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四年後の襲来 Ⅷ
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攻撃態勢に入った護衛達の姿に、シャルルだけではなく私も動揺を抑えることはできなかった。
「バルドス!?」
思わず声を上げた私に対し、バルドスはただ片手で制する。
そして、もう片方に握られた魔術具をシャルルに向けながら口を開いた。
「貴様、我らが入る前にマルシア様に向けて魔力を構築していたのに気づかれないと思ったか?」
「……え?」
想像もしない言葉に反射的に私がシャルルへと視線を送ると、そこには額に汗をかく姿があった。
その姿に私は呆れを隠すことができなかった。
交渉に来ているはずなのに、敵意を見せるとはなにを考えているのだと。
そんなことをすれば、交渉どころではなくなるのも当然の話でしかない。
そもそも、いくらシャルルだろうが、敵意を見せてどうにかなる場所ではなかった。
まず、私だって最低限の備えではあるが護衛用の魔術具は身につけている。
それ以上に、ここは私の本拠地で多数の魔術師が存在している。
抵抗すれば、どんなことになるのか想像できない訳ではないだろうに。
「ち、違う! 少し感情が高ぶっただけだ!」
必死に叫ぶシャルルだが、もう全てが遅かった。
「つまみ出せ」
「バルドス!?」
淡々としたバルドスの言葉に、護衛の魔術師達が淡々とシャルルの元に集い始める。
シャルルの余裕が消えたのはその瞬間だった。
……この後に及んで、まだ自分なら迎えてくれるはずという思いこみがあったのか。
呆れを隠せない私に、シャルルは必死に声を上げる。
「おい、待て! 待ってくれ、マルシア……! このままだとお前はあの無能と結婚することになるんだぞ! そんなこと嫌だろう?」
余裕の消え失せたにやけ面でそう話しかけてくるシャルル。
その様子に、私は表情の消え失せた顔で問いかける。
「……それは、ルクスのこと?」
今現在、私は立場上仮のルクスの婚約者として経営に携わっている。
つまり、シャルルが誰を指して話しているのか、それ以外の選択肢はなかった。
私の言葉にシャルルは少し気圧されたようにたじろぐ。
しかし、すぐにその顔に笑みを浮かべて口を開いた。
「事実だろうが! あの魔法の才能もなく、剣しか使えない奴は無能以外の何者でもないだろうが! お前はこのままだと、あんな無能と結婚することになるんだぞ?」
そうにたにたと笑いながら告げてくるシャルルに、私の頭にかつてのシャルルが蘇る。
シャルルはいつもこうしてルクスを馬鹿にしていた。
それも酷いときは本人の前でどうどうと馬鹿にすることもあって。
「くふっ。うふふふ。貴方、まだ知らないのね!」
──それを思い出した私は、今度こそ笑いを抑えることができなかった。
目尻に涙を浮かべ、口元を手で押さえて笑う私にシャルルはなにが起きたのか分からないといった様子で固まっている。
そんな彼へと、私は告げる。
「自分が無能と言っていた弟が、今どんな立場にあるのかも」
「バルドス!?」
思わず声を上げた私に対し、バルドスはただ片手で制する。
そして、もう片方に握られた魔術具をシャルルに向けながら口を開いた。
「貴様、我らが入る前にマルシア様に向けて魔力を構築していたのに気づかれないと思ったか?」
「……え?」
想像もしない言葉に反射的に私がシャルルへと視線を送ると、そこには額に汗をかく姿があった。
その姿に私は呆れを隠すことができなかった。
交渉に来ているはずなのに、敵意を見せるとはなにを考えているのだと。
そんなことをすれば、交渉どころではなくなるのも当然の話でしかない。
そもそも、いくらシャルルだろうが、敵意を見せてどうにかなる場所ではなかった。
まず、私だって最低限の備えではあるが護衛用の魔術具は身につけている。
それ以上に、ここは私の本拠地で多数の魔術師が存在している。
抵抗すれば、どんなことになるのか想像できない訳ではないだろうに。
「ち、違う! 少し感情が高ぶっただけだ!」
必死に叫ぶシャルルだが、もう全てが遅かった。
「つまみ出せ」
「バルドス!?」
淡々としたバルドスの言葉に、護衛の魔術師達が淡々とシャルルの元に集い始める。
シャルルの余裕が消えたのはその瞬間だった。
……この後に及んで、まだ自分なら迎えてくれるはずという思いこみがあったのか。
呆れを隠せない私に、シャルルは必死に声を上げる。
「おい、待て! 待ってくれ、マルシア……! このままだとお前はあの無能と結婚することになるんだぞ! そんなこと嫌だろう?」
余裕の消え失せたにやけ面でそう話しかけてくるシャルル。
その様子に、私は表情の消え失せた顔で問いかける。
「……それは、ルクスのこと?」
今現在、私は立場上仮のルクスの婚約者として経営に携わっている。
つまり、シャルルが誰を指して話しているのか、それ以外の選択肢はなかった。
私の言葉にシャルルは少し気圧されたようにたじろぐ。
しかし、すぐにその顔に笑みを浮かべて口を開いた。
「事実だろうが! あの魔法の才能もなく、剣しか使えない奴は無能以外の何者でもないだろうが! お前はこのままだと、あんな無能と結婚することになるんだぞ?」
そうにたにたと笑いながら告げてくるシャルルに、私の頭にかつてのシャルルが蘇る。
シャルルはいつもこうしてルクスを馬鹿にしていた。
それも酷いときは本人の前でどうどうと馬鹿にすることもあって。
「くふっ。うふふふ。貴方、まだ知らないのね!」
──それを思い出した私は、今度こそ笑いを抑えることができなかった。
目尻に涙を浮かべ、口元を手で押さえて笑う私にシャルルはなにが起きたのか分からないといった様子で固まっている。
そんな彼へと、私は告げる。
「自分が無能と言っていた弟が、今どんな立場にあるのかも」
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