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第五幕 戦争
6. 自爆
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「イグニス!――火炎。」
大きな鉄の扉は、リアスの詠唱と共に溶け落ちた。
「何者だ!」
中には知った顔が何人か。学生時代、マティアス殿下取り巻きだった悪友もいた。側近たちが、魔法で応戦しようとしたのを奥にいたマティアス殿下が止めた。
「――トヴォー王国、第三王子エリアス殿下。随分と乱暴な訪問じゃないか?フィーラ帝都貴族学院で学友だったからと言って、王族同士の対談はしっかり事前連絡をもらわないと。」
え、待って。マティアス殿下は『リアス・ベックマン』がエリアス殿下だということを知っていたの?
「反乱軍の首謀者として、国際手配されているのに、まだ皇室を語るのか。マティアス。」
リアスが冷笑を浮かべながら、答えた。
「隣にいるのはエディットだね。髪や瞳の色を変えれば、婚約者であった私にバレないとでも思ったかい?――君の死には不審な点が多かった。亡命も疑っていたが、やはり君が手引きしていたのか。エリアス殿下。」
「違います。リアスは関係ない。」
「ふふ。エディット。君の不死鳥で、どれほどの我が国の騎士が命を落としたか分かっているのかい?同じ学び舎で勉強した仲間もいるのにあんまりじゃないか?皇子の婚約者でありながら、他国の王族に機密情報を漏らし、亡命までして、『反乱軍』は君の方じゃないのか?」
「元はと言えば、お前がニオのスパイに骨抜きにされたのがいけないのだろう。」
リアスが私の前に立ち、吐き捨てるように言った。
「エディット、君たちの関係も学生時代からだろう?トヴォーの『スパイ』に骨抜きにされたのは君の方じゃないのか。」
「誤解です!私たちの関係はあなた方とは違います!ライラ嬢と子まで作ったあなたと一緒にしないで下さい。しかも自分が皇帝になるのに邪魔になったからといって、お腹の子ごと処刑するなんて。」
「あれの処刑を決めたのは私ではない。エディット、君がもっと凡庸でさえあれば、あんな女に現を抜かすことはなかった。――だが、勉強も、魔法も、いつも君の方が優れていた。」
マティアス殿下は苦虫をかみつぶすように言った。
「トヴォーは長く友好国のはずです。どうしてニオについたんですか?」
「――ランデル伯爵に言われた。トヴォーは歴史ある国だが、兵力ではニオやフィーラに大きく劣る。2対1で挟めば、必ず叩ける。長い二国間の友好関係がフィーラがトヴォーに攻め入らない理由だと。戦況が優勢ならば、皇帝はニオ側につく。そしてこの戦争の最大の功労者として皇太子の指名が確実になると。――その通りだと思った。」
「皮肉だな。結果、未来の皇帝の座を自分から手放すなんて。」
とどめを刺すように、リアスが言う。
「うるさい。お前が、お前たちさえ現れなければ、全て上手くいったんだ。」
「マティアス、君は昔から思慮が浅いんだ。虚栄心ばかりでその実がない。」
「貴様、だまれ。」
「話したいことはそれだけか?お前の首を取るまでがここでの私の仕事だ。」
リアスが静かに言った。マティアス殿下が吐き出すように言った。
「ふふ、そうはさせない。」
「この期に及んで、逃げる気か!レクイエム・イグニス!――炎の鎮魂歌。」
リアスの詠唱と共に、部屋を火炎が広がっていく。地獄の業火と違って、炎の鎮魂歌は火力が控えめだ。こういった室内で相手を取り囲むのに向いている。炎の中で、絶望に満ちた表情を浮かべるマティアス殿下。その今にも泣きだしそうな瞳が未来視と被る。
「――エディット、今更言うのもなんだが、魔力量なんて関係なしに、初めて会った時から君が好きだった。一目惚れだった。ライラの媚薬が解けた時に初めに思い浮かんだのも君の横顔だ。ただ君は私には崇高過ぎた。いつの頃からか、君から逃げることしかできなかった私を許して欲しい。……でもどうせ死ぬのなら君と一緒がいい。」
「……えっ?」
「マーギア・ルプトゥーラ。――自爆。」
「まずい!!」
マティアス殿下からとてつもないエネルギーが溢れ出す。リアスが私を庇うように抱き寄せ、防御魔法を全力で展開した。フィーラの皇族としては魔力が少ないとはいえ、それでも皇子だ。激しい魔力の衝撃波が防御魔法越しに伝わってくる。これに耐えても、ここは閉鎖空間だ。がれきの中に生き埋めになる可能性がある。頑健な要塞の天井が吹き飛んだ。私は一か八か、一番信頼できる相棒を呼び出した。
「ドラコ・グラキアーリス!!――来たれ氷龍。」
その瞬間、衝撃波が防御魔法を貫通し、私はそのまま気を失った。
大きな鉄の扉は、リアスの詠唱と共に溶け落ちた。
「何者だ!」
中には知った顔が何人か。学生時代、マティアス殿下取り巻きだった悪友もいた。側近たちが、魔法で応戦しようとしたのを奥にいたマティアス殿下が止めた。
「――トヴォー王国、第三王子エリアス殿下。随分と乱暴な訪問じゃないか?フィーラ帝都貴族学院で学友だったからと言って、王族同士の対談はしっかり事前連絡をもらわないと。」
え、待って。マティアス殿下は『リアス・ベックマン』がエリアス殿下だということを知っていたの?
「反乱軍の首謀者として、国際手配されているのに、まだ皇室を語るのか。マティアス。」
リアスが冷笑を浮かべながら、答えた。
「隣にいるのはエディットだね。髪や瞳の色を変えれば、婚約者であった私にバレないとでも思ったかい?――君の死には不審な点が多かった。亡命も疑っていたが、やはり君が手引きしていたのか。エリアス殿下。」
「違います。リアスは関係ない。」
「ふふ。エディット。君の不死鳥で、どれほどの我が国の騎士が命を落としたか分かっているのかい?同じ学び舎で勉強した仲間もいるのにあんまりじゃないか?皇子の婚約者でありながら、他国の王族に機密情報を漏らし、亡命までして、『反乱軍』は君の方じゃないのか?」
「元はと言えば、お前がニオのスパイに骨抜きにされたのがいけないのだろう。」
リアスが私の前に立ち、吐き捨てるように言った。
「エディット、君たちの関係も学生時代からだろう?トヴォーの『スパイ』に骨抜きにされたのは君の方じゃないのか。」
「誤解です!私たちの関係はあなた方とは違います!ライラ嬢と子まで作ったあなたと一緒にしないで下さい。しかも自分が皇帝になるのに邪魔になったからといって、お腹の子ごと処刑するなんて。」
「あれの処刑を決めたのは私ではない。エディット、君がもっと凡庸でさえあれば、あんな女に現を抜かすことはなかった。――だが、勉強も、魔法も、いつも君の方が優れていた。」
マティアス殿下は苦虫をかみつぶすように言った。
「トヴォーは長く友好国のはずです。どうしてニオについたんですか?」
「――ランデル伯爵に言われた。トヴォーは歴史ある国だが、兵力ではニオやフィーラに大きく劣る。2対1で挟めば、必ず叩ける。長い二国間の友好関係がフィーラがトヴォーに攻め入らない理由だと。戦況が優勢ならば、皇帝はニオ側につく。そしてこの戦争の最大の功労者として皇太子の指名が確実になると。――その通りだと思った。」
「皮肉だな。結果、未来の皇帝の座を自分から手放すなんて。」
とどめを刺すように、リアスが言う。
「うるさい。お前が、お前たちさえ現れなければ、全て上手くいったんだ。」
「マティアス、君は昔から思慮が浅いんだ。虚栄心ばかりでその実がない。」
「貴様、だまれ。」
「話したいことはそれだけか?お前の首を取るまでがここでの私の仕事だ。」
リアスが静かに言った。マティアス殿下が吐き出すように言った。
「ふふ、そうはさせない。」
「この期に及んで、逃げる気か!レクイエム・イグニス!――炎の鎮魂歌。」
リアスの詠唱と共に、部屋を火炎が広がっていく。地獄の業火と違って、炎の鎮魂歌は火力が控えめだ。こういった室内で相手を取り囲むのに向いている。炎の中で、絶望に満ちた表情を浮かべるマティアス殿下。その今にも泣きだしそうな瞳が未来視と被る。
「――エディット、今更言うのもなんだが、魔力量なんて関係なしに、初めて会った時から君が好きだった。一目惚れだった。ライラの媚薬が解けた時に初めに思い浮かんだのも君の横顔だ。ただ君は私には崇高過ぎた。いつの頃からか、君から逃げることしかできなかった私を許して欲しい。……でもどうせ死ぬのなら君と一緒がいい。」
「……えっ?」
「マーギア・ルプトゥーラ。――自爆。」
「まずい!!」
マティアス殿下からとてつもないエネルギーが溢れ出す。リアスが私を庇うように抱き寄せ、防御魔法を全力で展開した。フィーラの皇族としては魔力が少ないとはいえ、それでも皇子だ。激しい魔力の衝撃波が防御魔法越しに伝わってくる。これに耐えても、ここは閉鎖空間だ。がれきの中に生き埋めになる可能性がある。頑健な要塞の天井が吹き飛んだ。私は一か八か、一番信頼できる相棒を呼び出した。
「ドラコ・グラキアーリス!!――来たれ氷龍。」
その瞬間、衝撃波が防御魔法を貫通し、私はそのまま気を失った。
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