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ここは魔法の世界
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鬱蒼と茂る木々が光を通さない。湿り気を含んだ風が頬を撫ぜて、鳥肌が立った。息が切れる、汗が滴る。華楠は何者かに追われている気がしてならなかった。
時は数時間前に遡る。
ふと目覚めると、そこは川辺だった。顔半分が水に浸かっていて、慌てて顔を上げる。水をいくらか吸い込んでしまって鼻がツンとした。川というより沢ほどの細々とした流れを見ていると、喉が渇いてきて、安全かわからないが沢の水を飲んだ。
喉をうるおしてやっとあたりの様子に目を配る余裕ができる。
周囲は三百六十度、森だった。白樺の木がまばらに植わっていて、やわらかな午後の日差しが緑のステンドグラス越しに降り注ぐ。ぽかぽかとした春の陽気に眠くなりそうだったが、ひとつの疑問が華楠を眠らせない。
ここは、どこ?
てんで見覚えがない場所だった。華楠が暮らしているのは東京の下町で、大きな森などは辺りにはない。どうしてこんなところにいるのだろう。自分の行く末を案じて、華楠は頭を抱えた。
やがて悩んでいても仕方ないと開き直り、適当な方向に歩き出した。
しばらく歩いていると、森の中に石が敷かれた小道とログハウスのような見た目の家が見えた。家の周囲は落ち葉が綺麗に掃除されているため、人が住んでいるのではないだろうか。中を覗き込もうと一歩踏み出したとき、ドアが開いた。
赤っぽい巻き毛の女性が出てくる。頬にはそばかす、服装は紺色のロングワンピース、とんがった靴と帽子を身につけている。まるで絵本に出てくる魔女のお手本のようだった。それにしては、鼻が低く童顔な気がしないでもないが。女性は華楠に気が付き、柔らかく笑む。
「あら、人間の女の子だわ。」
素朴な笑顔が眩しかった。
彼女は華楠を家に招き入れた。家の中は想像通り、絵本の世界やヨーロッパの暖かみのある木の壁や暖炉やソファが置かれていた。食卓を囲うワイン色の皮の椅子に彼女と向かい合って腰掛ける。
「私の名前はリリア。ここで暮らしているわ。」
彼女───リリアは素朴な笑みを浮かべた。華楠とあまり変わらない歳に見えるが、華楠が思うより歳上なのかもしれない。童顔の彼女の端々から知性が漂っている。
爽やかな風味の紅茶を煎れ、サンドウィッチや肉、フルーツを食卓に並べ、空腹の華楠をもてなしてくれた。有難くそれをいただく。カリカリベーコンとチーズとレタス、トマトのサンドウィッチは歯ごたえもよく、パンに塗られている特製ソースが食欲をそそった。それからソーセージの肉汁を堪能し、デザートに完熟して赤みがかった桃を食べる。一人前よりは少ない量だが、今の華楠にとってはごちそうだ。
すべてをおいしく平らげ、紅茶で口直しをする。やっと落ち着きを取り戻した華楠を、リリアはずっとにこにこと見つめていた。おいしそうに食べるわねぇと満面の笑みで言われて少し照れる。
「それで、どうしてここへ来たの?」
紅茶を口に運ぶと、リリアから質問が降ってきた。どうして、とは、どのように、か、なぜ、か。意味を図りかねていると、リリアは優しげに目を細めた。
「言いたくないなら、言わなくていいのよ。」
なるほど、確かに華楠は進んで話したいというわけではない。頷くと彼女は紅茶を啜り、口を開いた。
「いいわ。私の方が説明しなければならないことがあるもの、人間のあなたに。」
華楠は無意識にごくり、と息をのんだ。
全ての説明を聞き終わった時、華楠は呆けていた。情報量の多さに処理が追いつかない。パソコンが頭の中でくるくると読み込みを繰り返していた。
なぜならリリアは開口一番こう言ったのだ。
「ここは魔法の世界。」
その時点で「は?」という言葉が口から漏れた。イギリスの某大人気魔法小説は大好きだったが、とうとう好きすぎて夢に見たのかと思った。ありきたりだが頬をつねってみる。地味に痛い。そんなことをしている間にも、彼女は説明を続けていく。
「人間の住む世界と表裏一体となった、平行軸に存在するのがこの世界。あなたは人間の世界からこちらへ落ちてきたのね。この世界は力の差はあれど皆が魔法を使えるの。この空気がそれを可能にする。」
しかしどうやら違うらしい。某小説ではこんなこと言っていなかった。それにこの魔法の世界と人間の世界は、自由に行き来できるわけでもなさそうだった。
「この国はドラドというの。言葉通り黄金の国よ。小さな国だけれど古くから金が採れるこの国はそれで栄えている、大陸の端の国。このあたりはないけれど、王都の方へ行くと全てが金だったりするわ。」
遠い昔、日本が黄金の国ジパングと呼ばれていたと歴史の授業で習ったことを思い出す。平行軸なら、この国は日本ということだろうか。日本語を話しているし。
「ドラドは多種多様な民族が暮らしていることで有名なのよ。」
そう言って彼女は部屋の壁面に飾られた地図を指す。見れば、いくつかの地域に土地の名前と民族の名前が書かれていた。文字は崩した字体で、草書というものなのか、ほとんど読めない。
ざっと説明をされたけれど、次のものが来ると忘れてしまうので最後の王都しかわからなかった。台形のに近い形の国の中央にある楕円の場所、王都には囲いがあるらしい。入口はひとつしかない。
だいたい12の民族が8の都市に分布している。森に川に砂漠に草原、山地、海など、忙しない土地だが、その中、北北東あたりに都市と同じくらい広い土地がある。四角く囲われたそこには、文という地図記号が見えた。
「ここって・・・」
「ああそこは学園よ。ドラド唯一の、魔法使いの免許がとれる学園。」
「魔法使いって免許いるんですか。」
「いるわよ。ドラドは申請無しに便利魔法以外を使ったり、箒で飛んじゃいけない場所をやたら飛んだりしたら法律違反よ。」
魔法が使える世界もなかなかシビアらしい。確かに魔法が飽和したら大変そうだが。
「ほかにも初等、中等教育を受けられる学校は地域ごとにあるけれどね、高等学校以降はあまり人数が集まらないの。だから工業地帯に職に就くための高等学校をひとつ、ここの広大な土地に魔法使いになるための総合学園をひとつ。この北極星学園は初等部からあるのよ。」
つまりエスカレーター式ということだ。高校受験に翻弄された華楠としては羨ましい制度だった。
「それで、私は今何処にいるんですか?」
尋ねると、リリアは地図の北東を指した。広い森と都市が隣合い、都市の東は海が広がる場所の、森の中だった。
「ここは鳥の民族が暮らす鳥の街と学園の中間。」
森の奥には死神さまの館があるわよ、とリリアは妖しげに笑った。
「さ、説明は終わりね。明日にでもどこかの都市へ行きましょうね、今後のあなたの身の振り方を考えてあげるわ。あなた箒で玄関を掃いてくれる?」
そういって家事をはじめる彼女の声は、もう耳に入らなかった。
呆然と箒を動かす華楠の足元の落ち葉はいっこうに片付かない。フリーズした頭でもはっきり思った。逃げよう、と。
本当に魔法の世界なのか、確かめる術はなかった。例えばリリアと名乗る彼女が凶悪な犯罪者で、嘘をついて山奥に人を監禁したり、殺したりすることは難しくないのだ。
それに魔法の世界だとしても、こんな森の奥にいては何も出来ないし危険だ。死神がいるかも知れない。
せっかく自由になれたのに、リリアに軟禁されるのでは堪らない。身の振り方を考えてあげる、という物言いにも驚いた。まるで人間を見下している。確かに魔法が使えないということはこの世界では劣等種なのだろうけど。華楠は箒の柄を固く握り締める。
逃げなければ。
しばらくして、リリアが華楠を家の中に入れた。お風呂が沸いたわよと言われて頷く。リリアに先に入らせて、その隙に逃げようと思った。
華楠の思惑通り、リリアは先に入った。石鹸と花の香りと湿気が漂ってきて、水音が響く。今だ、と思い風呂に続く扉を凝視したまま、後ろ手に玄関の戸を開いた。ひゅる、と春の夜の冷たい風が頬を撫ぜるので、華楠は走り出した。
走っている最中、目の前を何かが横切り、足を止める。鳥だろうかと思って目をやると、そこには異形のものがいた。大きなひとつ目玉の、龍のような胴からコウモリのような羽が生えた、手のひらほどの大きさのなにか。幻覚かと思ったが、それは確かに華楠の額をかすめた。
「まほう、の、世界・・・」
ごくりと唾を飲む。冷や汗が垂れた。ここは本当に魔法の世界なのだと。
華楠は大きく笑って歩き出した。
湿った空気を、森の濃密な土のにおいを胸いっぱいに吸い込んで、時折後ろを確認しながら歩く。息切れがひどく、汗をかいた。
2時間ほど、休憩を挟みつつ歩いた。あたりはとっぷり日が暮れ、そらを見上げると月明かりがかすんで見えた。足が棒になり、震えが止まらない。春の夜は思いのほか冷たかった。
木々がまばらになり、月がよく見えるひらけた場所に出て、やっと腰掛ける。木にもたれかかって、ふたたび空を見上げた。そのまま、吸い込まれるように眠りに落ちる。
見えた月は綺麗だった。
突然、体が宙に浮く感覚がした。重力に逆らって、上に持ち上がる。制服の背中が何かに掴まれて吊られていた。
目を白黒させながら、とにかく上を見る。すると、頭部は鳥、胴は人、腕は翼、足には鉤爪という風貌の言わば異形が、華楠の服の背中部分を掴んで飛んでいた。目は虚ろで、見えない力に引っ張られるかのように、その異形の鳥人間は空へのぼっていく。恐怖で涙がこぼれた。
いま、自分は死ぬのだ。このまま、自由になったのに、鳥人間に殺される。
無念を噛み締めながら目を瞑った。瞬間───
ふっと背中を吊られていた感覚が消える。
「大丈夫、すぐに終わるよ。」
どこか懐かしいような声がした。優しくてあたたかくて、でも力強い声。
誘われるように目を開くと、一体どこから現れたのか、目の前に青年が宙に浮いていた。
「あれ、君は・・・」
青年が呟くように言った。
白と茶の混じった髪に、つぶらな目は金色、幼さの残る顔から、華楠と変わらない年に見える。
「え・・・」
華楠は戸惑い、それからジェットコースターを思い出す。強力な重力がかかって、臓器が浮くような感覚。
「お、落ちていってますけど・・・!?」
「うん、そうだね。」
青年も落ちている。そんな状況にも関わらず、彼は落ち着いた様子だった。悠長に空の彼方を見やる。
「そろそろ来るはずだよ。」
「なにが!?」
華楠はというと、完全にパニックに陥り泣き叫んでいた。対照的に彼はとてもリラックスしている。
「フクロウ。」
そう言ったとき、梟が現れた。相当遠くから来たのだろう、風より速く、風を切る音がした。
あっけに取られて梟を見ていたら、目の前が急に布に覆われた。華楠と青年を包み込むほどの大きな布───だと思ったそれは、
「羽根・・・?」
その羽根に包まれ、華楠と青年の落下は減速する。羽根の主を見ると、それもまた鳥人間だった。先程の異形の黒ずんだ羽根とは違う、茶色がかったフクロウの羽根なのだが。彼もまた、胴は人、足には鉤爪、腕は翼だった。頭部だけは先ほどと異なり、人の頭をしている。垂れた金色の目に金と銀とグレーの髪、彫りの浅い鼻、真っ白な歯。
彼は日に焼けた肌に映える白い歯をのぞかせた。
「この人は味方だから大丈夫、大丈夫。」
青年が幼子をあやす様に繰り返し大丈夫と言う。そしてその言葉通り、華楠は安全に地面に下ろされたのだった。
慣れ親しんだ地面、文字通り地に足がつく感覚に感動する。ほっとしていると、フクロウの羽根をもつ彼がニコニコと笑って華楠を見ていた。
「俺はフクロウ、よろしくな。」
いとおしむような視線を向けられたのは初めてで、少しばかり戸惑う。
すると、もう一人の青年がフクロウ、討伐と言った。その言葉に頷き、彼がふたたび飛び立った先には華楠を掴んでいた鳥人間がいた。
はらはらしながら見守っていたが、ほんの数秒後、それは杞憂であったと思った。彼は上空で鳥人間と向き合うと、光の速さで横切った。一瞬、すれ違う瞬間だけ片翼がひとのそれに変わる。その手には刃物があって、通り抜けた後に鳥人間は靄を撒き散らして夜の闇に熔けた。切られたのだと気づくまでに数秒かかった。
フクロウが空を飛んでいる間、白髪の青年は華楠に付き添っていた。彼はフクロウを見上げながら唐突に「君は人間だよね。」
と言った。看破されていたことに驚きつつ頷く。
「俺はスズメ。君の名前はなんていうの。」
「わ、わたしは」
そのとき、どこからか「スズメー!」という複数の声が聞こえた。見ればわらわらと個性の塊のような人達が歩いてきていた。華楠とスズメの周りに円陣になってごく自然に雑談をはじめる。
「リーダーは?」
朱鷺色の髪の人が言う。
「迷子ちゃう?」
関西弁を話している人はセンター分けの金髪。
「あ、降りてきたよ。」
もう一人の金髪の人が言った。色の濃いサングラスをしているので表情はわかりにくい。
「やってるなら援護したのに。」
茶髪をつんつんに立てた人は少し不満げだった。エメラルドを嵌め込んだような綺麗な目をしている。
彼の言葉にサングラスの人は目を三角にした。
「えっ、またリーダーだけやってんの!?ずるい!!」
するとスズメが目を光らせる。
「ちなみに、今月の暫定一位はリーダーで、二位がツバサだ。三位はヨタカだけど、二位と三位の間にはかなり差がある。さて今月は、どっち?」
瞬間、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。皆好き勝手に話していて、収拾がつかない。
「リーダーやろ?」
「でもツバサ、リベンジに燃えている。」
「俺は、リーダーにワッフル二つね。」
「・・・・・・ツバサに、いちごみるく。」
黒い短髪の人が初めて口を開いた。
「一周まわってヨタカに梅干し。」
「え、じゃあ俺もお稲荷さん二つや!」
「おれもおれも、卵焼き!」
急に始まった自由すぎる賭けに困惑していると、それを察した一人が説明してくれた。
「賭けてるのは、魔物の討伐数。あと、討伐補佐もあるんだけど、これはタカが不動の一位だから賭けてない。毎月たいてい、ツバサとフクロウとヨタカで競ってるんだ。ま、俺は参加しないが。」
これがタカ、と指したのは茶髪を立てた人。優しげな顔をしていて、なんだか河童に見える気がする。
これがツバサ、と指したのはサングラスの人だった。集団の中で抜群に顔が整っていて、サングラス越しに見える潤んだ目にドキリとした。
ヨタカはここにはいないらしい。説明してくれた彼はクジャクというらしかった。青や紫や青緑に輝く髪と瞳が特徴的で、七三分けから几帳面な印象を受ける。
「魔物っていうのはさっき君が襲われてたアレね。アレは色んな形があるけど、全部悪い魔法使いの組合で造られてる魔力の塊みたいなもの。」
タカが追って説明をしてくれた。
「あないな奴らは夜じゃないと造れへんねん。つまり俺らは朝日ん昇る前に魔物を倒すことをしとって、その数を競っとるんや。」
関西弁の人はにこりと狐のような顔で笑った。
「ちなみに俺はハト、こいつはトキや。」
関西弁の人──ハトは朱鷺色の髪の人──トキの方を抱いた。トキはもう一人、寡黙な黒髪の人を指す。
「こいつはウグイスね。」
ウグイスはぺこりと頭を下げ、つられて華楠も会釈をする。ハトが笑った。
「魔物の討伐とか補佐とか救護とか、それぞれ能力に応じて与えられた仕事があるから、それの達成度によって推薦が貰える。だから皆、競ってるんだよ。」
最後にスズメがまとめて、華楠の疑問は解消した。
場が妙に静まり返ると、途中から黙りこくっていたツバサが急に叫んだ。
「俺は、俺に、肉!!」
それで、皆、リアクションもバリエーションも様々に大爆笑してしまった。ツバサがあまりに情けない顔をしているものだから、失礼とは思いつつも笑わずにはいられなかったのだ。
「あ!見てよ!」
不意に、トキが上空に目を向ける。
「おーい!!」
見れば、フクロウがこちらに戻ってきていた。彼は着地して、皆を見渡す。
「これで全員揃ったな。」
「遅いよリーダー、俺らもう自己紹介終えたよ。」
「なにっ!」
「しかも全員じゃないでしょ、あと一人いる。」
ツバサとタカの言葉に他のメンバーも賛同する。どうやら二人は準リーダー格らしかった。
改めて、集まっている八人を観察する。ワイシャツに重厚感のある金色のネクタイ、濃い灰色のスラックスを着用していた。スズメは袖をまくったスタイルで、クジャクはネクタイをせず淡い紫色のセーターを着ている。他の六人は白いローブを着ていた。全体的にシンプルな格好だが、フードだけは色がそれぞれで鮮やかだった。しかし、統一感のあるそれには見覚えがある。
「・・・制服」
小さく呟くと、フクロウは頷いた。
「おう。」
「・・・学生?」
見上げると、彼は得意げに唇の端を上げた。その妖しさに、心臓が跳ねる。
「俺たちは、梟部隊だ。」
梟部隊、という聞き慣れない単語に好奇心が薄れていった。いまいち釈然としない華楠に、他のメンバーが吹き出した。
「嘘でしょリーダー、カッコつけすぎじゃん~」
ツバサは一部始終を動画に収めていたようで、スマートフォンを掲げている。魔法の世界で初めて見た、そんな現代的な機械。
「空が綺麗だなァ。」
「ちょお待ち、こいつ聞いとらん。」
「・・・・・・。」
「リーダーだけは通常運転だね。」
トキは話を聞いていないし、ハトはそんなトキに笑っている。ウグイスは変わらず笑みを浮かべ、タカはのんびりと目を細めた。
「よろしく!」
「うちのフクロウがすみません。」
それらの反応を歯牙にもかけず、握手を求めてくるフクロウ、謝罪するスズメとクジャク。
「本当に、自由だな・・・。」
握手しながら脱力していると、フクロウが笑った。
「これから行くアテは?」
ない。それに魔法も使えない。せっかく新しい人生の始まりに高鳴っていた胸がしぼむように萎えていく。
打ちのめされていると、ツバサが意味ありげな視線をよこした。
「花が咲かせられれば、君も入れるよ。俺たちの通う学校──」
「行きたい!」
思わず言い終わらないうちに返事をしていた。彼は笑みを広げた。
「君、名前は?」
華楠も、目いっぱいの笑顔を返した。
「華楠!花巻華楠です!これからよろしくお願いします!」
時は数時間前に遡る。
ふと目覚めると、そこは川辺だった。顔半分が水に浸かっていて、慌てて顔を上げる。水をいくらか吸い込んでしまって鼻がツンとした。川というより沢ほどの細々とした流れを見ていると、喉が渇いてきて、安全かわからないが沢の水を飲んだ。
喉をうるおしてやっとあたりの様子に目を配る余裕ができる。
周囲は三百六十度、森だった。白樺の木がまばらに植わっていて、やわらかな午後の日差しが緑のステンドグラス越しに降り注ぐ。ぽかぽかとした春の陽気に眠くなりそうだったが、ひとつの疑問が華楠を眠らせない。
ここは、どこ?
てんで見覚えがない場所だった。華楠が暮らしているのは東京の下町で、大きな森などは辺りにはない。どうしてこんなところにいるのだろう。自分の行く末を案じて、華楠は頭を抱えた。
やがて悩んでいても仕方ないと開き直り、適当な方向に歩き出した。
しばらく歩いていると、森の中に石が敷かれた小道とログハウスのような見た目の家が見えた。家の周囲は落ち葉が綺麗に掃除されているため、人が住んでいるのではないだろうか。中を覗き込もうと一歩踏み出したとき、ドアが開いた。
赤っぽい巻き毛の女性が出てくる。頬にはそばかす、服装は紺色のロングワンピース、とんがった靴と帽子を身につけている。まるで絵本に出てくる魔女のお手本のようだった。それにしては、鼻が低く童顔な気がしないでもないが。女性は華楠に気が付き、柔らかく笑む。
「あら、人間の女の子だわ。」
素朴な笑顔が眩しかった。
彼女は華楠を家に招き入れた。家の中は想像通り、絵本の世界やヨーロッパの暖かみのある木の壁や暖炉やソファが置かれていた。食卓を囲うワイン色の皮の椅子に彼女と向かい合って腰掛ける。
「私の名前はリリア。ここで暮らしているわ。」
彼女───リリアは素朴な笑みを浮かべた。華楠とあまり変わらない歳に見えるが、華楠が思うより歳上なのかもしれない。童顔の彼女の端々から知性が漂っている。
爽やかな風味の紅茶を煎れ、サンドウィッチや肉、フルーツを食卓に並べ、空腹の華楠をもてなしてくれた。有難くそれをいただく。カリカリベーコンとチーズとレタス、トマトのサンドウィッチは歯ごたえもよく、パンに塗られている特製ソースが食欲をそそった。それからソーセージの肉汁を堪能し、デザートに完熟して赤みがかった桃を食べる。一人前よりは少ない量だが、今の華楠にとってはごちそうだ。
すべてをおいしく平らげ、紅茶で口直しをする。やっと落ち着きを取り戻した華楠を、リリアはずっとにこにこと見つめていた。おいしそうに食べるわねぇと満面の笑みで言われて少し照れる。
「それで、どうしてここへ来たの?」
紅茶を口に運ぶと、リリアから質問が降ってきた。どうして、とは、どのように、か、なぜ、か。意味を図りかねていると、リリアは優しげに目を細めた。
「言いたくないなら、言わなくていいのよ。」
なるほど、確かに華楠は進んで話したいというわけではない。頷くと彼女は紅茶を啜り、口を開いた。
「いいわ。私の方が説明しなければならないことがあるもの、人間のあなたに。」
華楠は無意識にごくり、と息をのんだ。
全ての説明を聞き終わった時、華楠は呆けていた。情報量の多さに処理が追いつかない。パソコンが頭の中でくるくると読み込みを繰り返していた。
なぜならリリアは開口一番こう言ったのだ。
「ここは魔法の世界。」
その時点で「は?」という言葉が口から漏れた。イギリスの某大人気魔法小説は大好きだったが、とうとう好きすぎて夢に見たのかと思った。ありきたりだが頬をつねってみる。地味に痛い。そんなことをしている間にも、彼女は説明を続けていく。
「人間の住む世界と表裏一体となった、平行軸に存在するのがこの世界。あなたは人間の世界からこちらへ落ちてきたのね。この世界は力の差はあれど皆が魔法を使えるの。この空気がそれを可能にする。」
しかしどうやら違うらしい。某小説ではこんなこと言っていなかった。それにこの魔法の世界と人間の世界は、自由に行き来できるわけでもなさそうだった。
「この国はドラドというの。言葉通り黄金の国よ。小さな国だけれど古くから金が採れるこの国はそれで栄えている、大陸の端の国。このあたりはないけれど、王都の方へ行くと全てが金だったりするわ。」
遠い昔、日本が黄金の国ジパングと呼ばれていたと歴史の授業で習ったことを思い出す。平行軸なら、この国は日本ということだろうか。日本語を話しているし。
「ドラドは多種多様な民族が暮らしていることで有名なのよ。」
そう言って彼女は部屋の壁面に飾られた地図を指す。見れば、いくつかの地域に土地の名前と民族の名前が書かれていた。文字は崩した字体で、草書というものなのか、ほとんど読めない。
ざっと説明をされたけれど、次のものが来ると忘れてしまうので最後の王都しかわからなかった。台形のに近い形の国の中央にある楕円の場所、王都には囲いがあるらしい。入口はひとつしかない。
だいたい12の民族が8の都市に分布している。森に川に砂漠に草原、山地、海など、忙しない土地だが、その中、北北東あたりに都市と同じくらい広い土地がある。四角く囲われたそこには、文という地図記号が見えた。
「ここって・・・」
「ああそこは学園よ。ドラド唯一の、魔法使いの免許がとれる学園。」
「魔法使いって免許いるんですか。」
「いるわよ。ドラドは申請無しに便利魔法以外を使ったり、箒で飛んじゃいけない場所をやたら飛んだりしたら法律違反よ。」
魔法が使える世界もなかなかシビアらしい。確かに魔法が飽和したら大変そうだが。
「ほかにも初等、中等教育を受けられる学校は地域ごとにあるけれどね、高等学校以降はあまり人数が集まらないの。だから工業地帯に職に就くための高等学校をひとつ、ここの広大な土地に魔法使いになるための総合学園をひとつ。この北極星学園は初等部からあるのよ。」
つまりエスカレーター式ということだ。高校受験に翻弄された華楠としては羨ましい制度だった。
「それで、私は今何処にいるんですか?」
尋ねると、リリアは地図の北東を指した。広い森と都市が隣合い、都市の東は海が広がる場所の、森の中だった。
「ここは鳥の民族が暮らす鳥の街と学園の中間。」
森の奥には死神さまの館があるわよ、とリリアは妖しげに笑った。
「さ、説明は終わりね。明日にでもどこかの都市へ行きましょうね、今後のあなたの身の振り方を考えてあげるわ。あなた箒で玄関を掃いてくれる?」
そういって家事をはじめる彼女の声は、もう耳に入らなかった。
呆然と箒を動かす華楠の足元の落ち葉はいっこうに片付かない。フリーズした頭でもはっきり思った。逃げよう、と。
本当に魔法の世界なのか、確かめる術はなかった。例えばリリアと名乗る彼女が凶悪な犯罪者で、嘘をついて山奥に人を監禁したり、殺したりすることは難しくないのだ。
それに魔法の世界だとしても、こんな森の奥にいては何も出来ないし危険だ。死神がいるかも知れない。
せっかく自由になれたのに、リリアに軟禁されるのでは堪らない。身の振り方を考えてあげる、という物言いにも驚いた。まるで人間を見下している。確かに魔法が使えないということはこの世界では劣等種なのだろうけど。華楠は箒の柄を固く握り締める。
逃げなければ。
しばらくして、リリアが華楠を家の中に入れた。お風呂が沸いたわよと言われて頷く。リリアに先に入らせて、その隙に逃げようと思った。
華楠の思惑通り、リリアは先に入った。石鹸と花の香りと湿気が漂ってきて、水音が響く。今だ、と思い風呂に続く扉を凝視したまま、後ろ手に玄関の戸を開いた。ひゅる、と春の夜の冷たい風が頬を撫ぜるので、華楠は走り出した。
走っている最中、目の前を何かが横切り、足を止める。鳥だろうかと思って目をやると、そこには異形のものがいた。大きなひとつ目玉の、龍のような胴からコウモリのような羽が生えた、手のひらほどの大きさのなにか。幻覚かと思ったが、それは確かに華楠の額をかすめた。
「まほう、の、世界・・・」
ごくりと唾を飲む。冷や汗が垂れた。ここは本当に魔法の世界なのだと。
華楠は大きく笑って歩き出した。
湿った空気を、森の濃密な土のにおいを胸いっぱいに吸い込んで、時折後ろを確認しながら歩く。息切れがひどく、汗をかいた。
2時間ほど、休憩を挟みつつ歩いた。あたりはとっぷり日が暮れ、そらを見上げると月明かりがかすんで見えた。足が棒になり、震えが止まらない。春の夜は思いのほか冷たかった。
木々がまばらになり、月がよく見えるひらけた場所に出て、やっと腰掛ける。木にもたれかかって、ふたたび空を見上げた。そのまま、吸い込まれるように眠りに落ちる。
見えた月は綺麗だった。
突然、体が宙に浮く感覚がした。重力に逆らって、上に持ち上がる。制服の背中が何かに掴まれて吊られていた。
目を白黒させながら、とにかく上を見る。すると、頭部は鳥、胴は人、腕は翼、足には鉤爪という風貌の言わば異形が、華楠の服の背中部分を掴んで飛んでいた。目は虚ろで、見えない力に引っ張られるかのように、その異形の鳥人間は空へのぼっていく。恐怖で涙がこぼれた。
いま、自分は死ぬのだ。このまま、自由になったのに、鳥人間に殺される。
無念を噛み締めながら目を瞑った。瞬間───
ふっと背中を吊られていた感覚が消える。
「大丈夫、すぐに終わるよ。」
どこか懐かしいような声がした。優しくてあたたかくて、でも力強い声。
誘われるように目を開くと、一体どこから現れたのか、目の前に青年が宙に浮いていた。
「あれ、君は・・・」
青年が呟くように言った。
白と茶の混じった髪に、つぶらな目は金色、幼さの残る顔から、華楠と変わらない年に見える。
「え・・・」
華楠は戸惑い、それからジェットコースターを思い出す。強力な重力がかかって、臓器が浮くような感覚。
「お、落ちていってますけど・・・!?」
「うん、そうだね。」
青年も落ちている。そんな状況にも関わらず、彼は落ち着いた様子だった。悠長に空の彼方を見やる。
「そろそろ来るはずだよ。」
「なにが!?」
華楠はというと、完全にパニックに陥り泣き叫んでいた。対照的に彼はとてもリラックスしている。
「フクロウ。」
そう言ったとき、梟が現れた。相当遠くから来たのだろう、風より速く、風を切る音がした。
あっけに取られて梟を見ていたら、目の前が急に布に覆われた。華楠と青年を包み込むほどの大きな布───だと思ったそれは、
「羽根・・・?」
その羽根に包まれ、華楠と青年の落下は減速する。羽根の主を見ると、それもまた鳥人間だった。先程の異形の黒ずんだ羽根とは違う、茶色がかったフクロウの羽根なのだが。彼もまた、胴は人、足には鉤爪、腕は翼だった。頭部だけは先ほどと異なり、人の頭をしている。垂れた金色の目に金と銀とグレーの髪、彫りの浅い鼻、真っ白な歯。
彼は日に焼けた肌に映える白い歯をのぞかせた。
「この人は味方だから大丈夫、大丈夫。」
青年が幼子をあやす様に繰り返し大丈夫と言う。そしてその言葉通り、華楠は安全に地面に下ろされたのだった。
慣れ親しんだ地面、文字通り地に足がつく感覚に感動する。ほっとしていると、フクロウの羽根をもつ彼がニコニコと笑って華楠を見ていた。
「俺はフクロウ、よろしくな。」
いとおしむような視線を向けられたのは初めてで、少しばかり戸惑う。
すると、もう一人の青年がフクロウ、討伐と言った。その言葉に頷き、彼がふたたび飛び立った先には華楠を掴んでいた鳥人間がいた。
はらはらしながら見守っていたが、ほんの数秒後、それは杞憂であったと思った。彼は上空で鳥人間と向き合うと、光の速さで横切った。一瞬、すれ違う瞬間だけ片翼がひとのそれに変わる。その手には刃物があって、通り抜けた後に鳥人間は靄を撒き散らして夜の闇に熔けた。切られたのだと気づくまでに数秒かかった。
フクロウが空を飛んでいる間、白髪の青年は華楠に付き添っていた。彼はフクロウを見上げながら唐突に「君は人間だよね。」
と言った。看破されていたことに驚きつつ頷く。
「俺はスズメ。君の名前はなんていうの。」
「わ、わたしは」
そのとき、どこからか「スズメー!」という複数の声が聞こえた。見ればわらわらと個性の塊のような人達が歩いてきていた。華楠とスズメの周りに円陣になってごく自然に雑談をはじめる。
「リーダーは?」
朱鷺色の髪の人が言う。
「迷子ちゃう?」
関西弁を話している人はセンター分けの金髪。
「あ、降りてきたよ。」
もう一人の金髪の人が言った。色の濃いサングラスをしているので表情はわかりにくい。
「やってるなら援護したのに。」
茶髪をつんつんに立てた人は少し不満げだった。エメラルドを嵌め込んだような綺麗な目をしている。
彼の言葉にサングラスの人は目を三角にした。
「えっ、またリーダーだけやってんの!?ずるい!!」
するとスズメが目を光らせる。
「ちなみに、今月の暫定一位はリーダーで、二位がツバサだ。三位はヨタカだけど、二位と三位の間にはかなり差がある。さて今月は、どっち?」
瞬間、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。皆好き勝手に話していて、収拾がつかない。
「リーダーやろ?」
「でもツバサ、リベンジに燃えている。」
「俺は、リーダーにワッフル二つね。」
「・・・・・・ツバサに、いちごみるく。」
黒い短髪の人が初めて口を開いた。
「一周まわってヨタカに梅干し。」
「え、じゃあ俺もお稲荷さん二つや!」
「おれもおれも、卵焼き!」
急に始まった自由すぎる賭けに困惑していると、それを察した一人が説明してくれた。
「賭けてるのは、魔物の討伐数。あと、討伐補佐もあるんだけど、これはタカが不動の一位だから賭けてない。毎月たいてい、ツバサとフクロウとヨタカで競ってるんだ。ま、俺は参加しないが。」
これがタカ、と指したのは茶髪を立てた人。優しげな顔をしていて、なんだか河童に見える気がする。
これがツバサ、と指したのはサングラスの人だった。集団の中で抜群に顔が整っていて、サングラス越しに見える潤んだ目にドキリとした。
ヨタカはここにはいないらしい。説明してくれた彼はクジャクというらしかった。青や紫や青緑に輝く髪と瞳が特徴的で、七三分けから几帳面な印象を受ける。
「魔物っていうのはさっき君が襲われてたアレね。アレは色んな形があるけど、全部悪い魔法使いの組合で造られてる魔力の塊みたいなもの。」
タカが追って説明をしてくれた。
「あないな奴らは夜じゃないと造れへんねん。つまり俺らは朝日ん昇る前に魔物を倒すことをしとって、その数を競っとるんや。」
関西弁の人はにこりと狐のような顔で笑った。
「ちなみに俺はハト、こいつはトキや。」
関西弁の人──ハトは朱鷺色の髪の人──トキの方を抱いた。トキはもう一人、寡黙な黒髪の人を指す。
「こいつはウグイスね。」
ウグイスはぺこりと頭を下げ、つられて華楠も会釈をする。ハトが笑った。
「魔物の討伐とか補佐とか救護とか、それぞれ能力に応じて与えられた仕事があるから、それの達成度によって推薦が貰える。だから皆、競ってるんだよ。」
最後にスズメがまとめて、華楠の疑問は解消した。
場が妙に静まり返ると、途中から黙りこくっていたツバサが急に叫んだ。
「俺は、俺に、肉!!」
それで、皆、リアクションもバリエーションも様々に大爆笑してしまった。ツバサがあまりに情けない顔をしているものだから、失礼とは思いつつも笑わずにはいられなかったのだ。
「あ!見てよ!」
不意に、トキが上空に目を向ける。
「おーい!!」
見れば、フクロウがこちらに戻ってきていた。彼は着地して、皆を見渡す。
「これで全員揃ったな。」
「遅いよリーダー、俺らもう自己紹介終えたよ。」
「なにっ!」
「しかも全員じゃないでしょ、あと一人いる。」
ツバサとタカの言葉に他のメンバーも賛同する。どうやら二人は準リーダー格らしかった。
改めて、集まっている八人を観察する。ワイシャツに重厚感のある金色のネクタイ、濃い灰色のスラックスを着用していた。スズメは袖をまくったスタイルで、クジャクはネクタイをせず淡い紫色のセーターを着ている。他の六人は白いローブを着ていた。全体的にシンプルな格好だが、フードだけは色がそれぞれで鮮やかだった。しかし、統一感のあるそれには見覚えがある。
「・・・制服」
小さく呟くと、フクロウは頷いた。
「おう。」
「・・・学生?」
見上げると、彼は得意げに唇の端を上げた。その妖しさに、心臓が跳ねる。
「俺たちは、梟部隊だ。」
梟部隊、という聞き慣れない単語に好奇心が薄れていった。いまいち釈然としない華楠に、他のメンバーが吹き出した。
「嘘でしょリーダー、カッコつけすぎじゃん~」
ツバサは一部始終を動画に収めていたようで、スマートフォンを掲げている。魔法の世界で初めて見た、そんな現代的な機械。
「空が綺麗だなァ。」
「ちょお待ち、こいつ聞いとらん。」
「・・・・・・。」
「リーダーだけは通常運転だね。」
トキは話を聞いていないし、ハトはそんなトキに笑っている。ウグイスは変わらず笑みを浮かべ、タカはのんびりと目を細めた。
「よろしく!」
「うちのフクロウがすみません。」
それらの反応を歯牙にもかけず、握手を求めてくるフクロウ、謝罪するスズメとクジャク。
「本当に、自由だな・・・。」
握手しながら脱力していると、フクロウが笑った。
「これから行くアテは?」
ない。それに魔法も使えない。せっかく新しい人生の始まりに高鳴っていた胸がしぼむように萎えていく。
打ちのめされていると、ツバサが意味ありげな視線をよこした。
「花が咲かせられれば、君も入れるよ。俺たちの通う学校──」
「行きたい!」
思わず言い終わらないうちに返事をしていた。彼は笑みを広げた。
「君、名前は?」
華楠も、目いっぱいの笑顔を返した。
「華楠!花巻華楠です!これからよろしくお願いします!」
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