25 / 27
仕事を見学したい
しおりを挟むなんなかんやで母さんがドラマの撮影に移動する時間になった。結局家に一人で残すのは可哀想だと言いついて行くことを許してくれた。母さんの中では僕は2歳児と大差ないんだろうか。
「どんなドラマの撮影なの?」
「えーっとね」
四月から放送されるドラマの第三話の撮影らしい。そのドラマは恋愛コメディで主人公が毎回別の男に恋をして失恋して行くと言う話でドラマオリジナル作品だと言う。母さんはその恋多き主人公の親友役で見せ場も多いんだとか。
ちなみに、母さんは誘拐の一件からマネージャーは事務所に事情を説明して解雇。自分にマネージャーをつけないでくれと打診して全て自己管理している。とは言っても事務所の相談してスケジュールや仕事内容を選んでいるため無理はないんだとか。直接担当して行動を共にすると言う人物がいないと言った具合だ。
「でもね…そもそも無理がある撮影なの」
「どうして?」
「聞いたでしょ?男性は少ない。その上働いてる人はもっと少なくて、俳優なんて人前に立つような仕事は選ぶ人はごくわずか。お金と頼み込みでなんとか出演があっても、質が悪くて作品としては男性を使ったと言う宣伝はできるもののクリエイターとしての満足度としては首を傾げたくなると言った感じかな」
「選りすぐりをする余裕がないってこと?」
「実際、一話は男装。二話は棒読み。そんなでも喜んで見る人が多いから困っちゃうわ」
ひどい話だ。プライドを持って仕事をすると言う概念がないのだろうか。僕は人の活動や仕事は本でしか読んだことがないけれど、懸命に仕事をする姿の方に胸を打たれた。
世の中の女性もそんな簡単に褒めたり喜んでしまっては努力の余地がなくなってしまう。ハードルはある程度高くあるべきだ。でも、素人が口を出すような話じゃないし、きっとその低いハードルを保つことでこの男性俳優という業界は成立しているんだろう。
「世の中の女性の多くは男性を求めている。だけど日常生活で男性との繋がりを持つのはごく僅かな人、ドラマやバラエティに出るだけで話題になる。そんな感じね」
その状態で『男性とはそういう生き物』と割り切っているから質が思わなくても楽しめると言ったところだろうか。
「毎話違う男性キャラクターを出すのはいいけれど12人も用意しきれるのかわからないけど、企画が通ってしまってスタッフは血眼よ」
不穏な空気が漂っているのかなと鏡越しの母さんの顔から想像する。母さんが渋っていたのは僕が外に出ることもそうだけど外の空気感に染まることも嫌がっているのかなと思った。
染まるほど外を知らないし、自分で取捨選択くらいできるのに。
撮影の現場に到着した。僕が来ているのは内緒のようでフードを深く被り母さんは事務所の人間が見学に来たと説明して僕は首から見学者の札をぶら下げる。顔を隠しても警戒されないとは母さんの免罪符というものが大きいのか管理が甘いのかどうなんだ。
「さて、見学者用の椅子あそこにあるから座ってて!変な人についてっちゃダメよ。じゃあいくね」
そう言って母さんはスタッフさんたちの方へ向かった。僕は指された方へ歩いて向かう。
「あの…見学者の方ですよね」
「はい」
男とバレない方がいいのかと思い。小さい声で少し作った声で返事をする。
「今日の撮影でエキストラが必要なところがありまして…ご協力とかって可能ですか?あんまり集まらなかったんです!」
僕はどうしたものかと悩ませていると続けて話す。
「あの台詞もないですし、出演料もお支払いするのでどうですか?」
それ以前の問題だと思うが、困った様子の人を無視することもできない。それに僕は今見学者の立場、協力するのが筋であろう。だから、折衷案として向こうから諦めてもらうということにした。
僕は立ち上がり、彼女の手を引いて物陰へ連れ込む。
「あの…えっと…私、やることあるんですけどぉ…」
彼女と手を繋いだまま反対の手でフードを外す。
「…………っ!!!!!?!?」
「こういう事情でエキストラの件は諦めてもらえると嬉しいんですよね」
彼女は僕の顔を見て固まってしまった。数秒固まったのちに繋いでいる手を見て再び僕の方へ目を向ける。その様子が面白くて微笑んだ。
「逢引…」
「それならもっとロマンチックに誘ってみせますよ」
彼女は目をキラキラさせている。
「男性ですよね?」
「そうですよ」
「私に触ってますけどいいんですか?」
「嫌でしたか?」
「全く!もっと触ってほしいです!!」
小動物みたいで可愛らしく頭を髪型を崩さないように撫でた。そこからしばらく無言の時間が続いた。
「卯城~!!」
「は、はい! 呼ばれちゃいました。エキストラの件は了解しました。幸せな時間でした王子様!!」
そう言って彼女は走って行った。3回ほどこちらを振り返って名残惜しそうにしていたのは気のせいじゃないと思う。
「本当に男というだけで価値が生まれてしまうんだな」
フードを被り戻る。この言葉僕自身の受けた反応や対応と共に、入ってきた男性に対しての周りの反応について思った。
0
あなたにおすすめの小説
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
男女比5対1の女尊男卑の世界で子供の頃、少女を助けたら「お嫁さんになりたい!」と言って来た。まさか、それが王女様だったなんて……。
楽園
恋愛
「将来、あなたのお嫁さんになりたい」
10年前、俺は魔法の力で一人の少女を救った。
……そして現在。ここは男女比5:1の女尊男卑の世界。
男は女に「選ばれる」ためだけの存在する。
俺、アルトは、前世の記憶と女でさえ持っていない無限の魔力を隠し、父と静かに暮らす「モブ」になるはずだった。
「待っていましたわ、アルト」
学園で再会したあの時の少女は、驚くべきことにリリアーナ王女だった。
どうやら彼女、あの日の「約束」を本気で果たしに来たらしい。
(俺の平穏なモブ生活が……!)
最強を隠したい男と、その秘密ごと彼を手に入れたい王女の、すれ違い学園ファンタジー!
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる