21 / 35
第二章 求婚
15. 本屋
しおりを挟む
翌日、私が経営している本屋に行くと、店長が頼んでいた本を用意しておいてくれた。テリソートの文化や番を紹介する本だ。こちらの人間が書いているので、もちろん私でもそのまま読める。
「店長、ありがとうね。」
「いえいえ、このくらいお安い御用です。」
店の奥の隠し部屋に籠り、早速内容を確認する。大体はロレンシオから聞いている話と同じだった。
――番は獣人特有の本能であること、血が薄ければ獣人としての本能も薄いこと、そして番は生涯ただ一人であること、番の存在は獣人とって空気や食べ物レベルに大事であること。
そして、テリソートで売られている媚薬は獣人が人間の番に飲ませるものではなく、人間側が獣人のために飲む薬だと書いてあった。――そうでないと、番の愛に応えられないから。
獣人が番を認識するメカニズムに、恋愛感情が関係しているのではないかという説もあった。ただ、獣人たちの多くが、もっと番を"神秘的な存在"として捕らえていて、神様に決められた運命の人、前世からつながりのある人なんていう話を本気で信じているんだそう。
「獣人たちって、案外ロマンチストなのね。」
そして人間には、番という本能がないから、番が人間だった獣人たちは、多くの葛藤を抱えながら生活しているともあった。あと、稀ではあるが、番以外のものに恋心を頂き、番を捨てる獣人もいると。――なるほど、昨日の劇の主人公みたいな人か。
ユニコーン獣人について、書かれた本も読んだ。多くは王族絡みの本だ。ユニコーン獣人は、割と血気盛んで獰猛な人が多いけど、番に対しては、甘えん坊で独占欲が強い人が多いらしい。そして、彼らに一番特徴的なのは"貞操"を大事にすること。例え、番であっても、番以外の相手と性交渉した相手を決して受け入れることができないそうだ。
よく思い返すと、子ども時代のロレンシオも、学生時代のロレンシオも会うたびに、さりげなく私の首筋の匂いを確認していた。なるほど、私が誰のものにもなっていないことを、あの子はずっと確認し続けていたのか。
その他にも、番を監禁して外に出さないなんて王子の話や、愛する番である王妃が捕虜になり、襲われたことに気を病み、王妃奪還後、一緒に心中したという王の逸話もあった。――王家絡みのエピソードを読むたびに、胸の奥に北風が吹いたように、肝が冷えた。
獣人が主人公の小説の何冊かは、家に持ち帰って読むことにした。獣人目線で書かれた小説は、獣人行動がどういう気持ちに基づいたものか勉強になる。大切な宝物をしまい込むように、誰にも触らせたくない、自分だけを見ていて欲しいという感情がやはり根底にあるようだ。人間だと、いくら愛し合った夫婦でも、段々と関係がドライなものに変わっていくのに、獣人たちはそれが生涯続いてくのだから、ちょっとびっくりしてしまう。
仮に、ロレンシオからの求婚を受けるとして、私は彼と同じだけの愛を返せるのだろうか?彼を思い続けることができるのだろうか。今までの婚約と違って、本当の意味での愛を求められているような気がした。
「店長、ありがとうね。」
「いえいえ、このくらいお安い御用です。」
店の奥の隠し部屋に籠り、早速内容を確認する。大体はロレンシオから聞いている話と同じだった。
――番は獣人特有の本能であること、血が薄ければ獣人としての本能も薄いこと、そして番は生涯ただ一人であること、番の存在は獣人とって空気や食べ物レベルに大事であること。
そして、テリソートで売られている媚薬は獣人が人間の番に飲ませるものではなく、人間側が獣人のために飲む薬だと書いてあった。――そうでないと、番の愛に応えられないから。
獣人が番を認識するメカニズムに、恋愛感情が関係しているのではないかという説もあった。ただ、獣人たちの多くが、もっと番を"神秘的な存在"として捕らえていて、神様に決められた運命の人、前世からつながりのある人なんていう話を本気で信じているんだそう。
「獣人たちって、案外ロマンチストなのね。」
そして人間には、番という本能がないから、番が人間だった獣人たちは、多くの葛藤を抱えながら生活しているともあった。あと、稀ではあるが、番以外のものに恋心を頂き、番を捨てる獣人もいると。――なるほど、昨日の劇の主人公みたいな人か。
ユニコーン獣人について、書かれた本も読んだ。多くは王族絡みの本だ。ユニコーン獣人は、割と血気盛んで獰猛な人が多いけど、番に対しては、甘えん坊で独占欲が強い人が多いらしい。そして、彼らに一番特徴的なのは"貞操"を大事にすること。例え、番であっても、番以外の相手と性交渉した相手を決して受け入れることができないそうだ。
よく思い返すと、子ども時代のロレンシオも、学生時代のロレンシオも会うたびに、さりげなく私の首筋の匂いを確認していた。なるほど、私が誰のものにもなっていないことを、あの子はずっと確認し続けていたのか。
その他にも、番を監禁して外に出さないなんて王子の話や、愛する番である王妃が捕虜になり、襲われたことに気を病み、王妃奪還後、一緒に心中したという王の逸話もあった。――王家絡みのエピソードを読むたびに、胸の奥に北風が吹いたように、肝が冷えた。
獣人が主人公の小説の何冊かは、家に持ち帰って読むことにした。獣人目線で書かれた小説は、獣人行動がどういう気持ちに基づいたものか勉強になる。大切な宝物をしまい込むように、誰にも触らせたくない、自分だけを見ていて欲しいという感情がやはり根底にあるようだ。人間だと、いくら愛し合った夫婦でも、段々と関係がドライなものに変わっていくのに、獣人たちはそれが生涯続いてくのだから、ちょっとびっくりしてしまう。
仮に、ロレンシオからの求婚を受けるとして、私は彼と同じだけの愛を返せるのだろうか?彼を思い続けることができるのだろうか。今までの婚約と違って、本当の意味での愛を求められているような気がした。
40
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―
鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。
泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。
まだ八歳。
それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。
並ぶのは、かわいい雑貨。
そして、かわいい魔法の雑貨。
お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、
冷めないティーカップ、
時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。
静かに広がる評判の裏で、
かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。
ざまぁは控えめ、日常はやさしく。
かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。
---
この文面は
✔ アルファポリス向け文字数
✔ 女子読者に刺さるワード配置
✔ ネタバレしすぎない
✔ ほのぼの感キープ
を全部満たしています。
次は
👉 タグ案
👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字)
どちらにしますか?
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる