年下のユニコーン獣人が私の婚活の邪魔をしていたって本当ですか?!

志熊みゅう

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第二章 求婚

13. 観劇

 観劇は舞台の演目に合わせて、黄色のドレスを選んだ。これはヒロインが最後、黄色のドレスを着て、獣人である恋人を待つシーンに因んでいる。耳元にはこの前もらったアメジストのイヤリングを付けた。

「黄色のドレス、ということは今日の舞台の予習は完璧ですね、さすがフロレンシア。ではお手を。」

「そうね、せっかく観に行くんだもの。事前にちゃんと原作くらい目を通すわ。」

 劇場には既に多くの人が集まっていた。私たちは、公爵家専用のボックスシートに腰を下ろした。

「うわあ、すごい。子爵家だとこういう席は座れないから、貴重な機会だわ。」

「フロレンシア、僕と結婚すれば、毎日だって来れますよ。」

 年甲斐もなくはしゃいでいると、ロレンシオは優しく私の肩を抱いた。

「ちょっと近いわよ。ロレンシオ。」

「大丈夫、誰も見てません。」

「――そういう問題じゃなくて。」

 事前にロレンシオが頼んでいたのか、シャンパンが給された。

「これ、この前フロレンシアがおいしいって言ってたモレノ産のシャンパンです。」

「うわあ、ありがとう。覚えていてくれたんだ。」

「ええ。フロレンシアのことなら覚えています、だいたい何でも。」

 そういって、にっこりと、ロレンシオが微笑んだ。

 席に用意されたオペラグラスを覗きこみながら、役者の演技に見入った。狼獣人の主人公が、番と恋人との間で揺れ動き、苦悩して悶絶する姿は、まさに迫真の演技だった。

 番同士が結ばれるのがいいと、自ら身を退いて田舎に移り住んでしまうヒロイン。それでも、彼女はずっと主人公の瞳の色である、黄色のドレスを身にまとい、彼との思い出を糧に生きていた。そして主人公は、最後そんな彼女と感動の再会を果たす。すっかり演技に感情移入して、ポロポロと涙をこぼした。

「フロレンシア、ハンカチをどうぞ。」

「あら気が利くのね。ありがとう。あの主人公も、最後まであのヒロインのことを……愛してたのね。例え番じゃなくても。最後に愛が実を結んでよかったわ。」

「――そういえば、フロレンシアは今まで心が揺さぶられるような恋愛ってしたことがありますか?」

「えっ?私は貴族令嬢だし、親が決めた相手を婚約者にしていただけだから、相手にそういう感情は持たないようにしていたわ。でも、一番初めの婚約者とは、一番長く婚約していたから、当時は好きだと思っていたわね。でも今思い返せば、彼も戦友って感じで、恋と呼べる代物ではなかったのかも。」

「じゃあ、まだ僕、フロレンシアの初恋の相手になれるんですね。」

 そう、ロレンシオが嬉しそうに無邪気に笑った。

「私の初恋?」

「うん。フロレンシアは僕の初恋の人だから。お互い初恋の人同士で結ばれたら素敵でしょ。」

「前から思っていたんだけど、番としての本能と恋愛感情って、もしかして違うの?」

「それは人によります。ほとんど一緒になっちゃってて、よく分からないって獣人も多いです。だけど、僕は獣人といっても血が薄いので、ちゃんと番感情と恋愛は別です。たまたま、大好きなフロレンシアが僕の番でよかったって思ってますけど。」

「へえ、別なんだ。」

「もしかして、僕が本能のままフロレンシアに求婚して、好きだって言っているとでも、思ってました?それよくある獣人への誤解なんですけど。番、番言いますけど、それが全てではないんです。」

 そう言われて、確かに彼のことを少し誤解していたかもしれないと思った。本能に縛られて、私のことを追いすがっている訳ではないらしい。そう言われて、不安や疑いがちょっぴりだけ和らいだ。
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