最弱と追放された俺、実は神の右腕でした。~気づけば王女も聖女も竜姫もなぜか俺に懐いている件~

たまごころ

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第1話 最弱扱いの俺、ついに追放される

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 俺、レオン・アルディスは、今日ついに勇者パーティを追放された。  
 朝日が差し込む宿屋の部屋。寝ぼけ眼で顔を上げると、剣士のガルドが無愛想な表情で俺の荷物を廊下に放り出していた。  

「お前、もういらねぇよ。足手まといなんだよ、レオン」  
「……は?」  
「聞こえなかったか? 今日から俺たちは四人で進む。村人上がりのスキル無し野郎はここでおしまいだ」  

 薄々わかってはいた。戦士ガルドにも、魔術師マリアにも、神官リリナにも、最近はずっと冷たい目を向けられていた。  
 戦闘のたびに「レオンは隠れてろ」と言われ、荷物持ちと野営の準備係を押し付けられるだけ。俺が役に立てていないと感じた日々だった。  

「俺……何か、迷惑かけたか?」  
「自覚がないってのが一番タチ悪いな」  
 マリアが鼻で笑う。  
「アンタが参加してからBランクの討伐もやっと成功する程度。勇者ディナスの足を引っ張ってるのは丸わかりなの」  
 そして当の勇者ディナスが胸を張って言った。  
「悪いな、レオン。だけど俺は魔王を討つ勇者だ。仲間は精鋭だけでいい。お前みたいに平凡なやつを抱えてる余裕はないんだ」  

 ディナスは羨ましいほどの黄金の髪をなびかせ、聖剣を背に負っていた。神の寵児と呼ばれるその姿は、昔からの友人として誇らしくもあり、どこか遠くも感じた。  
 それに比べて俺は、どこにでもいる農村出身の青年。ステータスも平均以下。与えられたスキル「加護持ち」は、回復速度がわずかに上がるだけの地味なもの——のはずだった。  

「わかった。お前たちの邪魔はしない」  
「最初からそう言えばいいんだよ」  

 ガルドが俺の荷物袋を足で蹴ってくる。砂の上に転がったその袋には旅の必需品とわずかな食料しか入っていない。  
 俺は深呼吸して、それを拾い上げる。  
「じゃあ、元気でな」  
「ああ。お前もな、せいぜい死ぬなよ」  
 誰も笑わなかった。俺が宿を出るまで、彼らの視線は冷たかった。  

***  

 街道を一人で歩きながら、俺は小さく息を吐いた。  
「はぁ……やっぱり、俺には無理だったのかな」  
 魔王討伐なんて、勇者や選ばれた者の仕事。俺なんかが加わっても、足を引っ張るだけだったのかもしれない。  

 だが、胸の奥にかすかな違和感があった。  
 ——本当に、俺は弱いのか?  

 旅の途中で何度か俺一人で魔物に襲われたことがある。運がよかったのか、いつもそんなときは奇跡のように剣が当たり、敵が崩れ落ちた。  
 あのとき感じた胸の奥の熱、光のような脈動。もしかしてあれが何かの力なのか。  

 まあ、考えても仕方がない。今さらパーティに戻る気もないし、どうせ足を引っ張るだけなら一人で気楽に生きよう。  
 とりあえず近くの村に向かってみるか。  

 そうして歩き出した矢先だった。  
 森の奥から悲鳴が聞こえた。  

「きゃああっ!」  

 若い女の声。反射的に走り出していた。  
 木々を抜けると、そこには一人の少女がいた。純白のローブに身を包み、金髪を光に揺らす。数匹の魔狼に取り囲まれ、怯えながらも必死に杖を構えている。  

「大丈夫か!」  
 俺は剣を抜き、声をかけながら突っ込んだ。  
「ま、待って、危ないです!」  

 魔狼の一匹がこちらに飛びかかる。瞬間、俺の手が勝手に剣を動かし、光の軌跡が走った。  
 ——ズン、と空気が震えた。  
 次の瞬間、魔狼たちは灰のように崩れ、あっという間に風に消えた。  

「な、なに……いまの……」  
 少女は呆然と俺を見ていた。  
 正直、俺もわからない。剣を振っただけなのに、数匹の魔獣がまとめて消滅したのだ。  

「怪我はないか?」  
「は、はい……ありがとうございます。あなた、いったい……」  
 間近で見ると、少女の瞳は透き通るような青。どこか神聖な気配をまとっている。  
 その佇まいに見覚えがあった。王国教会の紋章——聖女が持つ証である。  

「私はリオナ・フェリシア。王都教会で聖務を任されています。助けてくださって、本当にありがとうございます!」  
 聖女リオナ。噂では「神の声を聞く娘」と呼ばれ、王家とも親しい存在らしい。  
 まさかそんな人物を偶然助けるとは。  

 リオナは俺の手を握り、真剣な表情で言った。  
「あなたの中には……光が見えます。まるで天の加護そのもののような」  
「え?」  
「この力、あなたは自覚していないのですか?」  

 俺は首を振った。確かに何か変だとは思っていたが、そんな高尚なものじゃない。  
「俺は生まれつき『加護持ち』という地味なスキルを持ってるだけだよ」  
「加護持ち……? まさか、『真なる加護』では?」  

 リオナの表情が固まる。  
「えっと、その……ステータスにはそう書いてあるけど……」  
「!!」  
 彼女の目が大きく見開かれた。  

「それは……神々が閉ざした禁断の権能です。真なる加護を宿す者は、世界の均衡を左右するとまで言われているんです!」  
「えぇ!? いやいや、そんな大袈裟な」  
「間違いありません。あなたは——選ばれし者です」  

 突然そんなことを言われても、頭が追いつかない。俺はただの追放者だ。  
 それでもリオナの瞳は真剣だった。  
「どうか、私と共に王都へ来てください。神殿はあなたを守るでしょう」  
「……俺なんかを?」  
「あなたは、もう『なんか』ではありません」  

 森の木漏れ日の中で、聖女の言葉は不思議と胸に響いた。  
 俺の人生が変わる音がしたような気がした。  

***  

 その頃、街の別宿——勇者パーティの残り四人は久々の祝杯を上げていた。  
「ようやくあの無能がいなくなったな」  
「旅も軽くなるし、これからはすぐ魔王討伐だ!」  
 笑い声がこだまする中、誰も知らなかった。  
 追放した“最弱”が、今まさに神の右腕として覚醒しようとしていることを。  

(第1話 終)
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