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chapter3 盲目と月
file.3 異世界の寝室
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僕が目を覚ましたら、「部屋は異次元に変わっていた」。
僕は花枝の他人格「コーヒーゼリー」なのだけれど、花枝がとても怖い思いをしたから呼び出されたのだろう。
「どうしたんだい、花枝?」
―夜中目が覚めてトイレに行ったら、迷ってしまったの。ここはどこ?
花枝は知らない。ここは精神病院だ。
さ迷い歩いてナースステーションの前まで来てしまったらしい。
「大丈夫だよ、花枝。頓服薬を飲んで寝ようね」
僕はそう独り言をつぶやくと、ナースステーションの奥にいる先生に話しかけた。
「先生、頓服薬をいただけませんか。他人格の花枝が怖がっちゃって、そわそわします」
「おや、コー君かい。ちょっとまってて。睡眠薬は飲んでるから不安止めでいいかな。」
「助かります。今日は先生が当直なんですね。」
「ええ。花枝さんは今どうしてる?」
「ちょっとパニック状態になってます。ここが病院だと知らないものですから。」
「はい、お薬。お水はあるかな。」
「そこの水道で飲みます。ありがとうございます。
……ねえ、先生。花枝の人格もそろそろ限界じゃないですかね。確かに幸せな人格ですけど、そろそろ崩壊が近い気がします。」
先生はちょっと黙って、うつむいて言いました。
「それは困るね。僕は花枝さんの小説が好きだから」
「あんな幼稚な文章が?」
「幼稚じゃない、詩的なんだ。実際僕はあの文章に救われている」
「へー。僕はああいった妄想文章は書けないけれど、強く迷惑をかけずに生きられますよ?」
「それが君の望みかい?」
「僕は……平穏に生きられたらどうだっていいです。ここ、食事もおいしいですし」
「そうかい」
僕は部屋に戻り、毛布をかぶった。
花枝が分厚い羽根布団だと思い込んでいる毛布は、ぺらぺらだった。
僕は花枝の他人格「コーヒーゼリー」なのだけれど、花枝がとても怖い思いをしたから呼び出されたのだろう。
「どうしたんだい、花枝?」
―夜中目が覚めてトイレに行ったら、迷ってしまったの。ここはどこ?
花枝は知らない。ここは精神病院だ。
さ迷い歩いてナースステーションの前まで来てしまったらしい。
「大丈夫だよ、花枝。頓服薬を飲んで寝ようね」
僕はそう独り言をつぶやくと、ナースステーションの奥にいる先生に話しかけた。
「先生、頓服薬をいただけませんか。他人格の花枝が怖がっちゃって、そわそわします」
「おや、コー君かい。ちょっとまってて。睡眠薬は飲んでるから不安止めでいいかな。」
「助かります。今日は先生が当直なんですね。」
「ええ。花枝さんは今どうしてる?」
「ちょっとパニック状態になってます。ここが病院だと知らないものですから。」
「はい、お薬。お水はあるかな。」
「そこの水道で飲みます。ありがとうございます。
……ねえ、先生。花枝の人格もそろそろ限界じゃないですかね。確かに幸せな人格ですけど、そろそろ崩壊が近い気がします。」
先生はちょっと黙って、うつむいて言いました。
「それは困るね。僕は花枝さんの小説が好きだから」
「あんな幼稚な文章が?」
「幼稚じゃない、詩的なんだ。実際僕はあの文章に救われている」
「へー。僕はああいった妄想文章は書けないけれど、強く迷惑をかけずに生きられますよ?」
「それが君の望みかい?」
「僕は……平穏に生きられたらどうだっていいです。ここ、食事もおいしいですし」
「そうかい」
僕は部屋に戻り、毛布をかぶった。
花枝が分厚い羽根布団だと思い込んでいる毛布は、ぺらぺらだった。
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