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7.決着
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「あ、貴女の勝ちよ」
私の笑顔に気圧されたようにエリスはそう弱々しく宣言する。
しかしその顔には隠しきれない恐怖が刻まれていた。
彼方此方へと動く視線は、私からどうやって逃げようか考えていると言ったところか。
しかし、次の瞬間エリスの顔に安堵の色が広がった。
「そ、そう!これは決闘よ!決闘の対価を支払うわ!」
そして彼女はいそいそとメルを縛っていた縄と口に詰められた布を慣れない手つきで取り外していく。
私はその様子を見て悟る。
ーーーつまりエリスはこの一件を全て決闘だったから、それだけの一言で終わらせるつもりなのだ。
しかし、そのエリスの態度に私は吐き気を覚える。
当たり前だろう。
メルを誘拐して人質を取り、明らかに私達に不利すぎる条件を私達に迫ったのに、いざ負けて私の実力を知ると決闘を免罪符に全てを無かったことにしようとしている。
それは私からすれば酷く受け入れがたいことだった。
正直、巫山戯るなと殴りたいぐらい。
「ええ、そうですわね」
だが、私はその感情を抑え付けて頷いた。
その私の様子にエリスの顔にも安心が広がる。
私はそのエリスの様子を確認しながら、口を開いた。
「では、私のもう一つの要求、つまらないものを賭けにしたいと言ったのを覚えていらっしゃいますか?」
「え?あ、ええ」
その私の言葉を忘れていたのかエリスは戸惑いを顔に浮かべ、そして直ぐに思い出したように頷く。
恐らくエリスの頭の中では、本当にこのままこの場を納めてくれるならば私の言うつまらないもの程度どうでも良いと思っているのだろう。
「では、よろしいですね」
「ええ!何か知らないけれども、そんなものなら幾らでもいいわよ」
私はエリスが頷いたのを確認し、こんなことで済むのかと、気の抜けた顔をしている彼女に近づく。
そして私は、彼女が酷く自慢している艶やかな金髪、恐らく毎日欠かさず丁寧にケアをしているだろうその長髪を、
ーーー倒れている男の腰から拝借した少し錆びた短剣で、肩の位置から切り落とした。
「えっ?」
その錆びた短剣ではすんなりと髪を切り落とすことが出来ず、エリスは痛みを感じたはずだが、彼女はその痛みを顔に出すことはなく、呆然としたに散らばる自分の髪へと視線を落とす。
ーーーそして私はその呆然としたエリスにかつてない清々しい微笑みを浮かべた。
「ほら、酷くつまらない物でしたでしょう。大丈夫これは私が責任を持って屑箱の中に飾り付けておきます」
「なっ!?」
エリスは何が起こったかわからない、そんな表情で2、3歩後ざる。
「巫山戯けないで!」
そしてようやく状況が分かったのか、怒りで赤く染めた顔で私を怒鳴りつける。
「あら、これもつまらない物でしょうか?」
「がっ!」
だが、私がそうなんでも無いことのように嘯きながらエリスの首に短剣を突きつけると、彼女の顔色は赤から一気に蒼白に変わる。
「や、やめて」
その時にようやくエリスは理解する。
私は決してエリスを許してはいなかったことを。
最初から、私はこうしようと考えていたことを。
そして、私がいつつまらない物だとエリスの首を切り落としてもエリスには止める術が無いことを。
ーーーその時、エリスはようやく私が賭けにするものを増やしたいと言った時に了承するのではなかったと後悔する。
だがもう遅い。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
自分が殺されるかもしれない、そう分かってエリスは顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにする。
そしてさらには、ドレスの前側を生暖かいものが滴り足元に水溜りが出来る。
「ぐっ!」
だが、私はエリスに何もすることなく剣をはなした。
エリスは突然私が力を抜いたせいでバランスを崩して水溜りの中に尻餅をつく。
「では、私のこの実力のことは隠して下さいね。私もこのことは隠しておきますから」
そして私は有無を言わせずそう一方的に言い聞かせると、男の顔を蹴った。
「ん?」
男は私にけられた衝撃で目を覚ます。
私はそれを確認すると、全力で叫んだ。
「誰かぁ!不審者よ!エリス様が!」
「なっ!」
その私の叫びに反応して衛兵がこの辺りに集まってくる音が聞こえる。
男は目覚めていきなりの状況に目を白黒させるが、
「あぁ、このまま通路を真っ直ぐ行けば裏門に出て逃げられてしまうわ!」
「おお、そうなのか!」
私の棒読みを聞いて全力で走り出した。
「ああ、待て!」
そして男の姿が通路の先に消えた頃に消えたころ、ようやく衛兵達は鍛錬場へと姿を見せた。
「大丈夫ですか!」
衛兵達の何人かは男を追いかけて行き、数人が私達の元へとやってくる。
そこでは私はその衛兵に急に不審者が現れて、エリスと私を襲おうとしたと伝える。
「そうですか……」
私の話を聞いた衛兵は、何故か切り落とされたエリスの髪を見て疑問そうに首をひねるが、エリスの足元に広がる水溜りに追求してはとばっちりを受けかねないと言葉を収める。
「そういうわけで、あとはお願いします」
そしてその衛兵に伝え終えた私は、まるで衛兵に後のことを頼み込むように、
「っ!」
ーーーキッチリと肩を震わせるエリスへと釘をさした。
おそらくエリスは今現在、かつて無い屈辱に唇を噛み締めているだろう。
だが、もう彼女が私のことをバラすことも、関わることもない。
私はエリスの震える肩にそう確信して、傷ついたメルを優しく抱えてその場を去った。
「どう言うことだ?」
ーーーそしてその時私は気づくことはなかった。
丁度鍛錬場を覗くことが出来る王宮のある窓から、そう慄いている人影があったということを………
私の笑顔に気圧されたようにエリスはそう弱々しく宣言する。
しかしその顔には隠しきれない恐怖が刻まれていた。
彼方此方へと動く視線は、私からどうやって逃げようか考えていると言ったところか。
しかし、次の瞬間エリスの顔に安堵の色が広がった。
「そ、そう!これは決闘よ!決闘の対価を支払うわ!」
そして彼女はいそいそとメルを縛っていた縄と口に詰められた布を慣れない手つきで取り外していく。
私はその様子を見て悟る。
ーーーつまりエリスはこの一件を全て決闘だったから、それだけの一言で終わらせるつもりなのだ。
しかし、そのエリスの態度に私は吐き気を覚える。
当たり前だろう。
メルを誘拐して人質を取り、明らかに私達に不利すぎる条件を私達に迫ったのに、いざ負けて私の実力を知ると決闘を免罪符に全てを無かったことにしようとしている。
それは私からすれば酷く受け入れがたいことだった。
正直、巫山戯るなと殴りたいぐらい。
「ええ、そうですわね」
だが、私はその感情を抑え付けて頷いた。
その私の様子にエリスの顔にも安心が広がる。
私はそのエリスの様子を確認しながら、口を開いた。
「では、私のもう一つの要求、つまらないものを賭けにしたいと言ったのを覚えていらっしゃいますか?」
「え?あ、ええ」
その私の言葉を忘れていたのかエリスは戸惑いを顔に浮かべ、そして直ぐに思い出したように頷く。
恐らくエリスの頭の中では、本当にこのままこの場を納めてくれるならば私の言うつまらないもの程度どうでも良いと思っているのだろう。
「では、よろしいですね」
「ええ!何か知らないけれども、そんなものなら幾らでもいいわよ」
私はエリスが頷いたのを確認し、こんなことで済むのかと、気の抜けた顔をしている彼女に近づく。
そして私は、彼女が酷く自慢している艶やかな金髪、恐らく毎日欠かさず丁寧にケアをしているだろうその長髪を、
ーーー倒れている男の腰から拝借した少し錆びた短剣で、肩の位置から切り落とした。
「えっ?」
その錆びた短剣ではすんなりと髪を切り落とすことが出来ず、エリスは痛みを感じたはずだが、彼女はその痛みを顔に出すことはなく、呆然としたに散らばる自分の髪へと視線を落とす。
ーーーそして私はその呆然としたエリスにかつてない清々しい微笑みを浮かべた。
「ほら、酷くつまらない物でしたでしょう。大丈夫これは私が責任を持って屑箱の中に飾り付けておきます」
「なっ!?」
エリスは何が起こったかわからない、そんな表情で2、3歩後ざる。
「巫山戯けないで!」
そしてようやく状況が分かったのか、怒りで赤く染めた顔で私を怒鳴りつける。
「あら、これもつまらない物でしょうか?」
「がっ!」
だが、私がそうなんでも無いことのように嘯きながらエリスの首に短剣を突きつけると、彼女の顔色は赤から一気に蒼白に変わる。
「や、やめて」
その時にようやくエリスは理解する。
私は決してエリスを許してはいなかったことを。
最初から、私はこうしようと考えていたことを。
そして、私がいつつまらない物だとエリスの首を切り落としてもエリスには止める術が無いことを。
ーーーその時、エリスはようやく私が賭けにするものを増やしたいと言った時に了承するのではなかったと後悔する。
だがもう遅い。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
自分が殺されるかもしれない、そう分かってエリスは顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにする。
そしてさらには、ドレスの前側を生暖かいものが滴り足元に水溜りが出来る。
「ぐっ!」
だが、私はエリスに何もすることなく剣をはなした。
エリスは突然私が力を抜いたせいでバランスを崩して水溜りの中に尻餅をつく。
「では、私のこの実力のことは隠して下さいね。私もこのことは隠しておきますから」
そして私は有無を言わせずそう一方的に言い聞かせると、男の顔を蹴った。
「ん?」
男は私にけられた衝撃で目を覚ます。
私はそれを確認すると、全力で叫んだ。
「誰かぁ!不審者よ!エリス様が!」
「なっ!」
その私の叫びに反応して衛兵がこの辺りに集まってくる音が聞こえる。
男は目覚めていきなりの状況に目を白黒させるが、
「あぁ、このまま通路を真っ直ぐ行けば裏門に出て逃げられてしまうわ!」
「おお、そうなのか!」
私の棒読みを聞いて全力で走り出した。
「ああ、待て!」
そして男の姿が通路の先に消えた頃に消えたころ、ようやく衛兵達は鍛錬場へと姿を見せた。
「大丈夫ですか!」
衛兵達の何人かは男を追いかけて行き、数人が私達の元へとやってくる。
そこでは私はその衛兵に急に不審者が現れて、エリスと私を襲おうとしたと伝える。
「そうですか……」
私の話を聞いた衛兵は、何故か切り落とされたエリスの髪を見て疑問そうに首をひねるが、エリスの足元に広がる水溜りに追求してはとばっちりを受けかねないと言葉を収める。
「そういうわけで、あとはお願いします」
そしてその衛兵に伝え終えた私は、まるで衛兵に後のことを頼み込むように、
「っ!」
ーーーキッチリと肩を震わせるエリスへと釘をさした。
おそらくエリスは今現在、かつて無い屈辱に唇を噛み締めているだろう。
だが、もう彼女が私のことをバラすことも、関わることもない。
私はエリスの震える肩にそう確信して、傷ついたメルを優しく抱えてその場を去った。
「どう言うことだ?」
ーーーそしてその時私は気づくことはなかった。
丁度鍛錬場を覗くことが出来る王宮のある窓から、そう慄いている人影があったということを………
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