殺しの美学

村上未来

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 地面に跪く大男に伊織が近付いた。

「催眠術に掛かっていた事を忘れ、普通に会話しろ。俺とお前は友人関係だ」

 大男の目付きが変わった。

「…あれ?俺、何してるんだ?」

 大男はそのたくましい二本の足で立ち上がった。

「…なぁ、俺達ここで何してるんだ?」

 大男は辺りを見回した。何故自分が木に囲まれているこの場所に居るのか、理解できていない様子だ。

「…さぁな」

 伊織は眉間に皺を寄せながら、タメ口を使う大男に罵声を浴びせたい欲望を抑え、静かに答えた。


「ん?…うわぁぁ!しょんべん漏れる!」

 久しくしていないそれは、膀胱を膨らませ、破裂寸前だった。
 大男は伊織に背を向けると、ズボンのチャックを下ろし、恥じらう様子など見せず、本能が赴くままその場で用を足した。
 大男の影から立ち込める白い湯気と、豪快に地面を叩き付けるその音を聞き、伊織は激しい嫌悪感を抱いた。しかし、伊織は深い息を吐き捨て、自らの心を落ち着かせた。

「…ふぅー、すっきりした」

 ズボンの中にそれを仕舞うと、気持ち良さげな顔を伊織に向けた。
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