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おかずさん

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舞い込んだラブレター

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 ――あれは、まさかの「告白状ラブレター」だった。

なのに、それが、教室にふわりと舞い込んできたのだ。
しかも、あろうことか……全部、同じ子あて。

しかも、その相手が──
「え、これ……俺様じゃね?」

 ――――――
 ――――
 ――

5月の風はちょっとくすぐったくて、気持ちがいい。

「今日はトラブルがなければいいけど……」

教室の窓から見える景色は、晴天だった。半分ほどしめたカーテンから、あたたかい日差しがさしこむ。

「明香里ちゃんっ!おはよう!!!」

急に声をかけられたと思って、顔を上げれば、クラスメイトの涼波真奈すずなみまなだ。とっても穏やかで、お人好し。誰にでも優しくて、みんなから好かれている。勉強熱心な一面もあって努力家。

真奈が隣の空いている席に座り、顔を覗き込んでくる。

「なにかあったの?……」

「……へ?」

心配そうに眉を下げる。私、そんなに落ち込んでいるように見えていたのだろうか。

「ううん、特に何も無いよ。」

「……ならいいんだけども。……あ!…ねえねえ!そういえば、明香里ちゃん、放送委員会に入ってるんだよね?」

突然何を言い出すのかと思えば、放送委員会のことを聞いてきた。確かに、私は放送委員会に、入会した。先生に頼まれたから。最初は不安だったけど、楽しいと思うようになれたのだ。後悔はしていない。

「入ってるけど……何かあったの?」

「う、ううん!なんでもないの!ごめんね!」

本当になんだったんだろうか。気になることでもあるのか。はたまた、真奈も入りたいのだろうか。

 ――――――
 ――――
 ――4時間目

「起立、礼!」

4時間目は国語。私の成績は、そこそこである。特別、悪いわけでもない。勉強は苦手じゃないが、自分からやりたいと思うほどでもない。国語は暗記が多いから、気力がわいてこないのである。どちらかと言えば、体を動かす方が好きだ。だから、昼休みの時間はたいていは外で遊んでいる。

教科書を開くときのパラパラという音に混じって、先生がきれいな字で黒板に文字を書いていく。説明を聞きながらも、少し開いた窓に目をやる。太陽の光が朝より落ち着き、ほどよく涼しくなった。
風がそよっとカーテンを揺らし、私の髪の先をくすぐった。そのとき、ふわりと何かが窓から入り込んできた。

(……ん?)

最初は、ただの紙切れかと思っていたのだ。でも、それは一枚じゃなかった。二枚、三枚……あっという間に、教室の空気が“ひらり”で埋まっていく。

「……紙?なんか、降ってきてない!?」

私のつぶやきに、クラス全体がざわめき始める。ガタガタと音を鳴らし、席を立ち始める人もいる。

「うわっ、なんの手紙!?」

「え、え、なにこれ!?」

「ぜんぶ、同じ文字書いてあるし!」

「ちょ!これ!ラブレターだ!!」

教室の中を、まるで折り鶴の群れみたいに、手紙たちが舞っていた。黒板の前にいた先生も、目をまんまるにして固まっている。

(な、なにこれ……まさか、新しい“事件”?)

 ――――――
 ――――
 ――
 
四時間目が終わるチャイムが鳴ると、私はすぐに立ち上がる。手紙の正体が気になるが、今はまず──放送室!

給食当番から配られるのを待ちながら、何となく教室を見回した。
……真奈の席が、いつの間にか空っぽになっているのを見て、少しだけ胸がざわついた。

(いつ出ていったのだろう…………。)

私は、給食を受け取ったあと、ダッシュで教室を飛び出した。足音が廊下に響いたが、今は怒られてる場合ではない。

(はやく3人にも、この手紙のこと伝えなきゃ……!)

放送室のドアが見えてくると、ガヤガヤと賑やかで、話しているような声が聞こえてきた。勢いよくドアを開けると──

「うわぁぁぁい!!今日のメシタイムやあ!!」

「ぐぅ……腹減ったっす……死ぬ……」

「ってお前ら!俺様が昨日の夜、次の放送で言うセリフを考えてきたって言ってるだろ!?………………聞けよな!!!?」

ああ……いつも通りの3バカがいる。

(よし、全員そろってるわね。……じゃあ、伝えるしかない!)

「ねぇ、ちょっと、聞いて! 窓の外から教室に、ラブレターが……舞い込んできたのよ!!」

そういった途端に、3人が一斉にこちらを見た。そしてすぐ、近くにいた渚くんが、興味津々といった、キラキラした目を向けてくる。
(か、顔がいい……。)

「俺様たちの出番……再来ってことだな!?」

「えっ、ええ……いや、待ってよ。あのさ……渚くんって、そういうの好きなの? なんか、毎回ノリノリっていうか……探偵とか、目指してるの……?」

前回のゴミ箱のときも、真っ先に走り出していた。なんというか、“事件”って聞くと、体が勝手に動いてる感じ。

「ん?別に、探偵ごっこをしたいわけじゃねぇよ……?」

渚くんは、きょとんとした顔で首をかしげた。

「なんつーか、不思議なことが起きたら、ほっとけないだけ。スッキリさせたいってだけだな。」

「え……じゃあ、“解決”が好きってことなの?」

「うーん……っていうより、”オチが気になる話”って感じ。途中で止めるの、モヤモヤすんだよな。1度ふれたら、最後まで見たいじゃん?」

「……ドラマの録画途中で切れてたら気になる、みたいな?」

「おう、それだ!」

私は思わず笑ってしまった。なんだ……探偵気取りとかじゃないんだ。
ただただ、“気になっちゃうバカ”なんだ、この人。

「せやせや、なぎは小さいころからそうやねん!なぁんかきになると、とりあえず走りだすんやで!!」

「たまに途中で行先を忘れて帰ってこようとしたら、迷子になったっぽいっすけど。」

どんだけ、方向音痴なんだろうか。ここまでくると、もはや呆れてくる。救いようがない。ゴミ箱消失のときに見捨てられていたのも納得がいく。
(今度から探しに行くの……やめようかな…………。)

「……っな!…………それ言うなよ!」

放送室がワチャワチャとにぎやかになる。
 
(あれ……なにか忘れているきがしないでもない……。)

「……って私は、なんの話をしに来たんだっけ………………。」

「お前なぁ……ラブレターが教室に舞い込んできたんじゃなかったのかよ?自分で言いに来て忘れてんじゃねえよ……。」

「ごもっともです……。」

正論をいわれ、少し反省する。となりで静かにしていた雨晴くんが、また元気にはしゃぎだす。

「空から降ってくるなんてロマンチックやな!!……しっかも、ラブレターやなんてなぁ!!!」
 
どうして、突然、ふってきたのか。全てがよく分からないのである。誰かが間違えて屋上からでも落としたのだろうか。でも、わざわざ大量のラブレターを作り落とす必要があるのか。不思議な点が山ほどある。

「そういや、明香里さん。ラブレターが舞い込んできたんすよね?拾ったんすか?」

「ぁ……ごめん。拾ってないわね……。」

(ああ!……やらかした!)

拾っておけば良かった……。でも誰かが書いたものを勝手に持ち去ることは出来なかったのだ。盗みを働きたくは無い。心のこもったラブレターなら、なおさらだ。

「……ん~なら、職員室へ行こかぁ!!!先生なら1枚ぐらい持ってるかもしれへん!」

「奇跡的に…ゴミ箱に捨てられてるかもしれないっすね!」

私がやらかしたことを、見事にスルー。全然、気にもしていない様子だった。

(バカ……だからなのかな?)

「よし、じゃあ、出発だ!行くぞ!」

「……って、ダメっすよ!なぎ先頭は禁止っすよ!?!?」

 ――――――
 ――――
 ――校舎内 2階 廊下
 
「しゃあぁぼんだまぁ、飛んだ~♪屋根まで、飛んだ~♪」

「おい、雨晴、なんで今“しゃぼん玉”なんだよ。」

「え?なんとなくや!……ほら、紙がふわふわ舞ったし、イメージぴったりやろ!?」

「いや、手紙っすよ!?しゃぼん玉じゃないっすね!」

「でも、飛んでったし……消えたし……切ないし……ピッタリやろ?」

「いや急にエモくすんなよ!?それっぽく感じてくるじゃねぇか、ばかやろう!」

「じゃあ今度は俺が歌うっす!あ〇ぱんまーん、新しい手紙よ~!」

「いや、"顔"じゃねぇし!“手紙”で勝手に言葉を変えるなよ!!?……ていうかそのワードを出すな!歌でもねぇぞ!!!?」

「……なぎ……少しうるさいっすよー?廊下は静かに歩けって言われちゃうっす。」

「どの口が言ってんのよ!?あなたたちが一番騒がしいわよ!!」

(……このメンバー、やっぱり騒がしい。ていうか、目的忘れてない!?)

 ――――――
 ――――
 ――職員室前

「……っし、到着!」

渚くんがドアの前でピタッと止まる。さっきまで替え歌で大騒ぎしてたくせに、こういうときだけ急に静かになるの、ずるい。

「これ、誰が入るんすか?俺っすか?え、マジすか。さっきの歌のくだり、バレてないといいっすけど……バレてたら生きてけないっす……」

「大丈夫だろ。ビビってんじゃねー。ほら行くぞ!」

「って、あっちょっと待っ……!」

(こういう時だけ団結力すごい……!)

ドアを開ける音が、私の心拍数に重なる。失くした手紙、見つかりますように──。

─コンコン

「失礼するっす。5年2組の宇敷裕太です。……降ってきた手紙、残ってないっすか?」

(色々と語彙力がない気がするけど……気のせいだろうか。)

「手紙……?もしかして、大量に降ってきた手紙のことかな?…………それなら、ここに1枚あるよ。はいどうぞ。」

近くに座っていた女の先生から、手紙を受け取り、お礼を言って職員室を出た。

(……奇跡的にもらえてよかった。)

正直、私は断られるだろうと思っていたのだ。急に、手紙をくれと言われたあげく、その相手が生徒。しかも、私たちがその手紙をどうして欲しいのか……普通なら聞いてくるだろうと思ったからだ。だけど、案外、先生は何も言わず手紙を1枚くれた。

(よほど……運が良かったのね…………3バカ。)

「……にしても、誰宛なんやろな?おばけとかなんか?ああ、ダメや……怖いわあ(泣)」

「おいおい……泣くなよ。相変わらず、ほんとに泣き虫だな。おばけではないだろ。」

少しあやすように渚くんがそう言う。お化けじゃないのは確かである。泣いている雨晴くんをよそに手紙を封筒から丁寧に取り出す。手紙の文章をしばらく見つめたあと、渚くんが静かにつぶやく。

「え、これ……俺様じゃね?」

「「「ええええ!?」」」

私たちの大きな声が、廊下にひびきわたる。渚くん宛のものが大量に舞っていたのか。

「……差出人は書いてないっすね。」

裕太くんラブレターをひょいっと持ち上げながら首をかしげる。
その瞬間、隣で雨晴くんが「にやり」と笑った。

「なぎぃ……まさかやけど……うらでファンクラブ作ってたんとちゃう?」

「はぁ!?なんで俺様がそんなことするんだよ!」

「自分で書いて、自分でばらまいてるという……高度な恋愛テロっすね。」

「しねぇよ!ばかやろー!!」

裕太くんが、のんびりとラブレターを見つめながら、つぶやく。

「でも……名前書いてないっすもん…………あっ……もしかして、なぎ、忘れてたとかっすかね……?」

「なにをだよ……!?俺様、ラブレターコレクションしてんのかよ!?!?」

「……っていうか、ラブレターの内容は?なんて書いてあるの?」

しばらく黙って3人の様子を見ていたが、どうにも終わりそうにない。しびれを切らした私は中身が気になりすぎて、さいそくするように言った。

「じゃあ、読み上げるっすよー。なになに……?」

 『あなたをずっと見ていました。どんなときも、そっと。だけどもう黙っていられません。───今度、校舎裏で、待っています。』

「わぁあ!なんか、いやや!……めっちゃ意味深やんな………………怖い怖い…。」

雨晴くんがまた泣き出しながら、その場をぐるぐると回り絶叫する。

「ね、ねぇ!これって……ほんとうに告白の手紙なの!?」

私は少し赤面した。
(ラブレターってこういうのなの!?……なんか怖いくらいに詩的というか…………)

「……ちょっとホラーっぽく感じるっす。ここの文、見て欲しいっす。”ずっと見てました”ってどこから……」

それを聞いた瞬間、背筋が凍るようにゾッとした。差出人が分からないのもあり、余計に怖さを増しているのだ。

「……ファンクラブ説やなくて、ストーカー説やないか!!!!」

「こ、怖いっす……怖すぎるっす……」

「……俺様……監視されてるのか?……」

渚くんが、横で頭を抱えた。珍しく、弱気……というか心当たりが無さそうだ。完全に動揺している。

「な、なぁ……明香里……このまま俺様、校舎裏に行ったら呪われたりしないよな…?」

「し、知らないわよ……。」

もう誰が冷静なのか分からない。なにこの空気。告白なのかホラーなのか。ラブレターなのか怨念なのか。ぐっちゃぐちゃである。

(どっちにしろ……こんな手紙が、なんで大量にばらまかれてるのよ……!?!?)

 ――――――
 ――――
 ――
 
結局、今日の放課後、渚くんは校舎裏に行くことにしたのだった。
そこで、私は校舎裏へ行く前に水筒を取りに教室へ戻った。
扉を開けると、教室にはまだ数人が残っていて、その中に真奈の姿もあった。

「あかりちゃん、今日も放送?」

「うん、ちょっと用があって……」

「ふふ、なんだか最近、楽しそうだね」

「え? そ、そうかな?」

真奈は窓のほうをちらりと見ながら、笑った。

「……今日のこと、誰がやったんだろうね。手紙。けっこう、大変だったんじゃないかな。」

「た、大変……? そ、そうかもしれないわね……」

私は返事を濁した。
どうしてだろう、真奈の声はいつもと同じ優しさなのに、どこか、その言葉の奥に何かがにじんでいる気がするのだ。

「じゃあね、明香里ちゃん。頑張ってね」

「うん、ありがとう」

背中越しに手を振る真奈は、やっぱりいつも通りだった──はずなのに。

(……なんだろう、この感じ……いや、考えすぎか。)

私は軽く首をふり、水筒を手に取った。

そのとき、ふと窓の外を見ると、校庭の奥、木々の影に続く道がちらりと見えた。
そこは、校舎裏へとつながる通路。

(……渚くん、大丈夫なのかな)

あのラブレターのことを思い出す。差出人もわからない、不気味なまでに整った文字。

そして、”待っています”というあの結びの言葉。

少しだけもやもやした気持ちを胸に、放送室へと戻るため歩き出す。
そのとき──

「おい、明香里ー!こっちは準備できたぞー!」

廊下の先から、渚くんの声が聞こえた。

(……行くしかない)

私はぎゅっと手を握りしめて、声のほうへと足を早めた。

 ――――――
 ――――
 ――放課後

一度、みんなと合流するため、放送室前に集まった。雨晴くんは、怖がっていたらしい。ギリギリまで駄々をこねていたが、渚くんになにかと説得されたのだとか。

「そういえば、時間指定がないっすね。」

裕太くんに言われて、手紙の内容を思い返してみる。確かに、場所の指定だけであった。放課後とだけだったから、細かい時間指定はないらしい。

「……なぁ……ほんとにワイも行かな、あかんのお……?」

さきほどから、ずっと大粒の涙をポロポロと流している雨晴くん。よほど怖いらしい。

(…………雨晴くん見てたら私まで少し緊張してきた。)

「大丈夫だ!雨晴!何かあれば、守ってやるぜ。任せろ!」

「えー俺のことも守ってほしいっす。」

また騒がしくなろうとしていたので、そうなる前に声を出した。
  
「ほら!行くよ!」

 ――校舎裏

「俺らは隠れるっすね。ファイトっす!」

私たちは、校舎裏の隅の方の見えにくい場所へと移動した。
一体誰だったんだろう……気になっていたものが、これで分かるのだ。楽しみな気持ちもありつつ、怖さもあった。

やがて、誰かの足音が静かに近づいてくる。

(……来た)

現れたのは──涼波真奈だった。
可愛いワンピースをぎゅっと握って、目線を落としたまま立ち止まる。

「……来てくれて、ありがとう」

渚くんは、少し驚いたように瞬きをしたあと、腕を組んで一歩前に出る。

「……あの手紙、真奈……お前が?」

真奈は、コクンとうなずいた。

「ごめんね……びっくりさせちゃったよね。別に、怖がらせたくてやったわけじゃないの。ただ……どうしても、気持ちが言えなくて……」

「気持ち?」

「……かっこいいなって、前から思ってた。みんなは笑ってるけど、渚くんって、どんな時も本気で。どこかにまっすぐで……そういうの、ずるいくらいかっこよくて」

「……」

「でも、恥ずかしくて、直接言えなかった。……同じものを……たくさん家で書いてきたの……。そして、誰にもバレないように、屋上からこっそり手紙をまいた。風に乗れば、どこかに消えてくれると思ってたのに……まさか、あんなふうに教室に入っちゃうなんて……!」

真奈の声は震えていたけれど、その瞳はまっすぐで。
真剣に聞いていた、渚くんの口が開く。

「……俺様はさ、そんなにかっこよくないぞ。むしろ、バカだってよく言われるし……今日だって、手紙にビビってたんだぜ?」

「…うん…知ってるよ……気になって影から見てたもの。でも、そういうところも含めて……好きだなって思ったんだよ。」

風が少し吹いて、ふたりの髪を揺らした。
しばらく沈黙が続いたあと、渚くんが少しだけ照れくさそうに笑った。

「……ありがとう。正直、驚いたけどさ。──その気持ち、ちゃんと受け取ったよ。でも、俺様……よく分かんねぇんだ。とりあえずは、ありがとう。」

「……うん」

そう言って、ふたりはしばらく見つめ合っていた。
私たちが息をひそめて隠れていた場所まで、ほんのり甘い空気が流れてくる。

……って、

「ごめん!!もう限界!!出ていい!?」

「明香里ちゃん、ダメっすよ!声がでか──」

「もうええんやない!?、終わったみたいやしな!!…途中から話聞いてたら、怖くなくなったわあ!!!」

我慢できずに、私たちがぞろぞろと物陰から飛び出す。

「えっ……ちょ、ちょっと待って!?聞いてたの!?」

真奈が顔を真っ赤にして叫ぶ。
渚くんが頭をかきながら、みんなを見渡した。

「……ふぅ。これで、やっと全部、知ることができたな。」

「……まさかの犯人、真奈さんって……すごいオチだったっす……。」

「いや~……恋の力には敵わんわあ!…」

「全貌が明らかになったってことね!」

(まさか、こんな終わり方になるなんて──)

私は、少しだけくすぐったい気持ちで、ふわっと笑った。
 
そういえば……
「渚くんは、真奈と知り合いなの?」

対面したときに、”真奈”と最初から名前を呼んでいた。5年生のクラスは3クラスあるが、クラスは同じじゃないはずだ。

ちなみに、私と真奈は5年1組で、裕太くんは2組、渚くんと雨晴くんは3組なのである。

「まあ……去年は俺様と同じクラスだったからな。遠足のときも、少しだけなら話したことあるぜ。」

「そうだったんだねー!」

やっと納得がいった。

そんな横で裕太くんがじーっと渚くんの背中を見つめて、ぼそっとつぶやいた。

「……いや、この男のどこがいいのか、本当に分からないっす。」

「なっ……!?お前、それ本人の前で言うか!?」

渚くんが振り返って怒ると、雨晴くんがにやにやしながら口を挟んでくる。

「まぁまぁええやんか!!!……たぶん、顔やろ!!!」

「おいこら!フォローになってねぇからな!?」

「ちがうっすよ!たぶん……アホっぽいとこが、守ってあげたくなるんっす!」

「誰がアホだって!?おい、ゆぅぅう!!」
※ゆう→裕太

(……うん、うるさい。いつも通りの3バカだった。)

わちゃわちゃと騒ぎ続ける3人をよそに、私はそっと、真奈の隣に立った。

「……大丈夫?」

真奈は少しうつむいて、小さく息を吐いた。

「……うん。ごめんね、あんなことになっちゃって。」

「ううん、怒ってなんかないよ。びっくりはしたけど。」

そう言うと、真奈は小さく笑った。でもその笑みには、ほんの少しだけ、涙のにじみが混ざっていた。

「なんか……普通に渡すのが恥ずかしくて……。誰にも知られずに、そっと届けばいいなって思ってたの。」

「……そっか。でも、そっとは……なってなかったよね。」

「だよねー……(苦笑)」

二人でふふっと笑い合う。教室中に舞った手紙。渚宛の大量のラブレター。全部、真奈の、ほんの小さな勇気の結果だった。

「でも、真奈の勇気は誰も責めたりしないからね。」

私がそう言うと、真奈はきゅっと拳をにぎって、頷いた。

「うん……ありがとう、明香里ちゃん。」

どこか少しだけ大人になったような顔で、真奈が微笑んだ。

(こうして今日の放送委員会は、また、ひとつの“出来事”を見届けたわけだけど──)

わけのわからないテンションで、ぐるぐる回ったり笑い転げたりしてる3人を見て、私はとうとうキレた。

「……いつまで騒いでるのよ!!??」

バンッと足を踏みならして叫ぶと、3人がピタッと静止した。

私は3バカをにらみつけて、一言。

「はっきり言うけど……手紙よりもあなたたちの存在の方がよっぽどインパクトあるからね!!」

「「「……うまいっ!!!」」」

3人の声がそろって上がる。なぜか拍手も起こる。

(なんで私が笑わせなきゃいけないのよ……)

げんなりした気持ちでいると、突然、裕太くんが思い出したように言う。

「そういえば……手紙を職員室で先生から貰ったっすよね?解決したんで言いに行きましょ!」

「あー……確かに貰ったな。それいいな、行くか。」

 ――――――
 ――――
 ――職員室

真奈もいるのか、流石に歌わなかったが、それでもやかましいやり取りは着くまで続いていたのだった。

─コンコン

「失礼するで!5年3組の笠木雨晴ですぅ!さきほど、ゆーくんが手紙もろたんでお礼を言いにきました!」

「あら、お疲れ様ね。解決したのかしら?」

「無事に解決しましたっす!!」

「それは良かったわね!!」

手紙をくれた先生は嬉しそうだった。そこで私は、あの時、疑問に思っていたことを思い出し、聞いてみることにした。 

「そういえば……先生。あのとき、すんなり私たちに手紙をくれたのは何か理由でもありますか?」

私が質問を先生にぶつけると。一瞬、サッと真剣な顔つきになったものの、すぐに笑顔へと戻る。

「……君たちに渡したら、理由が分かるんじゃないかとは思っていたの。変に考えさせてしまっていたならごめんなさいね?」

「いえ!大丈夫です!ありがとうございました。」

私の中の疑問が解けて、スッキリとした気分になった。 
 
 ――――――
 ――――
 ――翌日

お昼の放送で、真奈の許可を得て、渚がメインで流すこととなった。

「みなさん、こんにちは。実は昨日、ラブレターが教室に舞い込んだ出来事があったのをご存知か?俺宛のラブレターだったんだぜ!……最初は差出人が分からなかったが……本人から気持ちを聞いた時は、嬉しかったぜ!!ありがとな!!!小さな勇気が、空から降ってくるって……ロマンチックだったな。」

給食を放送室で食べながら、生き生きとした顔で放送を流す渚くんを見つめる。
明るくて、目が合うと、かっこいいなって錯覚するほどで。でも、我に返るとバカな姿ばっかりで……私からすればなんとも言えない。

「それなっす!!──でも、俺、この男のどこが良かったのか、未だに分かんないっすけどね!!!」

「うるせぇな!お前の見る目が無さすぎるだけだろ!!」

「喧嘩せんといてなぁ???」

「少しは……静かにしなさいよね……全くもう。」

今日も、3バカは絶好調である。

(いつまで……続くのやら……ほんと……あきれるわね…………。)

 ――――――
 ――――
 ――
 
─『舞い込むラブレター事件』、解決!

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#校内SNS放送委員会 #渚はかっこいいのか? #犯人は可愛い乙女
 
fin.

 

 
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