狼(♂)ですが…狐(♂)に婿入りしました。

スメラギ

文字の大きさ
1 / 35

1.始まり

しおりを挟む
 
 寿美田すみだ 幸春ゆきはる、年齢35歳、社畜の独身男性だった…

 どうなったかの記憶はほとんどないが、意識が飛ぶ前、うっすらと覚えているのは悲鳴と救急車の警告灯のみだった…



 目を開ければ、見慣れぬ天井が目に入る。身体に多少の違和感はあるものの、身体の痛みはなく、健康そうなので安心した。
 そして、声を出そうとしてビビったね。「あ~」やら「う~」やらしか出ないんだ。
 しかも、可愛らしいお声…
 訳がわからず、手を伸ばすと―…見知った自分の手とは程遠い綺麗できめ細かい色白な手…赤ちゃん特有のムッチリした手が眼前にさらされる。

 そこで漸く自分が小さくなっている事に気づく…
 状況を整理しようと顔を振ると、横には小さい男の子…人間だと思いきや、違った。
 頭に獣の耳が生えており、見慣れぬソレに状況を飲み込めず、「まさか」と思い、恐る恐る自分の頭に手を伸ばすと、ふさふさした小さめのソレの感触…訳がわからずギャン泣きして熱を出し、今の両親を困らせたものだ…

 ちなみに横に居た男の子は俺の双子の兄だった。しかも、耳だけではなく尻尾もあったけど、その他は人間の造りと一緒だった。
 この姿は人獣化というらしい。普通はこの姿で生活するが、獣化もできるようになるんだとか…後で確認した…

 まぁ、確認したと言っても、『こちらは双子の兄であるフェルノ様ですよ~ウィル様。』やら『この人獣化のお姿も大変お美しいですが、獣化も大変お美しいのでしょうね』なんて世話係たちが、うっとりとして話していたのを聞いただけなんだけど…

 ……それはさておき、この世界…地球に似てはいるが、違うところも沢山ある。
 俺が生まれ変わったであろうこの世界には男しか・・・居ないという女性を知っている身としては拷問に近い世界だった。

 言葉に語弊があった。俺は無節操ではないぞ!女を取っ替え引っ替えなんてしてなかったしな!
 一途だったと自負している!まぁ、それが仇になったんだけどな!

 高校の時に付き合った彼女がいて、結婚も約束して、大学を卒業後、漸く婚約する事ができて…
 「あぁ、やっとだ…」と思っていた矢先の式前夜に彼女の浮気が発覚…そして、修羅場になったんだ…
 しかも、数人彼氏が居たという驚愕のおまけ付き…
 泣きながら土下座まで披露してくれた…
 慰謝料などいろいろなものを彼女の実家が立て替える事となった。拒否権なんて無かったけど…
 もちろん俺の両親や兄も激怒…俺もキレた。
 人生で初めてキレて、その後泣いた気がする…
 彼女の実家が経営する会社との契約も取り消し…
 彼女両親の顔は真っ青、大激怒に彼女に平手打ち彼女は大泣き…
 正式に弁護士を立てて相手方にも慰謝料請求…
 既婚者にまで手を出していたのにはドン引きした。

 結構な修羅場だったと思う。まぁ、両親の対応が早すぎて殆んど出る幕なんて無かったわけだが…

 もう、それから『女恐怖症』になって、『仕事が恋人』って感じで、ただの社畜になったんだけど…
 ま、俺は次男だったから重役止まりではあったが―…しっかりと兄を支えていたとは思う…いや、そう思いたい…

 前世の記憶として残ってる嫌な事まで思い出したわ…



 ………話がズレたな、話を戻そう…
 俺の両親も、もちろん男…ちなみにどちらも美男だった…
 容姿の偏差値、すげぇな。と思ったのが第一印象だ…

 話が逸れてしまったが、どう子どもを成すのかと言えば…
 『婚礼こんれい』なるものを執り行い、『ちぎりのさかずき』なるものを交わし、お互いに飲む。

 順番は種付する孕ませる側から飲み、次に種付される孕む側が飲む。
 すると『つがい』なるものになる。
 めでたく伴侶はんりょとなるわけだ…

 嫁いできた側で『婚礼こんれい』に望んだつがいは子を孕む事ができる身体に変化するらしい…

 不思議な現象だと思う。無理に理解しようとするだけムダだと思うから―…そういうもの・・・・・・だと思う事にしている。
 
 はっきり言おう…種付なんてされたくないぞ!俺は!

 話を戻すと、この世界には多種族が生きているようで、『族』というものがある。
 ちなみに俺は本家筋とやらの『狼族』に生まれ、『狼族』に属しているようだ。

 両親ともに純粋な狼の血である…
 分家筋は片方が別の『族』の者を娶る事が多い。

 本家筋は極少数に存在する『狼の血』しか入っていない純血の者同士が『婚礼こんれい』により伴侶はんりょとなる。

 分家筋の事で付け足すなら、こちらは数も多い。
 混血とも言われている…

 例をあげるならば、『分家の狼族』から『分家の猫族』へ嫁いで行った場合には『猫の子ども』しか生まれない。

 逆に『分家の猫族』が『分家の狼族』に嫁いできた場合には『狼の子ども』しか生まれない。という事があげられる。
 例外はない…

 人間は居るといえば居る…極少数しか人間は居らず『人間族』と呼ばれている。
 俺の属している『狼族』や『犬族』やら『猫族』、『兎族』など他にもいろいろと『族』は存在しているが、面倒なので割愛しておく。
 人口としては、どこかの『族』の生まれの奴が多いという感じだ。

 ちなみに人間族はレアではある…ある意味な…
 『婚礼こんれい』を行わなくても孕む事ができるので、愛人もしくはペットとして迎え入れられる事が多い。

 ちなみに 『族』の社会には優先順位ランクがあり、頂点に立つのが『ライオン族』である。次に『狼族』など肉食系の『族』が上位を占めている。
 肉食系の下には草食系の種族がおり、察しの通り、『人間族』は一番下…最下位だ。

 生まれてこの方、『人間族』を見たことがない。

 『人間族』はおいといて、日常の生活といえば、元いた世界…生まれ変わる前…前世とでも言うのか…
 それと殆んど同じなので、全く困らなかった。勉強もかなりランクが下がっている。
 ゆとり教育のゆとり教育と言った感じで覚える範囲も狭い…
 これでよく経済が回ってんな!と思った事も記憶に新しい…

 家庭教師が出した問題を普通に解いて『神童』扱いされたのはびっくりした…
 生きてきた中で1番の痛恨のミスと言っても過言ではなかった…

 それはそうだろう…俺には同い年の兄が居る。
 弟が褒め称えられるのを恨めしそうに見つめる兄…
 皆は気づいていなかったが、俺にはダイレクトに伝わった兄の心情…

 故に兄弟仲は、それほどよろしくない…

 「『狼族』を率いるのはウィル様かもしれませんね。」なんて言われたことも数知れず…
 その都度、「止めてくれ」と心の中で言ったものだ…

 言葉に出すと、皆、息を飲む…経験済みだ。
 普通に会話も出来ない…それほどまでに俺の顔がヤバいのだと言えよう…

 舌打ちしそうな勢いで眉間に皺を寄せると、皆、息を飲み、涙を溜める…そして、俯いて震えながら俺に謝ると、足早に去るのだ…
 典型的なボッチとは俺の事を言うのだろうな…

 あ、今さらだけど、ウィルとは俺の今の名前…ちなみに姓は無い。

 家の者以外からは『〇〇族』の〇〇と表現されるのが当たり前だ。
 付け足すなら、本家純血の〇〇みたいな表現もされる時がある。分家なら混血と表現される…

 俺の事なら『本家純血のウィル』、『狼族のウィル』と呼ぶ。

 俺はこのまま、兄弟間の問題を抱えて、ボッチのまま生きていくのだと思っていた…あの日までは…

 出会いはそう、あの日記帳と呼べるのか分からないが、ヤバい手帳を拾った中学2年の春だった…



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました

すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。 第二話「兄と呼べない理由」 セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。 第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。 躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。 そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。 第四話「誘惑」 セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。 愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。 第五話「月夜の口づけ」 セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。

処理中です...