつの間にか無詠唱でもできるようになった。目くらましの砂埃と隠遁魔法を合わせて使えば、もう相手は私の居場所を特定できない。
「どこだ!どこに行った?試合で相手から逃げるなんて卑怯だぞ。イグニス!――火炎。」
炎で、黒焦げになったゴーレムたちが崩れ落ちる。逃げとは失礼な、これは"戦略"だ。そう思いつつ、淡々とゴーレムを作っては、リューブラント侯爵令息と抗戦させる。
「――出てこい、貴様!クッソ。」
ゴーレムは魔法消費が少ない。いくら炎魔法でゴーレムを倒しても、本体である私を叩かなければ意味がない。向こうは炎魔法を連発して余裕がなくなってきたのか、防戦一方になった。このままゴーレムで消耗戦に持ち込んで倒してもよかったのだが、相手が出てこいというので出てきてあげることにした。隠遁魔法を解き、背後から彼に迫る。
「私はこちらですよ、リューブラント侯爵令息!インペトゥス・ヴェンティ!――疾風の一撃。」
力強い風の衝撃波が彼の背中を突く。彼の胸で、お守りとして渡された防御ペンダントが赤く光り、防護結界が展開される。勝負あった。
「勝者!エディー・ユカライネン伯爵令嬢」
リューブラント侯爵令息は膝ついて、地面に突っ伏した。一方、何が起こっているのか分からないと、客席がざわめいている。――まさに作戦通りである。
「ユカライネン伯爵令嬢、今回が初めての出場ですね。しかも急に参加を決められた。」
「ええ。」
「魔法に自信があると言っても、初戦敗退される方を何人も見てきました。――勝負ですから、負ける方がいるのは仕方のないことです。なかなかに挑戦的かと思いますが、御武運を祈ります。」
「そうね、ありがとう。」
人がワクワクしているのに、余計なお世話だ。待機部屋に行くと、既に殺気を漂わせている選手がたくさんいた。うちと違って家名と己のプライドを背負ってきているのだから、当然か。
簡単なウォーミングアップを済ませると、すぐに初戦を迎えた。
「予選第2ブロック第3試合。シモン・リューブラント侯爵令息、エディー・ユカライネン伯爵令嬢入場。」
アナウンスと共に、闘技場に入場する。この国の魔法技術がどのレベルにあるかという好奇心でいっぱいだった。初戦の相手である、リューブラント家は代々騎士家系で、その真紅の髪にふさわしく炎魔法を得意とする一族。息子の出来は、義父もよく知らないと言っていた。
「ほー、お前がユカライネン伯爵が気に入って連れて来たという縁戚の娘か。田舎育ちでまともな貴族教育も受けていないんだろう?あの伯爵も大概だが、お前も大概だな。ここは女が遊びで来るところじゃない。」
「あら?そういうことは勝ってから言った方がよろしくてよ?」
「――生意気な女だな。田舎者は口のきき方すら、ユカライネン伯爵に習っていないのか?」
早速、嫌な奴に当たってしまった。そう思っていると、審判に睨まれた。
「試合前の私語は慎むように。」
「はい。」
「では、これより試合を開始する!両者準備はいいか。」
「はい。」
「はじめ!!!」
号令と共に複数の花火が放たれた。私は先手を打つことにした。杖を上げ高らかに詠唱をする。
「トゥルボ・マグヌス!――巻き上がれ竜巻。」
いくつもの竜巻が巻き起こり、闘技場全体が砂埃に覆われた。右も左も分からないくらい視界が遮られる。狙い通りだ。立て続けに詠唱をする。
「スルゲ・ゴーレム!――目覚めよ、ゴーレム!」
土でできた無骨なゴーレムがリューブラント侯爵令息の周りを取り囲む。
私は治癒魔法だけは上手く扱えない。だから相手との直接抗戦はできる限り避けたかった。ゴーレム召喚は土魔法の基本で、魔力消費も大きくはない。ただ一気に十体以上の巨大ゴーレムを操れる人間はそう多くない。
ここでさらに隠遁魔法を使う。この魔法は学院で毎日のように使っていたから、いつの間にか無詠唱でもできるようになった。目くらましの砂埃と隠遁魔法を合わせて使えば、もう相手は私の居場所を特定できない。
「どこだ!どこに行った?試合で相手から逃げるなんて卑怯だぞ。イグニス!――火炎。」
炎で、黒焦げになったゴーレムたちが崩れ落ちる。逃げとは失礼な、これは"戦略"だ。そう思いつつ、淡々とゴーレムを作っては、リューブラント侯爵令息と抗戦させる。
「――出てこい、貴様!クッソ。」
ゴーレムは魔法消費が少ない。いくら炎魔法でゴーレムを倒しても、本体である私を叩かなければ意味がない。向こうは炎魔法を連発して余裕がなくなってきたのか、防戦一方になった。このままゴーレムで消耗戦に持ち込んで倒してもよかったのだが、相手が出てこいというので出てきてあげることにした。隠遁魔法を解き、背後から彼に迫る。
「私はこちらですよ、リューブラント侯爵令息!インペトゥス・ヴェンティ!――疾風の一撃。」
力強い風の衝撃波が彼の背中を突く。彼の胸で、お守りとして渡された防御ペンダントが赤く光り、防護結界が展開される。勝負あった。
「勝者!エディー・ユカライネン伯爵令嬢」
リューブラント侯爵令息は膝ついて、地面に突っ伏した。一方、何が起こっているのか分からないと、客席がざわめいている。――まさに作戦通りである。
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本編完結。番外編を順次公開していきます。
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