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【43】
王城の裏庭には二羽の鶏と、そうして小さな小屋がある。
そこに「伝説の侍女」がいる。
なんでも結構な高齢で、もう働けないが為に、一日中、裏庭の小屋でサボっているのだと言う。彼女がそんな好待遇でいられるのには理由がある。
彼女はどうやら魔法が使えるらしい。
「とんだ失礼な噂よね、そう思わない?スマラグドゥス。」
サフィニアは、ルーナが黄金卵を産むのを待ちながら、隣りにしゃがみ込む少女に話し掛けた。
「結構な高齢というところは噂通りです。」
「貴女、はっきり言うわね。粗茶出すわよ。」
「それはご勘弁下さい。」
ルーナが産んだ卵を汲み置いた井戸水に沈めると、桶の中で日を浴びた卵は黄金色に輝いて見えた。
「さあ、お茶にしましょうか。」
侍女服と間違われても仕方の無い事だろう。ディアマンテを弔ってから、サフィニアは漆黒のドレスしか身に着けていなかった。第一子の王太子が国王に即位して、サフィニアは一線を退き離れの棟に住まいを移した。
嘗て王族が住まっていた部屋を整え、王太后の間として隠居生活を送っている。暖炉脇から隠し通路へ入る通い慣れたあの部屋である。
「ディアマンテ様。貴方ったら酷い人ね。私より四つも若いのに、私より先に逝ってしまうだなんて。」
「お辞め下さい。その台詞、今朝も聞きました。年寄りは同じ事を繰り返し言うのだそうです。」
「台詞ではなくてよ、真実よ。夢でくらい文句を言いたいじゃない。」
「先王が儚くなられて五年も経つのですよ。毎日夢に呼び出されて文句を聞かされるのは、さぞお辛い事でしょう。」
「ケチな事を言わないで。恨み節くらい言わせてほしいわ。私は一人取り残された淋しい未亡人なのよ。」
国政から退いて、サフィニアは愈々人生の集大成とも言える書籍『エルダード王家 その秘する叡智大全』の執筆に勤しんでいる。同時に新たな秘薬作りに励んでいる。
その秘薬の一つが噂の種になっているらしい。
「夢で逢うくらい良いじゃない。夢の中でだけでも逢いたいのよ。」
「毎日お会いになられているではないですか。」
「確かに。」
サフィニアの作り上げた秘薬は、深層意識に働き掛けて記憶を鮮明に呼び起こす効能がある。服用して微睡めば、正しく白昼夢の様に夢の中でまざまざと逢いたい人に逢えるのだ。
サフィニアは、そうやって思い出の中に生きるディアマンテと今も逢瀬を重ねている。そうやって、最愛を失った哀しみを癒している。
「ちょっと許し難いのは、ディアマンテ様ったら、若い頃の姿で現れるのよね。こちらは老婆だと言うのによ。」
「それはお若いディアマンテ様にお会いしたいと言うサフィニア様の願望の現れでは。」
「確かに。」
噂に釣られて最近では、この庭に「伝説の侍女」に会おうと度々人が訪れる。勝手に伝説にしないでほしいが、大抵が幻覚キノコの効力で何も感知出来ぬままとんぼ返りする。
だが、偶にいるのだ。無心で願い信じる人が。
疑いを持たず心から信じて、そうして願いを深く胸に抱く人物は、幻覚キノコに惑わされる事なく小屋の扉をノックする。しかも、揃いも揃ってソールとルーナが懐いちゃって、態々お迎えに行くのだから仕方がない。
そんな場面でサフィニアは、小さなスマラグドゥスを隠し通路に隠して、渋々彼女らと向き合うのだった。
願い事の99%が「恋愛関係」で、サフィニアの処方する秘薬のお蔭で鮮明な夢を見る。精神に強く刷り込まれた夢の影響か、何故だが恋愛成就率が爆上がりして、サフィニアはその因果関係を調べる為に、彼女等から対価として結果報告を受けてはデータを収集しているのだった。
「信じる者は救われるって、本当に貴方の言った通りね、スマラグドゥス。」
横の少女は自身の名を呼ばれているのに、それには答えなかった。何故なら彼女はスマラグドゥスであってスマラグドゥスではない。正確に言うなら、サフィニアに知識を授けたスマラグドゥスではなく、その後継のスマラグドゥスであった。
スマラグドゥス=エメローダとは、総称である。
王家の祖から仕える一族の総称。何代にも渡って王家の為にあらゆる知恵を集め知識を蓄える一族である。彼らを称して『叡智』と呼ばれている。彼らは王国の知識の宝庫として王城に秘されていたのが、いつの世からか王族ですら容易く相見えない存在となっていた。
嘗て、サフィニアが王家の禁書棚で見つけた書物、王城の構造図を書き記したのは、翠の瞳のスマラグドゥスより数代前のスマラグドゥスである。
大抵は、男性であればスマラグドゥスを、女性であればエメローダを名乗るらしいがそれはどうやら本人次第、自由に選択するらしい。そう言えば、彼は出会う人が自分を男性と見るか女性と見るかで名を変えていた。
「だから余計に拗れたのよ。」
エメローダがディアマンテの想い人だと、サフィニアは随分心を悩まされた。それも今はもう笑い話しでしかない。
ソールとルーナも同様で、初代ソールと初代ルーナから脈々と続く子孫は皆んなソール、ルーナと名付けられる。餌に秘薬を与えられて黄金色の卵を産み出す鶏一族の名前である。
全く以て面倒な一族だとサフィニアは呆れた事がある。
一族の当代で最も才の秀でた者が襲名する『叡智・スマラグドゥス=エメローダ』
彼らに会えず終わる王族は多い。寧ろ、大半が『叡智』に会わずにその生涯を終えるのだと言う。
豊かで平和な王国に危機感が無かった為だろうか。よく解らないのだが、小屋へ通じる扉の鍵だけが王から王へと代々受け継がれて、実際『叡智』との邂逅を果たせた王は幾人もいないのだとは、翠の瞳のスマラグドゥスから聞いた事だ。現に、即位した息子もこの少女に未だ会えずにいる。
『君等みたいに夫婦で私に会うだなんて、長い王国の歴史でも初めてだろうね。』
翠色の瞳をきょろりとさせて、彼はそう言ったのだ。
現スマラグドゥスは十歳の少女である。非凡な才を認められて、幼くして『叡智』となった。そうして彼女の後見をサフィニアが担っている。それは親友スマラグドゥスから託された事であった。
「ねえ、ステラ。ユニベルソは元気なのかしら。」
「あの御方は、今は恋をなさっておられるのだそうです。」
「えっ、恋?」
「老いらくの恋なのだそうです。」
「子供になんて言葉を教えるのかしら。」
『スマラグドゥス=エメローダ』には真名がある。現スマラグドゥスの少女の名はステラという。そうして懐かしい友、淡い金の巻き髪を背中に遊ばせ濃い翠色の瞳で鷹揚に振る舞う、サフィニアの師にして親友スマラグドゥスの名はUniversoという。ディアマンテも知らない、サフィニアだけが明かされた『叡智』の本当の名である。
そう言えば、ディアマンテがエメラルド鉱脈を宇宙の様だと言っていた。そうしてスマラグドゥスもまた宇宙の名を真名に持っているのだと思い出す。
夜空に瞬くエメラルド。貴方もまだ元気でいるのね。
ダイヤモンドとエメラルド。綺羅星に囲まれて、賑やかな人生だったと思う。
「サフィニア様。客人が来ますよ。」
「恋のご相談かしら。」
「99%そうでしょう。統計によれば。」
「確かに。」
幼いのにサフィニアより遥かにしっかり者の少女に急かされて、サフィニアは「伝説の侍女」っぽく澄まし顔でソファーに腰掛け扉が開くのを待つ。
侯爵家に嫁いだ末娘の三男であるスチュアートの想い人が訪ねて来るまで、あともう少し。
完
そこに「伝説の侍女」がいる。
なんでも結構な高齢で、もう働けないが為に、一日中、裏庭の小屋でサボっているのだと言う。彼女がそんな好待遇でいられるのには理由がある。
彼女はどうやら魔法が使えるらしい。
「とんだ失礼な噂よね、そう思わない?スマラグドゥス。」
サフィニアは、ルーナが黄金卵を産むのを待ちながら、隣りにしゃがみ込む少女に話し掛けた。
「結構な高齢というところは噂通りです。」
「貴女、はっきり言うわね。粗茶出すわよ。」
「それはご勘弁下さい。」
ルーナが産んだ卵を汲み置いた井戸水に沈めると、桶の中で日を浴びた卵は黄金色に輝いて見えた。
「さあ、お茶にしましょうか。」
侍女服と間違われても仕方の無い事だろう。ディアマンテを弔ってから、サフィニアは漆黒のドレスしか身に着けていなかった。第一子の王太子が国王に即位して、サフィニアは一線を退き離れの棟に住まいを移した。
嘗て王族が住まっていた部屋を整え、王太后の間として隠居生活を送っている。暖炉脇から隠し通路へ入る通い慣れたあの部屋である。
「ディアマンテ様。貴方ったら酷い人ね。私より四つも若いのに、私より先に逝ってしまうだなんて。」
「お辞め下さい。その台詞、今朝も聞きました。年寄りは同じ事を繰り返し言うのだそうです。」
「台詞ではなくてよ、真実よ。夢でくらい文句を言いたいじゃない。」
「先王が儚くなられて五年も経つのですよ。毎日夢に呼び出されて文句を聞かされるのは、さぞお辛い事でしょう。」
「ケチな事を言わないで。恨み節くらい言わせてほしいわ。私は一人取り残された淋しい未亡人なのよ。」
国政から退いて、サフィニアは愈々人生の集大成とも言える書籍『エルダード王家 その秘する叡智大全』の執筆に勤しんでいる。同時に新たな秘薬作りに励んでいる。
その秘薬の一つが噂の種になっているらしい。
「夢で逢うくらい良いじゃない。夢の中でだけでも逢いたいのよ。」
「毎日お会いになられているではないですか。」
「確かに。」
サフィニアの作り上げた秘薬は、深層意識に働き掛けて記憶を鮮明に呼び起こす効能がある。服用して微睡めば、正しく白昼夢の様に夢の中でまざまざと逢いたい人に逢えるのだ。
サフィニアは、そうやって思い出の中に生きるディアマンテと今も逢瀬を重ねている。そうやって、最愛を失った哀しみを癒している。
「ちょっと許し難いのは、ディアマンテ様ったら、若い頃の姿で現れるのよね。こちらは老婆だと言うのによ。」
「それはお若いディアマンテ様にお会いしたいと言うサフィニア様の願望の現れでは。」
「確かに。」
噂に釣られて最近では、この庭に「伝説の侍女」に会おうと度々人が訪れる。勝手に伝説にしないでほしいが、大抵が幻覚キノコの効力で何も感知出来ぬままとんぼ返りする。
だが、偶にいるのだ。無心で願い信じる人が。
疑いを持たず心から信じて、そうして願いを深く胸に抱く人物は、幻覚キノコに惑わされる事なく小屋の扉をノックする。しかも、揃いも揃ってソールとルーナが懐いちゃって、態々お迎えに行くのだから仕方がない。
そんな場面でサフィニアは、小さなスマラグドゥスを隠し通路に隠して、渋々彼女らと向き合うのだった。
願い事の99%が「恋愛関係」で、サフィニアの処方する秘薬のお蔭で鮮明な夢を見る。精神に強く刷り込まれた夢の影響か、何故だが恋愛成就率が爆上がりして、サフィニアはその因果関係を調べる為に、彼女等から対価として結果報告を受けてはデータを収集しているのだった。
「信じる者は救われるって、本当に貴方の言った通りね、スマラグドゥス。」
横の少女は自身の名を呼ばれているのに、それには答えなかった。何故なら彼女はスマラグドゥスであってスマラグドゥスではない。正確に言うなら、サフィニアに知識を授けたスマラグドゥスではなく、その後継のスマラグドゥスであった。
スマラグドゥス=エメローダとは、総称である。
王家の祖から仕える一族の総称。何代にも渡って王家の為にあらゆる知恵を集め知識を蓄える一族である。彼らを称して『叡智』と呼ばれている。彼らは王国の知識の宝庫として王城に秘されていたのが、いつの世からか王族ですら容易く相見えない存在となっていた。
嘗て、サフィニアが王家の禁書棚で見つけた書物、王城の構造図を書き記したのは、翠の瞳のスマラグドゥスより数代前のスマラグドゥスである。
大抵は、男性であればスマラグドゥスを、女性であればエメローダを名乗るらしいがそれはどうやら本人次第、自由に選択するらしい。そう言えば、彼は出会う人が自分を男性と見るか女性と見るかで名を変えていた。
「だから余計に拗れたのよ。」
エメローダがディアマンテの想い人だと、サフィニアは随分心を悩まされた。それも今はもう笑い話しでしかない。
ソールとルーナも同様で、初代ソールと初代ルーナから脈々と続く子孫は皆んなソール、ルーナと名付けられる。餌に秘薬を与えられて黄金色の卵を産み出す鶏一族の名前である。
全く以て面倒な一族だとサフィニアは呆れた事がある。
一族の当代で最も才の秀でた者が襲名する『叡智・スマラグドゥス=エメローダ』
彼らに会えず終わる王族は多い。寧ろ、大半が『叡智』に会わずにその生涯を終えるのだと言う。
豊かで平和な王国に危機感が無かった為だろうか。よく解らないのだが、小屋へ通じる扉の鍵だけが王から王へと代々受け継がれて、実際『叡智』との邂逅を果たせた王は幾人もいないのだとは、翠の瞳のスマラグドゥスから聞いた事だ。現に、即位した息子もこの少女に未だ会えずにいる。
『君等みたいに夫婦で私に会うだなんて、長い王国の歴史でも初めてだろうね。』
翠色の瞳をきょろりとさせて、彼はそう言ったのだ。
現スマラグドゥスは十歳の少女である。非凡な才を認められて、幼くして『叡智』となった。そうして彼女の後見をサフィニアが担っている。それは親友スマラグドゥスから託された事であった。
「ねえ、ステラ。ユニベルソは元気なのかしら。」
「あの御方は、今は恋をなさっておられるのだそうです。」
「えっ、恋?」
「老いらくの恋なのだそうです。」
「子供になんて言葉を教えるのかしら。」
『スマラグドゥス=エメローダ』には真名がある。現スマラグドゥスの少女の名はステラという。そうして懐かしい友、淡い金の巻き髪を背中に遊ばせ濃い翠色の瞳で鷹揚に振る舞う、サフィニアの師にして親友スマラグドゥスの名はUniversoという。ディアマンテも知らない、サフィニアだけが明かされた『叡智』の本当の名である。
そう言えば、ディアマンテがエメラルド鉱脈を宇宙の様だと言っていた。そうしてスマラグドゥスもまた宇宙の名を真名に持っているのだと思い出す。
夜空に瞬くエメラルド。貴方もまだ元気でいるのね。
ダイヤモンドとエメラルド。綺羅星に囲まれて、賑やかな人生だったと思う。
「サフィニア様。客人が来ますよ。」
「恋のご相談かしら。」
「99%そうでしょう。統計によれば。」
「確かに。」
幼いのにサフィニアより遥かにしっかり者の少女に急かされて、サフィニアは「伝説の侍女」っぽく澄まし顔でソファーに腰掛け扉が開くのを待つ。
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