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1.王宮への帰還
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「ぅぁ、」
顔に当たる酷く眩しい日差しに私は目覚めた。
私、アンネ・ハートラールはその眩しさに手で光を遮りながら目を開く。
窓から見える空は雲ひとつない快晴で、だがその普段なら心踊る天気も今は私の憂鬱を晴らすことはなかった。
「あんな夢を見るなんて、相当私堪えているのかなぁ……」
そして私はそのことにため息を漏らしながら、未だ頭の中に鮮明に残る夢の光景へと想いを馳せる。
それは私の人生を変えた日のこと。
龍に出会い、力を得ることとなった始まりの記憶。
「本当にあの時は驚いたなぁ……」
そして私はあの当時、龍が私に惚れたのだと勘違いをしていたことを思い出す。
ー 少し磨けば輝きそうだな。
龍が私を見て漏らした、酷く抽象的な言葉。
それを私は、
ー 少し磨けば(手入れすれば)輝きそうだな(美人になりそうだな)
だと勘違いしたのだ。
だが現実は違った。
いきなり服を脱がされたのだ。
そして、いきなり剥かれたことで、貞操の危機を感じる私に何の配慮をすることなく、何故か動きやすそうな服を着せた。
「さぁ、この私が直々に鍛えてやろう」
私は何が起こったのかわからず、ただただ呆然と、少し泣きながら座っていたが、その一言でようやく悟った。
龍が漏らした言葉の意味は、
ー 少し磨けば(鍛えれば)輝きそうだな(強くなりそうだな)
だったことを……
………うん、明らかにそれは傷心の女性にかける言葉ではないと思う。
というか、絶対違う。
ーーーだが、その時から私の人生は変わら始めた。
私は来る日も来る日も走り続けて体力をつけ、そしてからてという武術を身体に叩き込まれた。
もちろん私は仮にも令嬢で、全く運動などしたことがない。
1日で筋肉痛どころか、足を故障した。
しかし、幸いなことと言っていいのかわからないが、龍には治療魔術を扱うことが出来たのだ……
治療魔術の時には酷い痛みが私を襲い、何度死ぬかと思ったかはわからない。
しかし、その結果私はかなりの武術の腕を手にした。
まぁ、人間の中では、と前につく程度ではあるのだが、それでも鍛錬を始めた初めからは考えられない位の凄腕の武術家になっていた。
そしてそんな生活を続けて行くうちに私はいつのまにか死にたいとそう思わせるほどに自分を蝕んでいた無力感が無くなっているのに気づいた。
さらに、私だけを見てくれる仲間が出来た。
そうしてありのままの自分で過ごすことの出来る森の中の生活は酷く心地の良い物だった。
ーーーだから私は王宮へと戻ることを決意した。
森の中での生活は本当に私が望んでいた生活そのものだった。
訳が分からなくて、それでも時々妙に優しい師匠がいて、そして私のことを常に気遣ってくれる友達がいる。
それは本当に幸せで、だからお父さんのことを思い出した。
民を幸せにしたい、そう汚れきった王宮の中でただ1人必死に走り回っていたお父さん。
その夢は最後まで叶うことなく、邪魔と判断されて嵌められあっさりと失脚させられた。
そしてその後すぐにこの世を去った。
お父さんの最後を私は知らない。
何が起きたのかさえも。
だけどそれでも忙しくてなかなか会えていなかったはずのお父さんの背中だけは鮮明に覚えている。
貴族では珍しく鍛えられており逞しくて、温かかった背中。
そしてその背中を覚えていたから、私は婚約者に頼み込んで王宮に残った。
その結果は散々なもので、私は容易く折れた。
お父さんがどんなものに耐えて何を必死に頑張ってきていたのかなど私は全く知らなかったのだ。
だけどもう違う。
私は沢山森の中で休んだ。
そしてどれだけ通用するのかわからないけども強くなった。
だから私は覚悟を決めて、
ーーー行方不明になって、自力で戻ってきた令嬢として、王宮に再び足を踏み入れた。
顔に当たる酷く眩しい日差しに私は目覚めた。
私、アンネ・ハートラールはその眩しさに手で光を遮りながら目を開く。
窓から見える空は雲ひとつない快晴で、だがその普段なら心踊る天気も今は私の憂鬱を晴らすことはなかった。
「あんな夢を見るなんて、相当私堪えているのかなぁ……」
そして私はそのことにため息を漏らしながら、未だ頭の中に鮮明に残る夢の光景へと想いを馳せる。
それは私の人生を変えた日のこと。
龍に出会い、力を得ることとなった始まりの記憶。
「本当にあの時は驚いたなぁ……」
そして私はあの当時、龍が私に惚れたのだと勘違いをしていたことを思い出す。
ー 少し磨けば輝きそうだな。
龍が私を見て漏らした、酷く抽象的な言葉。
それを私は、
ー 少し磨けば(手入れすれば)輝きそうだな(美人になりそうだな)
だと勘違いしたのだ。
だが現実は違った。
いきなり服を脱がされたのだ。
そして、いきなり剥かれたことで、貞操の危機を感じる私に何の配慮をすることなく、何故か動きやすそうな服を着せた。
「さぁ、この私が直々に鍛えてやろう」
私は何が起こったのかわからず、ただただ呆然と、少し泣きながら座っていたが、その一言でようやく悟った。
龍が漏らした言葉の意味は、
ー 少し磨けば(鍛えれば)輝きそうだな(強くなりそうだな)
だったことを……
………うん、明らかにそれは傷心の女性にかける言葉ではないと思う。
というか、絶対違う。
ーーーだが、その時から私の人生は変わら始めた。
私は来る日も来る日も走り続けて体力をつけ、そしてからてという武術を身体に叩き込まれた。
もちろん私は仮にも令嬢で、全く運動などしたことがない。
1日で筋肉痛どころか、足を故障した。
しかし、幸いなことと言っていいのかわからないが、龍には治療魔術を扱うことが出来たのだ……
治療魔術の時には酷い痛みが私を襲い、何度死ぬかと思ったかはわからない。
しかし、その結果私はかなりの武術の腕を手にした。
まぁ、人間の中では、と前につく程度ではあるのだが、それでも鍛錬を始めた初めからは考えられない位の凄腕の武術家になっていた。
そしてそんな生活を続けて行くうちに私はいつのまにか死にたいとそう思わせるほどに自分を蝕んでいた無力感が無くなっているのに気づいた。
さらに、私だけを見てくれる仲間が出来た。
そうしてありのままの自分で過ごすことの出来る森の中の生活は酷く心地の良い物だった。
ーーーだから私は王宮へと戻ることを決意した。
森の中での生活は本当に私が望んでいた生活そのものだった。
訳が分からなくて、それでも時々妙に優しい師匠がいて、そして私のことを常に気遣ってくれる友達がいる。
それは本当に幸せで、だからお父さんのことを思い出した。
民を幸せにしたい、そう汚れきった王宮の中でただ1人必死に走り回っていたお父さん。
その夢は最後まで叶うことなく、邪魔と判断されて嵌められあっさりと失脚させられた。
そしてその後すぐにこの世を去った。
お父さんの最後を私は知らない。
何が起きたのかさえも。
だけどそれでも忙しくてなかなか会えていなかったはずのお父さんの背中だけは鮮明に覚えている。
貴族では珍しく鍛えられており逞しくて、温かかった背中。
そしてその背中を覚えていたから、私は婚約者に頼み込んで王宮に残った。
その結果は散々なもので、私は容易く折れた。
お父さんがどんなものに耐えて何を必死に頑張ってきていたのかなど私は全く知らなかったのだ。
だけどもう違う。
私は沢山森の中で休んだ。
そしてどれだけ通用するのかわからないけども強くなった。
だから私は覚悟を決めて、
ーーー行方不明になって、自力で戻ってきた令嬢として、王宮に再び足を踏み入れた。
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