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彩美と稜梛
しおりを挟む病院をたくさんの人に見送られて出て行く。時間にしても数日外に出ただけでたくさんの新しいものに触れた。
世界的に男性が少なくて。と言った話は驚いたけど先生はなぜ教えてくれなかったんだろう。法律の本を読んでいた時の男性法というものがようやく納得できた。不要だと思っていたけれどこういうことならば理解できる。
しかし、自衛のための拒絶を行っているというのに先生はどうしてその状態にないように僕を仕向けて、なにも伝えず去っていったのだろうか。
考え事をしている僕に運転している母さんは話しかける。
「もうすぐ着くからね。話したいことたくさんあるんだよ」
「はい。聞かせてくださいね」
「零梛?敬語やめない?家族なんだよ?」
「…この話し方しかできないので、このようにしてるんですけど善処しますね」
「その言い方で希望薄めなのが伝わる…」
鏡越しに母が落ち込んでいるのがわかる。僕は後部座席から母の様子を見て申し訳なくなる。
「到着!」
着いた先は先生の家くらいの家だった。
「へへっ大きいでしょ?」
「そうなんですか?」
「うっ…小夜さんの別荘のが大きいか」
車から降りようとするとカメラを持った人たちがたくさんいた。
「マスコミかぁ、退院漏れてたのか、出てくところ見られたかなぁ」
「マスコミって世間に報道してる方たちですよね?」
「そう。お母さん有名人なのよ?それに貴方も」
車庫のシャッターが閉まり暗くなる。
「さて、そこのドアから入れるから先入ってて、私はあの人たちのとこ言ってくるから」
頷いて荷物を持って指されたドアを開けて建物の方へ移動する。
入ったはいいもののどうすればいいのかわからなくてとりあえずリビングと思われる場所へ行く。
そこには非常に大きなテレビがあり、恐る恐る付けてみると母が写っていた。
「高雛さん!零梛くんがこちらへくるのは本当ですか!?」
「先ほど退院されたとか!」
「写真を!コメントを!!」
熱量がすごいなと思いながら画面を見る。そういえば弥衣さんも記者だからこんなふうに仕事をしているのだろうか。
「息子は、零梛確かに保護されました。嬉しく思っていますし、長年の不安から解放されました。みなさんもご心配、ご声援ありがとうございました」
母が深々と頭を下げる。その顔は笑顔であるが違和感を感じた。
ガチャと母が家に入る。
「適当に流せたわ」
不思議そうに母を見ると反対に向こうからも困惑したように見られた。
「どうかした?」
「いいえ、なにも」
「ふふっ、違和感感じてるんでしょ?」
確かにそうだがよくわかるものだな。
「小夜さんを恨んでないのかとか、笑顔がぎこちなかったとかそんなとこ?」
「随分察しがいいんですね」
「うん。貴方は私の子どもだもんわかるわ」
納得のいく説明ではないが母は話を続けようとする。同時に扉が開く。
「ただいま~」
「おかえり」
「おかえりなさい。?」
そこには母とよく似た若い女性が居た。
「あ、あ、あまなー!!!!!」
「え、え、?」
その女性は大喜びで抱きついてきた。
「稜梛、そんな急に抱きついたらびっくりしちゃうよ。あたしもやったけど」
「えっと…?」
「私は稜梛だよ!零梛のお姉ちゃんの!」
「そうなんですね」
「は?」
怒っているような雰囲気を出しているがどういうことだろうか。
「お母さん?まだ話してないの?」
「これから話すところだったの~」
「というか?小夜さんは私のことなんで言ってないの?お母さんのことは言ってなくてもおかしくないけど私のことは言いなさいよ。事前に零梛からの好感度上げとけよ!あいつ!!」
怖い。母と同じ艶のある髪を靡かせながら怒っている。
「あの稜梛さん?小夜さんとはどういう…」
「なぁに?零梛?あと、いずねぇかお姉ちゃんって呼んでね」
「は、はい、いずねぇ。先生とはどういう繋がりが?それにお母さんも…知ってたんですか?」
「そりゃあ私が小夜さんに頼んだんだもの、誘拐してくれって。13年も返してもらえないとは思わなかったけどね」
衝撃の事実をサラッと言わなかったか。誘拐は先生の自発的なものではなくいずねぇから頼まれて行った?でも13年も返してもらえない…期間自体は先生の裁量?
「あたしも聞いた時は驚いたの」
そう言って母は話を始めた。
あの日の夜のこと、いずねぇがどうしてそんなことを言ったのか。母がいつその話を聞いたのか。先生と二人が行っていたやりとりについて…
「小夜さんの別荘にいるのは知ってたんだけどどこにあるのかは知らないし、探って他の人にバレたら本末転倒だし」
「私は結婚話とかがなくなればいいなとか特権で国からの護衛をつけれるようになったら帰ってくるもんだと思ってたもん!!」
先生の撮っていた写真は二人に渡っていたようだ。二人は先生と頻繁に会っていたわけではなく、この13年ほとんど携帯でのやりとりだったらしい。
「小夜さんにはたくさん迷惑をかけた。犯罪者扱いされているのも正直罪悪感がある。もちろん貴方にも」
だから母は本音が隠しきれず笑顔に違和感が生じてしまっていたのか。
「いいえ、先生との生活は楽しかったですよ。きっと先生もそう思ってくれてるはずです」
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