殺しの美学

村上未来

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捜査

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「知っていた訳ではない。私は驚くという感情を知らないのだ」

「えっ?…どういう事ですか?」

 予想だにしない答えに、城山は目をぱちくりとさせた。

「驚きだけではない。他の感情もだ。私はシソイドパーソナル症候群という病気だ」

「シソイドパーソナル症候群?…感情を知らない病気ですか?」

「そうだ」

「…そうですか…あちらの部屋にいる榊原さんは、平山さんの事はご存知ですか?」

 表情から感情は読めないが、嘘は付いていないと判断した城山は質問を続けた。

「うむ、良く知っているぞ。高校の時は一緒のクラスメートだったからな。大学も一緒だ」

「そうですか…榊原さんが居る部屋に伺っても構いませんか?」

 城山は茜が出て行ったドアを見ながら言った。

「構わぬぞ。そのドアの部屋にいる」

「…広田、榊原さんに話を聞きに行ってくれ」

「はい」

 城山の横に座る広田は立ち上がると、茜がいる部屋に向かった。そしてドアの前で立ち止まった。

「榊原さん、話を聞きたいのですが、入ってもよろしいでしょうか?」

 ドアに向かい話し掛ける広田の耳に返事が聞こえてきた。

「はい、どうぞ入ってください」

「失礼します」

 ドアを開けた広田の瞳に、白い壁に包まれた部屋が映った。
 本がずらりと並んだ本棚。綺麗に整頓されている机。そして大きめのダブルベッド。そのベッドの上に、茜は腰掛けていた。

「…平山竜二さんをご存知ですか?」

 机の前の椅子を引き寄せ、茜に体を向けるように座った広田は、直ぐに質問した。

「…知ってますけど、何かあったんですか?」

 茜は不安そうに広田を見ている。

「…平山竜二さんが誘拐されました」
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