籠の雛鳥〜高雛零梛は世の中を知らない〜

缶ジュース

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鳩代弥衣は天使に出会う2

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「お湯の加減はいかがですか?」

 広い浴場の湯船に浸かっていると天使様のお声が聞こえる。

「は、はい!これ以上ないほどに!!気持ちいいです!」

 少年に甲斐甲斐しくお世話してもらえるなんて私はなんて贅沢ものなんだ……

 そんな風に湯船に浸かっているとふと冷静になった。

 どうして天使様は鷲倉先生の別荘に?そして一人でいるのか?

 天使様は鷲倉先生の息子?でも天使様は「先生」と呼んでいた…?これが鷲倉小夜を指すなら二人に血の繋がりはない……?


 血のつながりのない、美しい少年、鷲倉小夜、


…誘拐事件。10年……郊外の別荘…私有地の山…


 憶測でしかないが私の中で点と点が線になってつながってしまったような。そんな気がした。

 私は謎解きのような高揚感ともしこれが当たっていたらという謎の怖さと今、鷲倉小夜が帰ってきたとしたら…私は……

 温度を感じることができないほど張り詰めた私は風呂場から出て天使様が用意してくれたであろう服に袖を通す。

 おそらくリビングとして機能してるであろう大部屋に足を踏み入れると天使様が温かい飲み物を用意して待っていた。

 私は思い切って聞いてみることにしてしまった。

「ねぇ、貴方のお名前は…?」

 字面だけ見たらナンパのようできっと私は気持ち悪いことだろう。

「名前ですか…ないですね」
「ない?」
「はい。僕は先生としか交流がないので他の人と名前で識別する必要がないんです。先生は僕のことを『君』と呼びます」

 これは…黒だ。目の前の天使は高雛彩美の息子の高雛零梛くんだ。

 よく見てみると目の色や顔の造形に母親の面影を感じる。

「その…先生は今どちらに?」
「外に行かれましたね。夕方まで外に出るとおっしゃっていましたが…天気が悪いようで戻るのに苦労なされているのかもしれませんね」

 彼の目は鷲倉小夜を純粋に心配しているようだった。天使様にそんな風に思われるなんて羨ましい。

 誘拐事件の犯人は金銭の要求なども一切なく音沙汰一つない。故に零梛くんの身柄だけが目的であろうとされていた。

 零梛くんは12歳となっている頃だろう。つまりは精通を終えて精液の売買が目的?それにしては鷲倉小夜は既に大富豪の域であるここまで大胆なことはしなくてもいいだろう。

 色々なことを考えていると頭がこんがらがる。

「あの…」

 天使様が私の顔を覗き込む。

「ひゃいっ!」

(ひゃいっってなんだよ私!!処女丸出しじゃん!?)

「難しい顔されてますけど大丈夫ですか?雨も強くなっていますし、泊まっていってもらって構いませんからね」

(どこまでいい子なの!?優しすぎる!好き!一晩同じ屋根の下!?零梛くんはもう射精できるかもしれないってことは!?)

「お姉さんはきっと甘いもの摂取するといいですよ?」

 うんうんと首がとれるほど勢いよく頷いて彼の入れてくれたホットココアを飲む。

(天使様のココアぁぁあ至福ぅぅ!)

「あとは…」

 天使様が恥ずかしそうにモジモジしている。かわいい。

「お姉さんには僕のこと好意的に見えてますか?」

 いきなりなんだ。告白か?告白なのか?顔赤らめちゃってドキドキしちゃう

「はい!!」

 私の人生の中で1番の返事をしたと思う。

「そ、そうですか…よかった…じゃあ」

 私の息は止まった。一回死んだんだと思う。

 そう言った天使様は私を抱きしめたんだ。

(えええええええええええええええええ!???何事!?!?うぅ、いい匂い…我が生涯に悔いはない!!)

「帰れなくなってしまって不安ですよね…難しい顔されてストレスも溜まっているみたいで…」

(そ、そんな!それだけでこんなご褒美いいんですか!?頭おかしくなっちゃいますぅ!)

「知ってました?家族や恋人なんかとハグを30秒すると一日のストレスが三分の一になるらしいですよ」

(わぁほんとだぁ!一日どころか人生のストレスじぇーんぶきえた~)

「それに体温を感じると安心しますよね」

(あんしんしま~す!どきどきの心臓はバグっちゃいましたけど~!なぁーんにもかんがえられないしあわせ~)

「お姉さんポカポカですねぇ僕とおんなじ匂いします」

(はわわぁ、匂い嗅がれちゃってる??男の子と触れ合うだけでも初めてなのにこれってやっぱりこのまま最後までヤっちゃっても捕まらないよね!!)

 だらしない顔をして一言も発せず蕩けた。天使様と私は体温を分け合った。

 30秒超えて天使様が離れようとした時グッと私から力を入れたらもう一度身体を寄せて頭を撫でてくれた。正直私は性欲の限界を突破して、人生最高潮の幸せを噛み締めていた。
 
 こんなやりとりをしていたからか、ひどい雨音のせいか私は気がつかなかったんだ。この別荘に到着した一台の車の存在に。

 
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