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四年後の襲来 Ⅰ
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「……久しぶりに昔の夢を見たわね」
私の口からそんなくぐもった声が漏れたのは、うつ伏せになった机の上でのことだった。
小さく嘆息すると、私は凝り固まった身体を起こす。
顔をあげると、目に入ってきたのはいつもの質素な仕事部屋だった。
その部屋を眺めながら、私は何度か瞬きを繰り返し、状況を整理する。
「そっか、仕事終わったから仮眠をとっていたんだっけ?」
そう呟きながら、私は伸びをする。
昨日もほとんど眠れておらず、まだ疲れはとれていない。
しかし、私の顔に浮かぶのは紛れもない笑顔だった。
「あの日から、もう四年なのね……。こんなことになるなんて、あの時の私は想像もしていなかったわね」
シャルルが駆け落ちしてから四年。
今日まで私は、文字通り死にもの狂いで働いてきた。
シャルルの失踪でも残ってくれた魔法使い達との伝手を使い、私は必死にアルタルト伯爵家の領地を盛り上げてきた。
その私の努力と様々な幸運、それが重なった結果。
──今や、アルタルト伯爵家の領地は魔法の街、そう呼ばれるようになっていた。
「ここまで来るまで、本当に長かったわね……」
そう言いながら、私は仕事部屋につけられた窓をのぞき込む。
そこからは、日がくれてきたにも関わらず明かりの絶えない活気づいた街並みだった。
熱心に商売する出店に、それに並ぶ人々。
大きな通路では、笑顔でかけていく子供達と、それとなくそれを気にかける衛兵の青年。
それは、アルタルト伯爵家がようやく手にした景色だった。
前までは、シャルルさえ駆け落ちしなければ、そう思ったことが何度もあった。
しかし、今の私は胸を張っていえる。
シャルルがいなかったからこそ、今の光景がある、と。
実際、シャルルが駆け落ちしてくれなければ、この光景はなかっただろう。
窓の外の光景に笑顔を浮かべながら、私は呟く。
「さて、もう少し頑張りますか。……あの子だって頑張っているんだし」
そう言って私は目の前の書類に手を伸ばし。
「マルシア様!」
扉の外、何者かが全力で走ってくる音が響いたのはその時だった。
「……バルドス?」
その声は、シャルル駆け落ちからずっと私のサポートをしてくれていた家宰だと理解した私は、思わず眉をひそめる。
「バルドスがこんなに声を、それもこんな時間にあげる程のことが起きたの?」
いつもの物静かな老執事。
その顔を思い浮かべ、私は嫌な予感を覚える。
その予感を胸の奥にしまい込み、私は扉の方へと向かう。
「……っ。どうしたの?」
そしてノックをされる前に扉を開くと、そこにいたのは珍しく肩で息をするバルドス姿だった。
想像もしない様子のその姿に動揺が隠せない私に、バルトスは息の荒いまま、何とか言葉を紡ぐ。
「まる、しあ様、落ち着いて、お聞きください」
「それはこちらの台詞なのだけど……」
そう言って、私は思わず失笑しそうになる。
こんなに混乱したバルドスなど初めてだったが故に。
「──シャルル様が、この屋敷にやってきました」
だがその私の笑みは、すぐに凍り付くことになった。
「……は?」
私の口からそんなくぐもった声が漏れたのは、うつ伏せになった机の上でのことだった。
小さく嘆息すると、私は凝り固まった身体を起こす。
顔をあげると、目に入ってきたのはいつもの質素な仕事部屋だった。
その部屋を眺めながら、私は何度か瞬きを繰り返し、状況を整理する。
「そっか、仕事終わったから仮眠をとっていたんだっけ?」
そう呟きながら、私は伸びをする。
昨日もほとんど眠れておらず、まだ疲れはとれていない。
しかし、私の顔に浮かぶのは紛れもない笑顔だった。
「あの日から、もう四年なのね……。こんなことになるなんて、あの時の私は想像もしていなかったわね」
シャルルが駆け落ちしてから四年。
今日まで私は、文字通り死にもの狂いで働いてきた。
シャルルの失踪でも残ってくれた魔法使い達との伝手を使い、私は必死にアルタルト伯爵家の領地を盛り上げてきた。
その私の努力と様々な幸運、それが重なった結果。
──今や、アルタルト伯爵家の領地は魔法の街、そう呼ばれるようになっていた。
「ここまで来るまで、本当に長かったわね……」
そう言いながら、私は仕事部屋につけられた窓をのぞき込む。
そこからは、日がくれてきたにも関わらず明かりの絶えない活気づいた街並みだった。
熱心に商売する出店に、それに並ぶ人々。
大きな通路では、笑顔でかけていく子供達と、それとなくそれを気にかける衛兵の青年。
それは、アルタルト伯爵家がようやく手にした景色だった。
前までは、シャルルさえ駆け落ちしなければ、そう思ったことが何度もあった。
しかし、今の私は胸を張っていえる。
シャルルがいなかったからこそ、今の光景がある、と。
実際、シャルルが駆け落ちしてくれなければ、この光景はなかっただろう。
窓の外の光景に笑顔を浮かべながら、私は呟く。
「さて、もう少し頑張りますか。……あの子だって頑張っているんだし」
そう言って私は目の前の書類に手を伸ばし。
「マルシア様!」
扉の外、何者かが全力で走ってくる音が響いたのはその時だった。
「……バルドス?」
その声は、シャルル駆け落ちからずっと私のサポートをしてくれていた家宰だと理解した私は、思わず眉をひそめる。
「バルドスがこんなに声を、それもこんな時間にあげる程のことが起きたの?」
いつもの物静かな老執事。
その顔を思い浮かべ、私は嫌な予感を覚える。
その予感を胸の奥にしまい込み、私は扉の方へと向かう。
「……っ。どうしたの?」
そしてノックをされる前に扉を開くと、そこにいたのは珍しく肩で息をするバルドス姿だった。
想像もしない様子のその姿に動揺が隠せない私に、バルトスは息の荒いまま、何とか言葉を紡ぐ。
「まる、しあ様、落ち着いて、お聞きください」
「それはこちらの台詞なのだけど……」
そう言って、私は思わず失笑しそうになる。
こんなに混乱したバルドスなど初めてだったが故に。
「──シャルル様が、この屋敷にやってきました」
だがその私の笑みは、すぐに凍り付くことになった。
「……は?」
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