最強の元令嬢、冒険者になる~婚約破棄されたので国を出ます~

影茸

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元令嬢、名門貴族に絡まれる

 テミスがラミスの言葉に機嫌を損ねるというハプニングがあったものの、最終的にテミスはラミスに同行することとなった。
 そして執事を仲間に入れたことで、一悶着ありつつも携帯食、ある程度の着替え、両親の形見のペンダントなどなどの準備は順調に整っていていく。

 「どうしましょう……」

 だが殆ど準備が出来た、そのタイミングでラミスが呟やいた言葉により作業は難航し始めた。
 それから1時間、元寡兵達は全て与えられた報酬を手にマートライト家を去り、

 「まじか……」

 愛剣だけを残され、鎧まで持っていかれた兄が真っ白に燃え尽きているのを無視して進められた失せ物探しはとうとう身を結んだ。

 「ラミス様!見つけましたよ!」

 何とか探していたものを見つけたテミスの疲れた声が屋敷に響いた。
 テミスが手にしているもの、それは上質な封筒に包まれた手紙。
 紙であるその失せ物は何処にでも入り込むので、ラミスの全く何処にやったか心当たりがないという一言により、屋敷中を探し回ることとなった。
 そして最終手に何とか手紙を見つけた服に挟まっているかもしれないとラミスの下着まで探させられたテミスは肉体的だけでは無く、精神的にも憔悴した状態でラミスにその手紙を渡した。
 
 「……ありがとう」

 ついでにラミスは逆に散らかして行くので見学させられていたりする。
 
 「あぁ!やっと見つけられた……」

 何とかラミスに手紙を渡したテミスはその途端床に倒れこむ。
 そして倒れ込んだ部下の無言の責めるような視線にラミスは身体を震わせる。

 「ごめんなさいテミス……まさかこんなに探すのにかかるとは思わなくて……でも本当に大事なものだったのよ!」

 そこで今までの様子から一変ラミスは自信満々な、まるで褒めてもらうのを待っている犬が幻視出来そうな様子で胸を張る。

 「実はこれ、数年前にその当時の冒険者のギルド長から貰ったギルドで見せればS級冒険者になれる、仮の認定書なんです!」

 「っ!」

 S級冒険者、それは世界的な知名度を誇る冒険者の最終目標。
 S級冒険者は危険な仕事を行いので死んでいるのか、それとも未だ仕事をしているのか正確な情報は分からないが、現在多くても数人程度しかいないと言われている。
 ラミスも軍事方面に関しては絶大な知名度を誇っているが、それでもS級冒険者とは比べ物にはならない。
 唯一軍事方面では勝っているかもしれないが、その他ではS級冒険者には全く及ばない。
 そしてその名声に相応しいだけの実力をS級冒険者達はそれぞれ誇っており、そのS級冒険者に冒険者ギルドのNo. 1であるギルド長に認められるというのは相当なことがなければあり得ない。
 
 「ラミス様……」

 「ん、何ですか?遠慮しなくていいんですよ!」

 それらのことを一瞬で理解したテミスは褒めて褒めてというようにこちらを見てくるラミス様に、

 「なんて物なくしてんですかぁ!」

 「っ!ごめんなさい!」

 ………全力で怒鳴ることとなった。



 
 ◇◆◇



 
 準備中の想定外の出来事として、テミスによる説教が入ったことにより封筒を見つけてからさらに1時間程度過ぎて真っ暗な中旅立つこととなった。
 つまり真夜中にでることになったのだが、それに関しては2人とも体力的には問題はない。
 別に今から戦争に行く訳でも、依頼をこなす訳でもなく、徹夜しても町に着けば休めると考えている2人は徹夜で町に行くことを悩むまでもなく決めた。

 だが、ラミスの方はテミスに怒られたことにしょんぼりしており、テミスはテミスで探し物の疲れが未だ取れていなかった。
 
 ……そうして明らかに肉体的にはともかく、精神的には明らかに旅立ちに相応しくない状態で2人は旅立つこととなった。
 そしてそのままのどんよりとした空気のまま歩き出していた2人だが、突然2人の目に警戒の色が宿る。
 
 「テミス!」
 
 「はい!」

 2人はそれぞれの武器を取り出し前に構える。 
 
 「やはり気づかれてしまいましたか。流石マートライト家」

 そして次の瞬間現れたのは恰幅のいいもう老人といってもいいような男だった。
 だがその男の目にはギラギラとした欲望が宿り、その視線が無遠慮にラミスの豊かな身体へと注がれる。

 「貴様!」

 その男の視線に気づいたテミスは激昂してそう叫び飛び出そうとする。

 「待ちなさいテミス」

 「っ!ですが!」

 だが、その動きを男の無遠慮な視線に晒されたラミスが止める。
 その主人の行動にテミスは不満を隠さない表情でラミスを見上げるが、ラミスはその視線を無視して目の前に現れた男へと毅然とした声を上げた。

 「何のつもりでしょう。ゴリオール様」

 その声には若干の殺気が込められていたが、しかしその男、ゴリオール・ストラボンは一切動じることはなかった。

 「いえいえ、少しお願いに来ただけですよ」

 殺気に晒されながらも、そう笑いながら告げるゴリオールの姿にラミスは伊達に古参の貴族としてやっていないかと唇を噛みしめる。
 
 「これだけの兵で私達を囲みながら、ですか?」

 そして次の瞬間、ラミスは今までの丁寧な雰囲気をか殴り捨て、怒気を滲ませた声でそう尋ねた。
 
 「おやおや、気づいておられましたか……念には念を入れて魔術師に隠密の技をかけて貰っていたのですが……」

 だが、ゴリオールはそのラミスの怒気に触れながらもその笑いを止めることはなかった。
 ただ薄笑いを顔に貼り付けたまま片手を上げる。

 ーーー 次の瞬間、ラミス達を囲むように兵士達が現れた。

 「ですが私は決して嘘など言ってませんよ」

 そして、その兵士の丁度中心に立ちながらゴリオール、名門ストラボン家の当主は欲望を目に浮かべながらラミスへとそのギョロリとした目を向ける。

 「私がするのはただのお願いですから」
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