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プロローグ
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「勇者の才能!」
「ま、まさかあの伝説のスキルが!」
僕、斎藤晴人がいるそこは、王座と呼ばれる場所だった。
現代だったら一度も見ることなどなかっただろう、中世ヨーロッパに似た豪華な作り。
「まじかよ……」
だが僕は周囲のことなど一切見ていなかった。
横で親友の新田慎二が何か騒がれているが、それすらも耳を素通りして行く。
その時の僕の頭からは先ほど異世界に召喚されたと、そう聞かされた時の衝撃さえ抜け落ちていた。
「これ最強だよな……」
そしてそれだけ僕の意識を集中させているもの、それは僕の目の前で広がるステータスと呼ばれるもののスキル欄にある文字。
それは今まさに騒がれている慎二の勇者の才能なんてものでさえ凌駕する最強のスキルだった。
「は、ははっ!」
僕は信じられない思いで何度もそのスキルを眺め、ようやくそのスキルが自分が錯乱しているわけではないことを悟る。
「あはははっ!」
そしてそのことに気づいた瞬間僕の胸に湧き上がってきたのは抑えきれない程の歓喜だった。
喜びが身体から溢れて笑いとして外に溢れ出す。
「ん、どうした?」
その笑いは周囲の注目は僕に集まる。
僕は感情の赴くまま、周囲の人間に自分のスキルを伝えようとして、
「どんなスキルだったのだ?」
「っ!」
王座の上から掛けられたその声に絶句した。
そこに居たのは王と紹介された男だった。
威厳のある、コワモテと言うべき顔つきに白い髭と白い髪、さらに鍛えていると一目でわかる身体。
その男はまさしく王と呼べるだけの威厳を、迫力を備えていた。
その目以外は。
ー 目の前の男は人間か?
俺の頭にそんな考えが浮かぶ。
何故なら、王の目に浮かんでいたのは虚だったのだから。
それは虚無と言うべき何か。
なのに、その目には同時に僕の背を冷やすほどの激情が宿っていた。
虚無と激情、相反する筈の感情を併せ持った目の前の人間、それを見て僕は、
ーーー王が狂っていることを悟った。
今までの浮かれていた心がいきなり沈んで行く。
背に嫌な汗が流れる。
「おい、晴人どうしたんだよ?」
「え?」
だが、僕に声をかけてきた慎二は何も気づいていないことをその声で悟る。
「っ!」
そして僕は振り返り悟る。
慎二だけでなく背後にいるクラスメイトの誰1人としてあの狂人に何の異常も感じていないということを。
それは僕のスキルの効果なのか、それとも祖父に死に物狂いで鍛えられた所為で身についた第六感とでも言う感覚が働いたお陰なのか分からない。
だが、僕を見つめる狂人のまるで獲物を見定めるような視線にあることを理解する。
ー 今ここで自分のスキルを明かすわけにはいかない。
「す、すいません。僕には村人のスキルである耕すしかなくって……」
そして僕は恐怖に震えながら、そう自分のスキルを偽った……
「ま、まさかあの伝説のスキルが!」
僕、斎藤晴人がいるそこは、王座と呼ばれる場所だった。
現代だったら一度も見ることなどなかっただろう、中世ヨーロッパに似た豪華な作り。
「まじかよ……」
だが僕は周囲のことなど一切見ていなかった。
横で親友の新田慎二が何か騒がれているが、それすらも耳を素通りして行く。
その時の僕の頭からは先ほど異世界に召喚されたと、そう聞かされた時の衝撃さえ抜け落ちていた。
「これ最強だよな……」
そしてそれだけ僕の意識を集中させているもの、それは僕の目の前で広がるステータスと呼ばれるもののスキル欄にある文字。
それは今まさに騒がれている慎二の勇者の才能なんてものでさえ凌駕する最強のスキルだった。
「は、ははっ!」
僕は信じられない思いで何度もそのスキルを眺め、ようやくそのスキルが自分が錯乱しているわけではないことを悟る。
「あはははっ!」
そしてそのことに気づいた瞬間僕の胸に湧き上がってきたのは抑えきれない程の歓喜だった。
喜びが身体から溢れて笑いとして外に溢れ出す。
「ん、どうした?」
その笑いは周囲の注目は僕に集まる。
僕は感情の赴くまま、周囲の人間に自分のスキルを伝えようとして、
「どんなスキルだったのだ?」
「っ!」
王座の上から掛けられたその声に絶句した。
そこに居たのは王と紹介された男だった。
威厳のある、コワモテと言うべき顔つきに白い髭と白い髪、さらに鍛えていると一目でわかる身体。
その男はまさしく王と呼べるだけの威厳を、迫力を備えていた。
その目以外は。
ー 目の前の男は人間か?
俺の頭にそんな考えが浮かぶ。
何故なら、王の目に浮かんでいたのは虚だったのだから。
それは虚無と言うべき何か。
なのに、その目には同時に僕の背を冷やすほどの激情が宿っていた。
虚無と激情、相反する筈の感情を併せ持った目の前の人間、それを見て僕は、
ーーー王が狂っていることを悟った。
今までの浮かれていた心がいきなり沈んで行く。
背に嫌な汗が流れる。
「おい、晴人どうしたんだよ?」
「え?」
だが、僕に声をかけてきた慎二は何も気づいていないことをその声で悟る。
「っ!」
そして僕は振り返り悟る。
慎二だけでなく背後にいるクラスメイトの誰1人としてあの狂人に何の異常も感じていないということを。
それは僕のスキルの効果なのか、それとも祖父に死に物狂いで鍛えられた所為で身についた第六感とでも言う感覚が働いたお陰なのか分からない。
だが、僕を見つめる狂人のまるで獲物を見定めるような視線にあることを理解する。
ー 今ここで自分のスキルを明かすわけにはいかない。
「す、すいません。僕には村人のスキルである耕すしかなくって……」
そして僕は恐怖に震えながら、そう自分のスキルを偽った……
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