殺しの美学

村上未来

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報い

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「正解。それと私が一緒だったって証言するしね」

「でも、いつ誘拐されたか分からないのではないか?完璧なアリバイとは言えぬのではないか?」

「大丈夫。駅にも防犯カメラは付いてるし、わざと人目がある所で拉致るように言ってあるから」

 茜は得意気に話した。

「榊原茜は頭が良いのだな」

「へへへ、美玲も頭良いよ。でもね、まだ秘密はあるんだよ。拉致る時に使う車も盗難車を使うから足が付かないし…私の予想が正しければ、朝までにあいつの親から、この部屋に電話があると思うんだ」

「榊原茜は凄いな。何でもお見通しなのだな」

 美玲はうんうんと何度も頷いた。

「えへへ…もうそろそろ電話が掛かってきても良さそうなんだけどな」

 茜はテーブルに置いたスマホを取ると、手の中で弄んだ。
 茜の手の中で踊るスマホから、音楽が流れた。

「ほら、掛かってきた」

 スマホのディスプレーには『夢山』と表示されている。茜はそれを確認すると、耳に当てた。

「もしもし、平山竜二を攫ったよ」

 スマホを耳に当てている夢山は、緊張した面持ちで口を開いた。
 夢山は今、国道を走るスモークフィルムが全面に貼られた白いバンの助手席に座っている。

「ありがとう…計画通り、人目がいっぱい居る前で攫った?」

「うん…目撃者はいっぱい居る」

 夢山は、左手に持つ黒い覆面を握り締めた。

「ありがとう…あいつは大人しくしてるの?」

 茜の言葉を聞き、夢山は視線をバックミラーへと向けた。
 後部座席には、両手を縛られ、口にガムテープを貼られた竜二が座っている。竜二はかなり怯えている様子だ。その怯えきった目には、うっすらと涙が滲んでいる。両サイドには、竜二のこめかみや腹部に銃を突き付ける男達が座っている。
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