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「私は、何を……」
部屋から逃げ出し、人気のない場所へとたどり着いた私の心に浮かんでいたのは自分に対する情けなさと、後悔でした。
国王に向かって八つ当たりで罵り走り去る。
自分の行動のあまりのどうしようもなさに私は自分に対する失望を隠すことが出来ませんでした。
国王は私に対してかなり親密に接してくれています。
だからこそ、この件は無用の心配をかけないために何としてでも隠し通すと私は決めていたはずでした。
何せ今回の件に関してはどうしようもないことで、だから国王に相談しても意味がないことを私は理解していたのですから。
…….なのに実際のところはどうか、そう考える私には国王の元に改めて戻る気力はありませんでした。
「こんな私を見て、ナーセリアは怒っていますよね……」
そしてその時、失望にくれる私の頭に浮かんだのはかつての主人であるナーセリア様のことでした。
ナーセリア様の望まぬことをしてしまった、そのことが私の胸で大きなしこりとなっていました。
侯爵家やラスラープやスレア達についてはついて私は、復讐のことを抜きにしても始末しなければならない人間だと考えていました。
何せ彼らはナーセリア様を殺しただけではなく、他にも様々な悪事に手を染めていて、この国の害悪でしか無かったのですから。
……けれども、それは最終的に私は自分はスレア達は復讐心から殺したことの言い訳にはならないことを私は理解していました。
ナーセリア様を見殺しにして、むざむざ生き残った私にかけられた言葉。
その言葉でナーセリア様が私に何を望んでいるのか、私は理解していました。
……そう、ナーセリア様は私があの時何も出来なかったから死んでしまったのにもかかわらず、死の間際でさえ私に幸せに生きて欲しいと願っていたことに。
けれども、そのことを私は理解出来ながら実行することはできませんでした。
ナーセリア様の代わりに残された自分が、のうのうと幸せになることを私は受け入れることができなくて。
……そして私は復讐の道を歩むことを決めました。
ナーセリア様が一番嫌っているはずなのに。
「……これは自業自得ですね。」
だから、これは自分の責任なのだと私は自分を納得させるようにそう言葉を漏らしました。
ナーセリア様を裏切るようなことをした、自分のどうしょうもなさが招いてしまったのだと、そう言い聞かせるように。
……そう言い聞かせていなければ、どうしようもない状況に耐えられなくなりそうだから。
「私はまだ諦めていないのだが?」
「っ!?お、お兄様?」
けれども次の瞬間、その私の言葉を否定するかのように声が響き、その声の主に私は目を見開くことになりました……
部屋から逃げ出し、人気のない場所へとたどり着いた私の心に浮かんでいたのは自分に対する情けなさと、後悔でした。
国王に向かって八つ当たりで罵り走り去る。
自分の行動のあまりのどうしようもなさに私は自分に対する失望を隠すことが出来ませんでした。
国王は私に対してかなり親密に接してくれています。
だからこそ、この件は無用の心配をかけないために何としてでも隠し通すと私は決めていたはずでした。
何せ今回の件に関してはどうしようもないことで、だから国王に相談しても意味がないことを私は理解していたのですから。
…….なのに実際のところはどうか、そう考える私には国王の元に改めて戻る気力はありませんでした。
「こんな私を見て、ナーセリアは怒っていますよね……」
そしてその時、失望にくれる私の頭に浮かんだのはかつての主人であるナーセリア様のことでした。
ナーセリア様の望まぬことをしてしまった、そのことが私の胸で大きなしこりとなっていました。
侯爵家やラスラープやスレア達についてはついて私は、復讐のことを抜きにしても始末しなければならない人間だと考えていました。
何せ彼らはナーセリア様を殺しただけではなく、他にも様々な悪事に手を染めていて、この国の害悪でしか無かったのですから。
……けれども、それは最終的に私は自分はスレア達は復讐心から殺したことの言い訳にはならないことを私は理解していました。
ナーセリア様を見殺しにして、むざむざ生き残った私にかけられた言葉。
その言葉でナーセリア様が私に何を望んでいるのか、私は理解していました。
……そう、ナーセリア様は私があの時何も出来なかったから死んでしまったのにもかかわらず、死の間際でさえ私に幸せに生きて欲しいと願っていたことに。
けれども、そのことを私は理解出来ながら実行することはできませんでした。
ナーセリア様の代わりに残された自分が、のうのうと幸せになることを私は受け入れることができなくて。
……そして私は復讐の道を歩むことを決めました。
ナーセリア様が一番嫌っているはずなのに。
「……これは自業自得ですね。」
だから、これは自分の責任なのだと私は自分を納得させるようにそう言葉を漏らしました。
ナーセリア様を裏切るようなことをした、自分のどうしょうもなさが招いてしまったのだと、そう言い聞かせるように。
……そう言い聞かせていなければ、どうしようもない状況に耐えられなくなりそうだから。
「私はまだ諦めていないのだが?」
「っ!?お、お兄様?」
けれども次の瞬間、その私の言葉を否定するかのように声が響き、その声の主に私は目を見開くことになりました……
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