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 「待って!やめて助けて!」

 ……魔道具の光、それに危機感を持ったスレアのとった行動、それは泣き叫びながら嘆願することだった。

 「何で貴女みたいな存在が……」

 そして、そのスレアの態度の醜悪さに私は思わずそう言葉を漏らしていた。
 あれほど素敵な人間はいなかった、そう思えるような存在であったライセルト家の人々。
 彼らは目の前の女のために死ななければならなかった。

 ……こんな、最悪な女のせいで。

 「うるさい!」

 だから、もう私にはスレアの言うことに一切耳を貸すつもりはなかった。
 スレアに怒鳴りつけながら、私は魔導具を起動する。

 「ひぃっ!?」

 一段と高まる魔道具の光にもうスレアの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

 「何で何で何で!私はヒロインでしょ!主人公でしょうが!」

 ……なのにそんな状態になってもスレアは未だそんなたわごとを口にしていた。

 「このっ!」

「あがっ!?」

 そしてそのスレアの態度に私は自分を抑えられないようになり、気づけばスレアを蹴り飛ばしていた。
 蹴り飛ばされたスレアは奇声とともに転がっていき。

 「っ!」

 「あ、あらんさまぁ」

 ……そしてお兄様の足元に当たって止まった。
その瞬間、お兄様の顔はあからさまに歪む。

 「そうよ!あらんさまがわたしをたすけてくれるのよ!ひろいんのわたしを!」

 けれどもその一方でスレアの顔には隠しきれない喜色が広がった。
 そしてスレアは陶然とした表情でお兄様へと手を伸ばし。

 「……やはり無理だよ」

 「うぇ?」

 ……その時、お兄様はぽつりと言葉を漏らした。
 その言葉がよく聞き取れなかったらしく、スレアは疑問げな顔つきでお兄様を見上げる。

 「……やっぱり、私には君は生理的に受け入れられない」

 「なっ!?」

 けれども次のお兄様の言葉にスレアは言葉を失った。
 そしてスレアの顔がどんどん青ざめていく中、お兄様はさらに言葉を重ねる。

 「君の言う攻略対象だったか。

 ーーー 彼らが君から逃げ出した気持ちがよく分かるよ」

 「っあ!」

 その言葉に、スレアの顔は大きく歪む。
 それでもスレアは何かを期待するように手を伸ばして。

 「あ」


 ーーー 次の瞬間、魔道具からほとばしった閃光に骨も残さず消しとばされることとなった。



 ◇◇◇

 《あとがき》

 ここでようやくスレアは盤上から退場となります。ただ私個人としてはここからリーリアが幸せになるまでがこの作品本題だと考えていたりします!
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